059 納品
あれから俺は毎日ホーンラビットを狩っては肉屋で解体してもらい、孤児院へ寄付する生活を1ヵ月ほど続けていた。
お蔭で、孤児達の肉付きが良くなって健康的になってきたのは良いことだと思う。
ただ一つ、問題が発生してしまっていたのだ。それはホーンラビット不足だ。
毎日2~3匹ほど狩っていた居たら、ここ最近は0匹、運が良くて1匹が狩れるくらいにまで減ってしまったのだ。
どうやら狩り過ぎてしまったらしい。ただ絶滅するほどでは無く、時間を置けばまた増えるとのことなので、その辺は安心している。
狩る場所を変えれば良いって話だが、距離が遠くなるのもなぁ……
今はアイテムボックス内の在庫から納品している感じだ。
そうそう、ホーンラビットを狩りまくっていた御蔭で、実はレベルも2つほど上がっていたのだ。
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名前 :シュウ
年齢 :6
種族 :神族
状態 :普通
LV :4
HP :25/25
MP :70/70
STR:12
VIT:9
AGI:12
INT:13
DEX:9
LUK:99999
スキル:創造魔法、詠唱破棄、物理無効、魔法無効、状態異常無効、魔力盾、アイスアロー、おっぱい召喚、言語理解、偽装、アイテムボックス、気配察知、生活魔法、アークシェイク、魔力感知、魔力操作、錬金術、剣術、オート狙撃
称号 :異世界転生者
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特にスキルなどは増えて無かったが、レベルが上がったのはもちろんのこと、狙撃で魔法を使いまくった御蔭で、INTの数値が物凄く上がったのは嬉しかったな。
「さて、今日はどうしようかな。」
そろそろ期限間近なので、何か依頼を受けてお金を稼がないとシスターに怒られてしまう。例え毎日の様に肉を納めていたとしても例外は無しなのだ。厳しい世の中である。
幸いなことに薬草が100個以上貯まったので、これを納品するのも手かもしれない。
いや、錬金術で薬を作った方が儲かるのか? とりあえず冒険者ギルドへ行って何か良い依頼が無いか探してみることにしよう。
と言う訳で、冒険者ギルドへとやってきました。
久々に来た気がするのは気のせいだろうか? まあ良いや。とにかく手っ取り早くお金を稼ぐ依頼を探すことにしようと思う。
早速掲示板へと向かうことにする。
「ふむ……すぐに稼ぐとすれば、この辺りか。」
一つは当初の候補にも合った薬草の採取だ。これなら提出するだけで終わる依頼だ。
次はホーンラビットの肉の納品だ。これも1匹で済むのですぐ終わる。1匹銅貨1枚だがそんな物だろう。ただ、角と皮も合わせると銅貨3枚になるのはちょっと美味しいかもしれない。ちなみに10匹納品して1つの依頼となるみたいだ。
と言うか、肉屋の親父。解体費用が幾らになるのか知らんが、随分とボラれていた気がするのだがどうだろうか?
「まあいいや、今回はホーンラビットの肉の納品にしよう。」
薬草はもしかしたらポーションを自作出来るかもしれないので、在庫に余裕が有るホーンラビットにすることにしたのだ。
「えっと、確か納品は納品カウンターだっけかな。」
俺は冒険者ギルドを一度出て、裏口へと回る。実は納品カウンターは血とかで汚れた物や、大物を納品することも有るので別の場所になっているのだ。
俺はホーンラビットを1匹だけ取り出すと納品カウンターへと向かった。
「すいませ~ん。」
納品カウンターには誰も居なかったので、声を掛けてみた。
「は~い。ちょっと待ってて~」
するとカウンターの奥の扉から声が聞こえてきたので、少し待つことにする。
1,2分ほどして扉が開いて担当者らしき女性がやってきた。
「お待たせしました。納品ですよね?」
「あ、はい。これになります。」
俺はカウンターにホーンラビットを乗せた。
「ホーンラビットね。血抜きはしてないみたいだけど狩ったばかりだから状態良好っと。解体はこちらで行うで良いのかな?」
「はい。」
俺が返事すると、担当者の女性が大声で扉の向こうに声を掛けた。
「ホーンラビットの納品、血抜きはして無いけど状態が良いから急いで解体よろしく~!!」
すると扉が開いて1人の男性が来たと思ったら、そのまま何も言わずにホーンラビットを持って戻って行った。
俺がそれをボーっと見ていたら、女性がニッコリ笑った何かをメモして判子を押したのを渡してくれた。
「はい。これを受付カウンターに持って行ってね。」
「あ、はい。」
「一応言っておくけど、偽造して誤魔化そうとしたらカードが赤くなって犯罪者になっちゃうから気を付けてね。」
「は、はい!」
やるつもりは無いが、ビビってしまう俺は小心者です。
「次からは解体はしなくても血抜きをしてから持って来てくれると助かるかな。今回は良かったけど、程度が悪いと肉は買い取れなくなるからね。」
「えっと、血抜きってどうやるんですか?」
「基本は首を切り裂いて逆さにして、血が出無くなればオッケーね。内臓も取り出せれば完璧だけど、それだけでも十分だから。」
「分かりました。」
「それじゃ、また狩ったら持って来てね。」
「はい。」
俺は買取カウンターを後にした。そして渡されたメモ紙を呼んでみると、こう書かれていた。
【ホーンラビット 品質:A 解体:×】
・・・・
俺が去った後の解体場。
「おーい、ディアナ。ちょっと良いか?」
「何よ~」
先ほど納品カウンターで対応してくた女性が解体場へと入って来た。
「このホーンラビットは街中で狩られたのか?」
「そんな話は聞いて無いけど? どうしたのよ。」
「いやな、このホーンラビット、狩られてから大した時間が経ってないんだ。血も固まってないし、ほら体温もまだ残ってるんだ。」
「またまた、ライさんがそんな冗談を言うなんて珍し……本当なの?」
「冗談でこんなこと言うかよ。」
「……本当に狩りたてみたいね。」
「だろ? まぁ、こちらとしては有難いんだが、どうなってるんだろうな。」
「さあ? まぁ、冒険者にも色々と秘密は持って居るでしょ? 子供だったけどね。」
「子供? 幾つ位だ?」
「そうねぇ、まだ5,6歳くらいかしら? 可愛い男の子だったわよ? 取りに来た時に見たでしょ?」
「あぁ、あのガキか。あいつがねぇ……」
「どうしたのよ。」
「これを見て何か気が付かないか?」
「どこからどう見てもホーンラビットでしょ?」
「綺麗すぎるんだ。」
「綺麗? あっ!」
「やっと気が付いたか。そうだ、この部分にしか傷が無いんだ。」
ライがホーンラビットの頭を指差した。
「どうやって狩ってるんだか気になるな。」
「そうね……」
「まあいい。折角綺麗な獲物なんだ。急いで解体するぞ。」
「えっ? 私もやるの?」
「暇だろ?」
「はいはい……」




