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060 解体講習を申し込んでみた


俺は受付カウンターへとやってきた。



「次の方どうぞ。」


「これをお願いします。」



俺はギルドカードと一緒に、納品メモをイザベルさんへと渡した。



「シュウ君。久しぶりね~

 あら? ホーンラビットを狩ったんだ。」


「はい。」


「状態も良いみたいだし、良かったわね。解体は流石にまだ難しいか~」


「ちなみに解体をするとどうなるの?」


「解体しないで納品すると、解体料として1割引かれるのよ。

 今回の場合は、肉が銅貨1枚。角と皮で銅貨2枚だから、解体料は大鉄貨3枚ね。」



肉屋の親父め! 解体だけで銅貨2枚分も持って行きやがったな!

だいたい毎日行ってたから30匹くらいは解体してもらったな。そうすると解体費用を差し引いたとしても、大銅貨5枚と銅貨1枚の儲けってことか。

前の露店でもそうだが、確認しない俺が馬鹿だっただけか……くそっ!



「シュウ君どうしたの?」



俺が悔しがって黙っていたため、イザベルさんが心配して聞いて来た。



「あっ、い、いえ、大丈夫です。」


「そう? それなら良いけど……何か有ったら言ってね。相談に乗るから。」


「はい。」


「それじゃ、ホーンラビット1匹の納品なので、銅貨2枚と大鉄貨7枚ね。」


「ありがとうございます。」



俺はギルドカードとお金を受け取ると、受付カウンターを後にする前に聞いてみることにした。



「あの!」


「どうしたの?」


「解体を学びたいって言ったらどうすれば良いんですか?」


「冒険者ギルドでは、初心者の知識向上のための解体講習が有るけど、受けてみる?」


「やります!」


「一番近い講習日は……5日後みたいね。どうする?」


「その日でお願いします。」


「分かったわ。ならこの日で登録しておくわね。」


「ありがとうございま……あぁ! 俺、講習を受けるためのお金持ってなかった!」


「大丈夫よ。初心者への講習は無料となっているわ。お金のことは気にしなくても大丈夫よ。」


「えっ? でも、前に戦い方を教えて貰いたかった時にお金が必要でしたよね?」


「それは依頼って形になるからよ。戦闘技術はまた別の扱いになるからね。今回は講習になるから扱いが別になるのよ。」


「そうだったんですね。良かったです。でも、何で無料なんですか?」


「それは、将来的に見て冒険者ギルドとしても得になるからよ。

 食べられない肉を納品されるのと、食べられる肉を納品されるのでは、どっちの方がお得かな?」


「食べられる方?」


「そうね。冒険者ギルドとしても慈善活動じゃないからね。物を買って他に売って儲けを出さないと駄目なのよ。」


「世知辛い世の中ですね。」


「本当よね……って、黄昏ている場合じゃなかったわ。

 本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、イザベルが対応させて頂きました。

 またのご利用をお待ちしております。」



用事も済んだことだし帰ろうっと。

俺は冒険者ギルドを後にした。

そして帰る途中で、例の肉屋の前を通ると、肉屋の親父が声を掛けてきた。



「あれ? 今日は解体して行かないのか?」


「解体費用って大鉄貨3枚しかかからないじゃん! それに角と毛皮を足したら銅貨2枚って聞いたんだけど?」



俺はジロリと親父を睨んだ。



「がはははっ、何でぇもうバレちまったのか。折角坊主で儲けさせて貰ったのによ。」


「それって酷くね?」


「世間の厳しさを知れていい勉強になっただろ? 勉強代だと思って諦めるんだな。」


「うぐっ!」



露店の親父と言い、肉屋の親父と言い、世の中の大人はズルイ人ばっかりだ。

でも、意味合いは違うが無知は罪とも言うし、知らなかった、または調べなかった俺が馬鹿だっただけだ。次からは気を付けようと思う。



「で、どうするんだ?」


「何が?」


「今日の分の解体。孤児院の餓鬼どもが待ってるんだろ?」


「……見て分かんない? 今日は持ってないよ。」


「嘘はいけねぇな、嘘は。

 何時もあんなにも狩りたてほやほやの新鮮なホーンラビットを持ってくるってことは、何かしらスキルを持ってるってことだろ? どうせ持ってるんだろ?

 それに解体費のことももバレちまったし、当分儲けさせてくれたお礼ってことでタダで解体してやるよ。」



一瞬タダって台詞に心が動かされたが、危ない危ない。またこの親父に良いように使われるところだった。

アイテムボックスのスキルについては、まだ内緒にしておいた方が良い気がするからな。



「さっきも言ったけど、今日は持ってないよ。諦めてくれ。」


「ちっ……さすがに警戒されるか。」


「今舌打ちした!」


「してないぞ?」


「もういいよ。今日は帰る!」


「おう、今度はこっそり持ってくるんだな。」



俺はオヤジの声を無視して肉屋を離れるのだった。

そしてふと思ったことが有った。肉屋の親父に何かしらのスキルが有るってのがバレたってことは、今日の納品でギルドにもバレている可能性が高いってことになるのか?

いっそのことアイテムボックスのことをバラしてしまった方が色々と都合が良いのだろうけど、悩みどころだな……


そして孤児院に帰って来た俺は、今日の分のお肉が無いことによる小さな子供達のショックな顔々が、結構心に来るものが有ったのだった。すまぬ……

もちろん今日のホーンラビットの料金はシスターに持って行かれたのは言わずもだがな(遠い目)


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