071 ランクによる違い
「はぁ、はぁ、はぁ……やった!」
「あぁ、やったな!」
よっぽどウルフが倒せたのが嬉しかったのか、喜びあっていた。
「おめでとうございます。」
「でも、シュウ君が居なかったらきっと僕達は死んでたと思う。ありがとう。」
「ま、まぁ、何だ。認めてやらないことも無いな。うん。」
「そりゃどうも。」
ホント、サムのツンデレは、どこに需要があるんだろう。
「よし、さっさと解体してオサラバしようぜ!」
「そうだな。」
「じゃあ、1人1匹な。俺はこいつをやる!」
「じゃあ僕はこっちかな。」
「何で俺が解体するのが2人が倒したヤツなんですか? それにこれって毛皮がボロボロじゃないですか。」
「別に良いだろ! それに俺達がやった方が綺麗で早いだろ!」
「もう良いです。」
本来なら血抜きを行うのだが、今回は毛皮だけしか持ち帰らないため、その作業は省略するらしい。
理由は肉は重くて持ち帰れないってことなので、勿体ないとは思うがこればっかりは仕方がない。
首からナイフを入れて行き、皮を剥ぐ作業を行っていく。おっと、討伐証明の牙も抜いておかないとな。
・・・・
「終わったぁ~!!」
思った以上に大変な作業だった。それに、毛皮はボロボロだったからたいした値段も付かないだろう。
2人の様子を見ると、同じく終わったみたいだ。
「さすがは俺、綺麗に剥げたぜ!」
「いやいや、僕だって負けてないぞ!」
「それに比べてシュウのは……ぷっ!」
「ちょっと待て! これはお前らが付けた傷だろーが! 俺のせいにすんな!!」
「はははっ、悪りぃ、悪りぃ。」
「よし、血の匂いで他の魔物が来る前に撤退しよう。」
「「おう!」」
俺達はその場を離れて森から脱出するのだった。
勿論帰り際に、こっそりウルフの肉は回収しておいたのは言うまでもなかった。だって勿体ないじゃん? そして、もちろんスキルによる解体も済んでいる。魔石も1個有ったのでラッキーだ。
今日の孤児院へのお土産はこの肉にしようと思う。くっくっく……孤児院のガキ達の喜ぶ顔が楽しみだぜ!
無事に森を抜けた俺達は、そのまま冒険者ギルドまで戻ってきた。
早速、納品カウンターへと向かうことにした。
「ウルフの毛皮とゴブリンの耳を持ってきました。」
「ウルフ? あれ? 君たちってFランクじゃなかったっけ?」
「はい。僕とサムはFランクですが、シュウ君はEランクなんですよ。」
「そうだったのね。只者じゃないとは思ってたけど、やっぱりだったね。」
俺って、そう言う目で見られてたの!? 知らんかったよ。
「こっちの2匹はシュウ君で、こっちのは君たちが討伐したのかな?」
「あ、やっぱり分かりますか?」
「まぁ、そうかな。」
「さっき誰かさんに、このボロボロなのは、俺のせいされましたけどね。」
「ちっ!」
サムが舌打ちをしたが、俺は悪くないぞ!
「えっと、ウルフの毛皮が3枚匹ね。2匹は問題無いけど、こっちのはちょっと毛皮の状態が悪すぎるわね。後はゴブリンの耳が9個と。」
ディアナさんがそう言って、メモに記載をして判子を押した。
「ご苦労さま。また宜しくね。」
「「「はい。」」」
さて、今回の結果はどんな感じだ?
