069 話し合い
冒険者ギルドに戻ってくると、そのまま納品カウンターへと向かった。
「あれ? 解体はしなくて良いの?」
「手間の割には大した金額にならないし、この程度なら1匹丸ごと持って行けるからね。
運べない大きさだったら解体して必要な部位だけ持って行くしかないけどね。」
「なるほど。」
納品カウンターにはディアナさんが居た。
「納品です。」
「はい。今日もホーンラビットを狩って来たのですね。ってあら? 君は確か。」
対応はレリウスが行ってくれていたが、後ろに居た俺に気が付いたみたいだ。
「実は、今日からこのパーティにお世話になることになりまして。」
「そうだったのね。小さい子が1人だったから心配してたのよね。良かったわ。」
「ありがとうございます。」
「えっと、ホーンラビットが2匹ね。血抜きは済んでるみたいだけど、1匹はちょっと毛皮の状態が悪いわね。」
ディアナさんがそう言って、メモに記載をして判子を押した。
「はい。ご苦労さま。」
「ありがとう。」
用事が済んだので、納品カウンターを後にした。
レリウスが受け取ったメモを見せて貰らうと、こう書かれていた。
【ホーンラビット 品質:A 解体:×
ホーンラビット 品質:B 解体:×】
「品質B?」
「まぁ、僕達の場合、毛皮がボロボロになっちゃうからな。コレばっかりは仕方が無いんだよ。」
「弓が使えればサクッと倒せる様になるんだが、金がなぁ~」
「サムって弓が使えるの?」
「お、おう。その通りだぜ。」
「嘘を言うな嘘を。弓を買ったら練習するんだって言ってただろうが。」
「ちょ!」
「あはははっ。」
どうやら見得だったらしい。でも、気持ちはわかるな。
そして空いている受付カウンターで依頼の対応して貰うことにした。
「次の方どうぞ。」
「これをパーティで頼む。」
「畏まりました。それでは全員のギルドカードをお願いします。」
俺達はギルドカードを受付嬢へと渡して処理をしてもらった。
「お待たせしました。レリウスさんとサムさんは10匹の納品となりましたので、1つの依頼を達成とさせて頂きます。
シュウさんは合計で3匹になります。」
「あれ? 3匹? 何で?」
「あぁ、シュウ君はパーティでの依頼は初めてだったか。
こう言ったパーティでの納品は、全員に納品分の数がカウントされるんだよ。」
「そうなんですか!? だったらパーティで狩った方がお得じゃないですか!」
「依頼達成だけならそれでも良いけど、金額は増える訳じゃなからね。」
「そうだぞ、儲けが減ったら意味がねーじゃん。」
「あぁ、なるほどね。」
ある意味、孤児院に没収されてしまう俺向きなのかもしれない。
「今回は品質Aが1匹、品質Bが1匹で、どちらも解体無しなので、合計で銅貨4枚、大鉄貨6枚、鉄貨5枚になります。お受け取り下さい。」
「おしっ! 何時もより多いぜ!」
「ああ!」
えっと、品質Aだと銅貨2枚と大鉄貨7枚だったから、2匹合わせてこの値段になるってことは、品質Bだと7割5分の値段になるのか。
だとすると品質Cだと半額になるのかな? 試そうとは思わないけどね。
「本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、イリーナが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
用事が終わったので受付カウンターを離れたら、レリウスが声を掛けてきた。
「シュウ君。報酬の配分の件も含めた今後のことで話をしようと思うんだが、良いかな?」
「わかりました。」
「じゃあ、そこの飲食スペースへ行こうか。」
俺達はギルド内の飲食スペースにあるテーブルに着くことにした。
そう言えば、ここを利用するのって初めてだな。
「何か飲むかい?」
「俺はエール!」
