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048 特訓


次の日になり、俺は再び修練場へとやってきた。相変わらず人が居ないな……

まあいい。今日はちゃんと武器も有ることだし、しっかりと特訓しようと思う。


まずは、アイテムボックスより昨日作った石を2つ取り出した。

刺身包丁だと怪我するかもしれないし、今日のところは刃無しでやってみよう。



「武器制作!」



刃無しと言うか、おもちゃの剣のイメージで作ってみた。

当たったらそれなりに痛いだろうが、刃の部分が丸みを帯びているので、これなら誤って怪我をすることも無いだろう。

そもそも怪我なんかしないだろうって? 細けぇことは良いんだよ!


それでは特訓開始だ!

まずは俺は2本の刺身包丁(刃無し)を構える。



「……ここからどうすれば良いんだっけ?」



よくよく考えてみると、武器なんか扱ったことなんか無いぞ?

参考にゲームで二刀流のキャラと言えば……やっぱりアレか? 大きなモンスターを狩るゲームだ。



「こ、こうかな? いや、こうか?」



世の中には、見たことと同じことが出来る天才と、そうでない凡人がいる。もちろん俺は後者だ。

それでも何とか試行錯誤を繰り返しながら刺身包丁(刃無し)を振り回してみた。



「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」



軽めに作ってあるとはいえ、それなりの重量物だし、そもそも俺は6歳児だ。

あっという間に息が上がって今は休憩中だ。



「上手く行かないなぁ。」



イメージではカッコ良く舞うように剣を振り回す俺だが、実際はと言うと……



「はぁ……」



溜息しか出なかった。

それからも剣を振っては休憩を繰り返し、そろそろ夕食の時間も近いことから終わりにすることにした。

結局のところ、上達になったのかは不明だが、頑張ったことは確かだった。



「また明日こよう。」



暫くは納得いくまで特訓して、ある程度納得できるレベルまでになったら昇級試験に挑戦してみようと決心したのだった。


次の日も、またその次の日も俺は剣を振り回しているが、一向に上手になった感じがしないのは何故だろう。

俺は今、休憩がてら座りこんで考えている。



「何が悪いんだろう?」


「そもそも基本がなっておらん。」


「えっ?」



突然後ろから声を掛けられたので振り向くと、そこには額に大きな傷跡が有る強面の男性が立っていた。



「えっと、どなたでしょうか?」


「そんなことはどうでも良い。」


「どうでも良いって……」


「それよりも、お前は基本がなってない。だいたい何で2本を使ってるんだ?」


「えっと、カッコ良いから?」


「馬鹿か? 基本も出来て無いのに2本なんか扱える訳ないだろうが。」


「ごもっともです。」


「誰か教えてくれる人は居ないのか?」


「知り合いに教えてくれそうな人はいるのですが、全く会えて無いので。」


「じゃあ、ギルドの依頼は?」


「孤児院に住んでいるんで、お金持ってないです。」


「……悪かったな。」


「いえ。」


「だったら俺が教えてやろう。」


「良いんですか?」


「これも何かの縁だ。その代わり俺の教えは厳しいぞ!」


「はい! お願いします!」



こうして突発的では有ったが、俺は指導を受けられることになったのだった。



「ほら、肘が下がってる!」


「はい!」



俺は今、1本の刺身包丁(刃無し)を使って素振りをしている。



「何度言えば分かる! 剣を振る最中は力を入れるな! 振る速度が落ちる! 当たる瞬間にだけ力を入れるんだ!」


「はい!」



言われたとおりに振ると、確かに音が違うのが分かる。



「ほらほら、どんどん振る速度が落ちてるぞ! 気合を入れろ!」


「はい!!」



俺はひたすら素振りを繰り返した。

どのくらい振り続けただろうか、意識が朦朧としてきた。



「よし、此処まで。」


「あ、ありがとう…ござい…ます。」


「明日も来てやろう。今日はゆっくりと体を休めるんだ。体を休めるのも特訓だからな。分かったか!」


「は、はい!」



男は俺の返事を聞くと、ニッコリと笑い、修練場を去って行った。

かなり疲れたが、今日1日で随分と上達した気がした。俺は去っていく名前も知らない男性に向かって頭を下げるのだった。


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[一言] 「明日も来てやろう。今日はゆっくりと体を休めるんだ。体を休めるのも特訓だからな。分かったか!」 →「・・・特訓だから・・」→「・・・訓練・・・」では?
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