062 解体費用
「とりあえず、コレどうしよう。」
俺の周りには待機させているアイスアローが59本浮いていた。
と言うか、これって何時まで維持できるんだ? 氷だから溶けるまでとかか?
とりあえず移動すると一緒に付いてくるみたいなので、実験を兼ねて確認してみることにした。
結果。どう言った理屈かは分からないが、維持している状態の場合は、どれだけ時間が経過しても溶けずにそのままだった。
逆に攻撃魔法として使用すると、敵を倒した瞬間に消えてなくなったのは何でだろうな。
・・・・
夕刻になったので、そろそろ帰ろうと思う。
ウルフを倒した後は森をでてしまったので、結局あの後はホーンラビットを1匹倒しただけだった。
なので、残っていたアイスアローについては、全弾空へと打ち上げて処分することにした。
獲物的にはウルフを除けば微妙な感じだったが、今回は何とHP回復薬草が20本も見つかったのだ。
前は1ヵ月も探して5本しか見つからなかったのに、今回は今日だけで20本も見つかるとは……
ホーンラビットが居ないだけで、これだけの差が出るってことは、ホーンラビット恐ろしい子。
さて、帰るのは良いのだが、肉についてはどうしようかな。
昨日みたいに、小さい子供達にあの顔をさせるのもなぁ……
仕方がない。自分で解体が出来ない以上、ぼったくりの肉屋の親父に頼むのもシャクだが、他に方法も無いしな。
とりあえず肉屋へ行ってみることにした。
「へい、らっしゃい。」
お店に到着すると、肉屋の親父がニヤニヤしながら挨拶してきた。腹立つなぁ~!
俺は、すでにアイテムボックスから取り出しておいたホーンラビットをオヤジに見せると、
「解体を頼む。」
「解体費用は角と毛皮で良いか?」
「なっ! た、タダじゃなかったのか?」
「タダなのは昨日の話だ。今日は有料に決まってるだろ?」
「くそっ! 良いよそれで!!」
「まいど~♪」
俺はホーンラビットを肉屋のくそ親父へと渡した。こちとら持ち金が無いからとは言え、足元を見やがって!
こんなか弱い幼気な孤児院の子供にたかるとは、地獄へ落ちろ!!
「ほらよ。」
ホーンラビット1匹程度なので、あっという間に解体が終わったので、直ぐに持って来てくれた。
「・・・・」
俺は黙ってそれを受け取る。
「何だい前は『ありがと~』とか言って可愛かったのによ、何処で捻くれたんだか。」
「誰のせいだと思ってるんだよ!」
「おぉ、怖っ。くわばらくわばら。」
全然怖がってないくせに! 親父は手を振ると、そのままお店の中へと入って行った。
「帰ろ……」
腹を立てながら帰る途中で、ふと思いついたことが有った。
もしかして冒険者ギルドで解体して貰った後に、その角と皮を売ったら、肉と差額分のお金が手に入るんじゃないのか!?
「……行ってみるか。」
違ってたらまたその時考えれば良いしな。俺はUターンして冒険者ギルドへと向かうことにした。
冒険者ギルドへと到着した俺は、そのまま裏口の納品カウンターへと向かう。
納品カウンターには前回対応してくれた女性が居た。
「すいません。」
「はい、納品ですね……って、あら? ひょっとして昨日、ホーンラビットを持って来てくれた子かな?」
「あ、はい。」
「今日も納品に来てくれたのね。」
「いえ、ちょっとお聞きしたいことが有ったので来ました。」
「そっか、残念。それで聞きたいことって何かな?」
「えっと、例えばホーンラビットを解体して貰うとして、肉はこちらで受け取って、角と皮だけを解体費用から引いた形で買い取って貰うってことは出来るんですか?」
「もちろん出来るわよ。でも、肉を納品しない場合は、常時依頼の1匹分にならないけど、それでも良いのかな?」
「はい。解体さえ出来ればそれで。教えてくれてありがとうございます。」
「いえいえ。どういたしまして。」
「それじゃ……えっと。」
「あら? 名乗って無かったかしら? 私はディアナよ。宜しくね。」
「俺はシュウです。宜しくお願いします。」
これで解体の目途が立ったな。くっくっくっ。肉屋の親父め! ざまぁ~見ろ!!
それじゃ用事も済んだし、帰るとしますか。
「ねぇ!」
帰ろうとしたらディアナさんに呼び止められてしまった。
「なんですか?」
「この前のホーンラビットって……ううん。ごめんなさい。何でもないわ。」
「あ、はい。それではこれで。」
何となくだが、肉屋の親父と同じことに気が付いた可能性が有るよな。
ここは思い切って教えるのも……いや、まだディアナさんがどんな人か分からないところも有るし、もう少し様子見をしてからでも良いかな。
俺は冒険者ギルドを後にして、孤児院へと帰るのだった。
そして孤児院では、肉を持ち帰って来た俺が英雄扱いになったのは、言うまでも無かった。