「俺は、儲けたお金は孤児院に支払わなきゃならないので、良いです。」
「そうかい? じゃあ飲むのは後にして話だけしちゃおうか。」
「マジかよ……」
サムが落ち込んだが、後で好きなだけ飲んでくれ。
ちなみにこの世界ではお金さえ出せば子供でもお酒を飲むことが出来るみたいだ。
ただ俺としては、酒粕の甘酒程度のアルコールならまだしも、お酒のアルコールは子供にとって毒だって知ってるからな。
せめて成人するまでは飲酒は我慢するつもりだ。
「じゃあ、初パーティの依頼完了お疲れ様でした。」
「おう、お疲れ。」
「お疲れ様です。」
「僕たちのPTは幼馴染でもあるサムと2人だけだったから、単純に半分にしていたんだけど、今日からシュウ君が参加するから今後のことを考えてキッチリしようと思うんだ。」
「はい。」
「えー面倒じゃんか、3分の1でいいじゃねーの?」
「それも考えたんだけど、これから人も増える可能性だって有るんだし、後々揉めないためにも今の内にキッチリと決めておきたいんだ。」
「レリウスがそう言うなら俺は良いけどよぉ。」
「はい。俺も大丈夫です。」
「うん。ありがとう。それで、何か良い案が有ったら言って欲しいんだ。」
「レリウスは何か有んのか?」
「ごめん、僕もこう言うことを決めるのは初めてだから良く分らなくて。だからみんなの意見が聞きたかったんだ。」
「俺もわかんねー」
「シュウ君は?」
「えっと、例えばですが、報酬の1割をパーティの運用資金にして残ったのを参加した人数で割るってのはどうですか? 割った余りはパーティ資金の方に入れる感じで。」
「1割って何だ?」
「あー、えっと、10分の1のことです。」
「シュウ君、パーティ資金ってのは何だい?」
「パーティ資金ってのは、パーティで使用する道具や消耗品を購入するのに使うって感じです。
例えばポーションとか矢とか、野営などで使う道具とかですね。」
「なるほど。良いかもしれないね。」
「何! じゃあ矢は自分で買わなくても良いってことになるのか?」
「そうなりますね。」
「俺、賛成~!」
「うん。僕もそれで良いと思った。決まりで良いかな?」
「もちろんだ。」
「はい。」
「じゃあ、その通りに先ほどの報酬を分けようか。銅貨4枚、大鉄貨6枚、鉄貨5枚だから……えっと、どうなるんだっけ?」
「俺が分かる訳ねーじゃん。」
「まず1割だから大鉄貨4枚と鉄貨6枚分を引くと、残りが銅貨4枚と大鉄貨1枚と鉄貨9枚か。
それを3人で割ると1人銅貨1枚と大鉄貨3枚と鉄貨9枚で、余りが鉄貨2枚か。これをパーティ資金に回せばオッケーかな。」
「そ、そうだね。」
「お、おぅ。」
とりあえず各自の配分分を配ることにした。
硬貨の数が合わないので、レリウスとサムの所持金で両替してもらたりして何とか分けることが出来た。
「後はパーティ資金を誰が管理するかだけど。僕はシュウ君が良いと思うんだ。」
「俺も賛成だな。」
「えっ! 何で?」
「そりゃー計算が出来るからだろーが。」
「そうだね。」
「わかりました。これは孤児院に出すものとは分けて保管しておきますね。」
「頼んだよ。」
「終わったなら飲むぞ~!」
「仕方ないね。ほどほどにしておけよ。」
「わ~てるって。」
「じゃあ、俺はそろそろ帰ります。明日はここに来れば良いですか?」
「そうだね。宜しく頼むよ。」
「おう、またな。」
「それでは。」
俺は冒険者ギルドを後にして孤児院へと帰ることにした。
今日はパーティで活動して納品してしまったから肉が無い。仕方が無いので在庫の肉を持ち帰ることにした。
今日の稼ぎだが、ちょっと金貨については金額が金額なので、孤児院に支払って良いのかの判断が付かない。なので今のところは、自分で保管しておくことにした。
もちろん、依頼のお金は全て孤児院行となったのは言うまでも無かったのである。




