065 ギルドマスター
次の日になり、俺は冒険者ギルドへとやってきた。
朝の混雑時だから人が多いのが面倒だが仕方ないか。早速イザベルさんのところへ並ぶことにする。
「次の方どうぞ。」
ようやく俺の番になった。
「おはようございます。」
「シュウ君。おはようございます。
今日は何か依頼でも受けるのかな?」
「えっと、ちょっと知りたいことが有ったので聞きに来ました。」
「何かな?」
「これです。」
俺は魔石(1/1)を取り出してカウンターに置いた。
「えっと? これってもしかして魔石……なのかな?」
「はい。そうです。」
「こんなに小さいのって初めて見たかも。何処で見つけて来たのかな?」
「ホーンラビットから取れました。」
「えっ? ホーンラビットに魔石なんて有ったの!?」
「はい。」
「ちょ、ちょっと待っててね。」
イザベルさんはそう言うと、魔石を持って慌てて奥の部屋へと行ってしまった。
それを見た俺の後ろに並んでいた冒険者達は、違う列へと捌けてしまった。もしかして面倒ごとをやっちゃったか?
それから10分ほどしてイザベルさんが戻ってきた。
「シュウ君、こっちに来て貰っても良いかな?」
「あ、はい。」
俺はイザベルさんに奥の部屋へと連れて行かれることになった。
奥の部屋の前まで来ると、イザベルさんが扉をノックした。
「イザベルです。」
「入れ。」
「失礼します。」
部屋の中から声が聞こえると、イザベルさんは扉を開けて中へと入って行った。俺はそれの後をついて行くことにした。
部屋の中は執務室っぽい感じで、正面の机に中年の男性が書類に囲まれて仕事をしていた。
「ギルドマスターこの子が魔石を持って来た子です。」
「そうか。そこのソファーに座って待っててくれたまえ。」
「わかりました。シュウ君どうぞ。」
イザベルさんに勧められたのでソファーに座らせて貰った。
3分ほど書類と格闘して、ようやく仕事の区切りがついたらしく、移動して俺の前のソファーへと座った。
「時間を撮らせてスマンな。俺が此処のギルドマスターのジェイドだ。」
「Fランク冒険者のシュウです。」
「今回来て貰ったのは、新たな魔石の発見に関する確認のためだ。この魔石は本当にホーンラビットから取れた物で間違いないか?」
「はい。間違い無いです。」
「そうか。」
ギルドマスターはそう言うと、考え込んでしまった。
何か見つけたことで問題になるのだろうか?
「すいません。質問良いでしょうか?」
「何だ?」
「魔石って何ですか?」
「魔石は、魔物がスキルを使うために必要な物だ。我々はこの魔石を使って魔道具を動かすための燃料にしているんだ。」
「そうだったんですね。」
「今まではある一定のレベルの魔物にしか魔石は無いと言われていたんだが、まさかホーンラビットからも取れるとは思わなかったよ。
確かにこの大きさなら、見落としていたとしても不思議じゃないけどな。」
ギルドマスターが魔石を指でつまんで見ていた。
「ただなぁ、この大きさだと大した量は入って無さそうだから、使用目的は限定されそうなのが難点だな……」
多分ギルドマスターが言っているのは(1/1)とかのことだろう。と言うことはホーンラビットの魔石の量は1ってことになるのかな?
「イザベル。こいつを鑑定の方に回しておいてくれ。」
「わかりました。」
イザベルさんは魔石を受け取ると、部屋を出て行った。
「シュウだったな。今回の発見に対する報酬を払おうと思う。ただ、世の中を変えるほどの発見では無いから、多少のお金と評価になってしまうが、かまわないか?」
「はい。問題有りません。」
「シュウは新人だったな。ランクはFか?」
「はい。」
「よし、なら今日からシュウのランクはEとする。後は俺の権限で金貨1枚を出してやろう。」
「金貨1枚!?」
えっと、確か銅貨1枚が約1000円くらいだから……万、十万、百万……って1千万円!?
「何だ、足りないのか?」
「い、い、い、いえ、じゅ、十分すぎます! あ、ありがとうございます!!」
ギルドマスターは俺の慌てている姿を見てニヤついていた。案外この人、性格悪いんじゃないのか?
その時ノックの音が響いた。
「イザベルです。」
「入れ。」
「失礼します。」
イザベルさんが戻って来た。
「鑑定結果が出ました。容量は1です。」
「やっぱりそのくらいか。火種おこしくらいには使えるか? まあ良い。運用については技術者に丸投げにでもするか。」
先ほどシュウには伝えたのだが、シュウのランクを本日付けでEとする。そして報酬は金貨1枚だ。」
「畏まりました。」
「以上だ。退出して構わないぞ。」
「では、失礼します。シュウ君行くわよ。」
「あ、は、はい。」
俺はイザベルさんと一緒にギルドマスターの部屋から退出した。




