051 ランクアップ試験
試験までの3日間は、修練場での自主練に費やすことにした。
ただ、剣術スキルを習得した御蔭か、以前は全く出来なかった某ゲームの動きが、多少なりとも出来るようになったのは正直嬉しかった。
とは言え、まだまだ熟練度が足りないためか、完璧とは言えないのが残念だけどな。
そしていよいよ今日は試験当日だ。
俺は気合を入れて、冒険者ギルドへとやってきた。
手続きは済んでいるので、直接修練場へと向かうと、そこにはすでに10人ほどの冒険者が居た。おそらく俺と同じ受験者なのだろう。
内訳は男性が6名、女性が4名で、年齢は15~20歳くらいとまちまちだった。
待つことしばらくして試験官らしき人達が修練場へとやってきた。
「全員揃っているとは思うが、遅刻したヤツは無条件で失格になるので、今ここに居る君たちは1次試験をクリアーだ。おめでとう。」
どうやら時間のルールを守れるのが、冒険者としての最低限の条件らしい。
周りにいる冒険者達もホッとした顔をしていた。
「おっ、もう揃ってるじゃん。」
「だからもう少し早く行こうって言ったんだ。」
「良いじゃん、間に合ったんだから。」
その時、男性3人組が修練場へと入って来た。
「何だお前たちは。」
「何って、今日試験を受けに来たんだけど?」
「そうか。ならお前たちは不合格だ。帰って良いぞ。」
「はぁ? 何もしてないのに不合格って意味分かんねー!」
「時間を守れるのが冒険者としての最低限のルールだ。それさえ守れないヤツは冒険者として失格だ。」
「守れないって、ほんの少しだけだろ? そんくらい良いじゃん!」
「そのほんの少しの時間が依頼の成否を分けることだって有るんだ。次の試験で頑張るんだな。」
試験官はそう言うと、ギロリと遅刻してきた冒険者達を睨んだ。
「くそっ、覚えてやがれ!」
試験官には敵わないと思ったらしく、捨て台詞を吐くと帰って行った。
「さて、これから2次試験を行う。剣や槍等の武器を使う奴は左へ、弓を使う奴は真ん中、魔法を使う奴は右に分かれてくれ。」
試験官がそう言うと、冒険者達はばらばらと移動し始めた。
近接武器に6名、弓が3、魔法が1の割合だった。
俺はどうしよう?
「どうした? 並ばないのか?」
悩んでいると、試験官から声を掛けられた。
「あ、えっと、剣か魔法かで迷いまして。」
「ほぅ? どちらも使えるとは珍しい。だったらどちらも受けてみると良い。
片方が落ちても、もう片方が受かれば合格になるぞ。」
「じゃあ両方やります!」
「よし、近接武器の方は人が多いから、まずは魔法の方へ行ってくれ。」
「わかりました。」
俺は魔法のグループのところへ向かった。
「今回はこの2名ね。私は魔法担当のDランク冒険者のアイよ。宜しくね。」
「「宜しくお願いします。」」
「魔法の試験は簡単よ。支援系か攻撃系を選んで貰って、支援系なら私に支援魔法をかけて貰い、攻撃系ならあの的に魔法を撃ってくれれば良いから。」
「「はい。」」
「じゃあ、そっちの女の子から。名前を言ってどちらかを選択したら挑戦してみてね。」
「はい。ジュリアです。攻撃魔法を使います。」
ジュリアと名乗った女性が的に向かって呪文を唱え始めた。
『赤く燃え盛る炎よ、矢となり敵を射抜け! ファイヤーアロー!!』
そしてファイヤーアローの魔法が的を射抜いた。中心から少しずれたが中々の命中度だ。
「うん。精度、威力とも問題無さそうね。合格よ。」
「やったー!」
えっ? もう終わり? Fランクだからこんなもんなのか?
「じゃあ、次は君の番ね。」
「あ、はい。シュウです。攻撃……いや支援魔法になるのかな?」
一応攻撃魔法としてアイスアローも使えるが、ステータスに表示してないからな。面倒なことになりそうだから却下だ。
「ハッキリしないわね。どういった魔法なの?」
「アークシェイクって言うんですが、地震を起こします。」
「なるほど、攻撃魔法とはちょっと違うみたいね。なら私にかけて見てくれる?」
「あ、はい。」
前にアランに使ったのと同じくらいで良いか。範囲は直径1mくらいで。
「アークシェイク!」
「きゃあ! な、な、何これえぇ~!!」
俺が魔法を使うと、アイさんの足元で地震が発生し、両手を地面につけて踏ん張っていた。
30秒ほどして地震が止むと、ふら付きながら立ち上が……れなかったみたいだ。ペタンと座り込んでいる。
「凄い魔法ね。合格よ。」
「ありがとうございます。」
「ところで、この魔法ってどうやって使うの? 教えてください!!」
突然アイさんが土下座をして頼み込んできた。
「えっと、秘密で。」
「そんな……この魔法が有れば足止めして攻撃し放題なのに。」
言われてみればそう言った使い方も有るのか。埋めるしか思いつかなかったよ。
「まぁ、土魔法が使えれば行けるかもしれないですね。」
「そう言えば私、水魔法が専門だった……」
だめじゃん。
「さて、試験はこれで終わりだけど、シュウ君は近接戦闘もやるんだっけ?」
「あ、はい。でも、合格しちゃったんですよね。どうしよう。」
「まぁ、受けなくても良いけど、興味が有るなら駄目元で受けてみるのも良いんじゃない?」
「そうですね。なら受けてみることにします。」
「了解。一応試験は合格したことを伝えておくから、帰りに受付カウンターで手続きしてね。」
「わかりました。」
こうして魔法による試験は無事に合格で終了することが出来たのだった。




