078 解体
少し遅れて俺も現場に到着した。
「よしっ!」
「やったな!」
2人はビックボアを倒せた喜びを称え合っていた。
「レリウスありがとう。」
「いや、シュウの援護が無ければ無理だったよ。こっちこそありがとう。」
「ま、まぁ、少しは認めてやらなくも無いがな。」
サムのツンデレはさておき、このビックボアをどうやって持って帰るかが問題だな。
見た目的にもサイズはウルフの約5倍ほどの大きさだ。100kgは軽く超えているだろう。
「とりあえず持ちあがるかどうか確認してみる?」
「そうだね。僕が左側を持つからサムは右側を頼む。シュウは頭を持ってくれ。」
「おう。」
「了解。」
「じゃあ行くよ。せ~の!」
力いっぱい入れると、かろうじて少し浮く程度持ちあがったが、それまでだった。
アレンみたいにレベルの高い大人だったらまだしも、俺達3人のレベルだとどう頑張っても無理な感じだった。
いや、持ち上がるだけでも凄いとは思うんだけどね。
「無理。」
「無理だね。」
「無理だな。」
「もう少し軽けりゃ運べそうなんだけどね。」
「いっそのこと、此処で解体しちゃわないか? 骨と内臓が無くなるだけでも軽くなると思うし。」
「それしか無いかもね。」
「よし! みんなで解体してみよう。」
と言う訳で、俺達はここで解体することにしたのだった。
「まずは血抜きからだな。」
幸いと言うか、アイスアローの刺さった場所と、レリウスのトドメが首だったため、すでにそれなりに血は流れていたが、出切った訳ではない。
確か頭を低くすれば良いんだっけかな。とは言っても重くて持ちあげることは出来ない。どうすれば良いんだろうか。
「なぁ、あの木を使えば体だけなら持ち上げられるんじゃね?」
サムが指を指した方を見ると、頑丈そうな太い枝が伸びていた。
「そうだね。ロープを使えば行けそうかも。」
レリウスがそう言うと、荷袋からロープを取り出した。
ビックボアの後ろ脚を縛ると、反対側のロープを投げて先ほどの枝へと通した。
「ほら、皆で引っ張るよ~」
「おう。」
「分かりました。」
綱引きの要領で3人でロープを持つ。
「じゃあ行くよ。せ~の!」
ロープを引っ張ると、ビックボアの足が上がった。
更に引っ張ることで体少し上がる。
「もう少し、せ~の!」
更に引っ張ることで、ビックボアの体は、頭が地面に着いたままのために斜めとは言え、何とか持ちあげることが出来た。
その御蔭でさらに血が流れだした。
十分に血が出切ったところで、お腹の下辺りに穴を掘ってから、腹を切り裂くと、内臓がボロボロと出てきた。
内臓はそのまま捨ててしまうのだが、何となく勿体ないと思ってしまうのは、元日本人だからだろうか。
内臓を出し切った後は埋めて、ビックボアを木から降ろす。
その後は皮を剥いだりとして処理をしていく。
最終的に肉と牙と毛皮だけにすることが出来たが、それでも70~80kgくらいは有りそうだ。
「牙と毛皮はシュウが運んで、残りの肉を僕とサムが半分ずつにすれば行けるかな?」
「それしかねーか。」
「すいません。」
「レリウス。こっちのウルフはどうすんだ?」
「どうするも持って行けないだろ?」
「そりゃそうか。」
「まぁ、討伐証明の牙だけ持って行こう。」
レリウスはそう言うと、ウルフの牙を抜いて行った。
「よし、血の匂いで他の魔物が来るかもしれないし、急いで此処を離れるぞ。」
「おう。」
「はい。」
俺達は各々ビックボアの部位を担ぐとこの場を離れるのだった。
もちろんこっそりウルフは回収しておいた。
・・・・
まずは肉を納品するために孤児院へとやってきた。
「な、何とか着いた……」
「もう運べねー!」
「シスターを呼んでくるからちょっと待ってて。」
俺は孤児院の中へと入り、シスターを探す。すぐにシスターは見つけることが出来たので声を掛けることにした。
「シスター、明日の収穫祭の肉を取って来たんだけど。」
「あ、はい。それでお肉は何処に有るのかな?」
「外で俺の仲間が運んでくれているので、来て貰っても良いですか?」
「分かりました。」
シスターと一緒に外へ行くと、レリウスとサムが孤児達に絡まれていた。
「ねーねー、お兄ちゃん達は何処から来たの?」
「スゲー! 剣を持ってる。カッコイイ~!!」
「ねーねー、冒険者ってどんな感じ?」
「あ、えっと。」
「なー。にーちゃんって盗賊?」
「俺はスカウトだ! 盗賊じゃねー!!」
「「キャー! 逃げろー!」」
ブチ切れたサムの声で孤児達は逃げて行った。何をやってるんだか……
「連れて来たよ。」
「シュウ遅せーぞ! お蔭てガキどもに絡まれちまったじゃねーか。」
「盗賊……ぷっ!」
「殺すぞ!」
「キャー! タスケテー!」
「けっ!」
サムをからかうのはこのくらいにして、さっさと肉を渡しちゃうとしますか。
「サム、レリウス。シスターに肉を渡してくれ。」
「家のシュウがご迷惑をかけて、すいませんでした。」
「あ、いえ。大丈夫です。」
「気にすんなって。で、何処に運べばいーんだ?」
「ではこちらへ……」
さっきはもう運べないって言ってたのにな。ホントツンデレさんだよな。
肉を運び終えた後は、次は冒険者ギルドだ。
「ほれ、さっさと運べ。」
「分かってるよ。」
「あははっ、少し持とうか?」
「大丈夫。」
手ぶらになったサムが悪態をついていた。レリウスは手伝ってくれると言ってくれたが、今回は色々とお世話になっているため、俺が最後まで運ぶことにした。
ようやく冒険者ギルドの納品カウンターへと到着した。
「ビックボアとゴブリンの耳を持ってきました。」
「ビックボア!? 君たちが狩ったの?」
「「「はい。」」」
「凄いわね。ビックボアはDランクの獲物なのに、よく勝てたわね。」
「それはシュウ君が頑張ってくれたからだね。」
「そうなんだ、君がねぇ……」
ディアナさんにジッと見られてしまったが、何も出ないぞ。
「まあ良いわ。えっと、ビックボアの毛皮と牙と魔石ね。後はゴブリンの耳が24個と。
うん! 良い状態ね。」
ディアナさんがそう言うと、メモに記載をして判子を押したのを渡してきた。
「はい、ご苦労さま。また次も宜しくね。」
「「「はい。」」」
さて今回の成果はどんな感じだ?
【ビックボア毛皮 品質:A 解体:〇
ビックボア牙 品質:A 解体:〇
魔石(2/2) 1個
ゴブリン耳 24個】
なるほど、首に刺さったアイスアローとレリウスの刺し傷程度ならAランクになるのか。今後の目安にしておこう。
「シュウ。今回のお金だけど、僕達で全部貰っちゃっても良いのかい?」
「良いも何も肉は全部こっちが貰っちゃったしね。問題無いよ。」
「今更分けろって言っても駄目だかんな!」
「だから良いって言ってるじゃん。」
「うしっ!」
サムがガッツボーズをしていた。
「やっぱり俺も……」
「あぁ!?」
「……何でも無いです。」
からかおうと思ったが止めておこう。うん。