レリウスが受け取ったメモを見せて貰らうと、こう書かれていた。
【ウルフ毛皮 品質:A 解体:〇
ウルフ毛皮 品質:A 解体:〇
ウルフ毛皮 品質:D 解体:〇
ゴブリン耳 9個】
「品質Dだって。」
「確かにあれだけボロボロだったし、しょうがないね。」
「ケッ! 次は綺麗に倒してやるぜ!」
「期待しないで待ってるよ。」
「くっ! シュウのくせに生意気だぞ!」
「はいはい。」
そんな会話をしつつ、受付カウンターの所までやって来た俺達は、早速並ぶことにした。
並んだのはイリーナさんのところだ。最近イザベルの列に並ばないことが増えた気がするな……
「次の方どうぞ。」
「これをパーティで頼む。」
「畏まりました。それでは全員のギルドカードをお願いします。」
俺達はギルドカードを受付嬢へと渡して処理をしてもらった。
「お待たせしました。レリウスさんとサムさんはゴブリンを以前に倒した分も含めて10匹を超えたので、1つの依頼の完了とさせて頂きます。
シュウさんは、後11匹ですね。」
「あれ? 何で11匹に増えてんの!? 1匹じゃないの?」
「シュウ様はEランクなので、Fランクの倍の納品数になるからです。」
「何で倍になるの?」
「上のクラスの冒険者が下のクラスの冒険者の獲物を取らないようにするための措置だからです。ちなみにDクラスになると4倍の40匹になりますよ。」
「なるほど。」
初級者には初級者の狩場、中級者は初心者の狩場を荒らさないためにも、中級者の狩場に行けってことか。
正確にはEランクはまだ初級者なんだけどね……
「次にウルフの処理になります。シュウ様はEランクなので3つの依頼分とさせて頂きます。そしてレリウスさんとサムさんは、Fランクなので6つの依頼分とさせて頂きます。
……下のクラスの方が上のクラスの依頼を達成した場合は、逆に2倍の依頼分が貰えるんですよ。」
イリーナさんは、俺が質問する前に聞きたかったことを教えてくれた。エスパーだろうか?
「と言うことは、FランクがDランクの依頼を達成したら4倍ってこと?」
「そうなりますね。」
「なるほど。良く分りました。」
「では、今回はゴブリン依頼分2件分が追加されるので、合計で大銅貨3枚、銅貨1枚、大鉄貨2枚、鉄貨5枚になります。お受け取り下さい。」
「「おぉ! やった!!」」
2人が喜んでいる。確かに1日に3万円以上も稼げたんだし、喜ぶよな。
俺? 俺はまぁ、ねぇ?
とりあえず会計係らしい俺がお金を受け取った。
「本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、イリーナが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
用事が済んだのでカウンターを離れることにした。
さて計算するとしますか……
「い、幾らだ?」
サムが待ちきれない顔でそう聞いて来た。
「えっと、パーティ資金が銅貨3枚、大鉄貨1枚、鉄貨が5枚かな。
後は1人分はと言うと……銅貨9枚、大鉄貨3枚、鉄貨7枚だな。」
「うひょ~! やったぜ!」
「凄いな……」
もちろんサムは大喜びだ。逆にレリウスは驚いていた。
まぁ何時もの倍以上のお金が稼げたんだしな。気持ちは良く分る。
「レリウス! 飲むぞ!」
「おい! 弓を買うために貯めるんじゃないのか?」
「こんだけ稼いだんだし、ちょっとくらい良いだろ?」
「はぁ……仕方ないな。少しだけだぞ?」
って、良いんかい!
「じゃ、じゃあ、俺はそろそろ帰ります。」
「おう、またな!」
「シュウ君、今日はありがとうね。」
「いえ。それでは。」
俺は冒険者ギルドを出て孤児院へ帰る前に武器屋へ寄って行ってみることにした。
「帰れ!」
「あ、あの、弓の値段だけで良いから教えてください!」
「大きくなったら来い! それまでは駄目だ!」
パタン!
「……帰るか。」
早く大人になりたい……
孤児院にはウルフの肉を提供してみた。単純に量がいつもの3~4倍も有るので、子供達は大喜びだ!!
そして今日の夕食はと言うと、なんと焼き肉だった! やったぜ!! もちろん俺以上に子供達も大はしゃぎだ!
子供たちの皿には1人あたり3枚の肉が乗っかっているのに対し、俺の皿には何と5枚もの肉が乗っていたのだ!! うひょ~!!
だが、シスターの皿には7枚、孤児院長の皿には10枚の肉が有ったとさ。いいけどね……
そしてもちろん、今日稼いだお金は全て孤児院行となったのは言うまでも無かった。
俺、結構頑張ってるよね?(涙)




