043 接客
「じゃあ、お店を始めるわよ。みんな宜しくね~」
「「「「はい!」」」」
お店の前にOPENの看板を出して営業開始だ!
十分な練習が出来たとは言えないが、まぁ、何とかなるだろう。
カランカラン!
さっそく男性2人組のお客さんがやって来た。
空いている席に座ったので、今回はレイラが対応するみたいだ。
「いらっしゃいませぇ~、お水をどうぞ~」
「おっ、ありがとな。」
「それで、ご注文はお決まりでしょうか?」
「そうだなぁ、何がオススメなんだ?」
「本日は、ホーンラビットのステーキと野菜炒めがオススメになります~」
「じゃあ、それ1つね。」
「俺も。」
「ホーンラビットのステーキと野菜炒めが2つですね。他にも有りますか?」
「じゃあ、エールも2つ貰おうかな。」
「畏まりました~」
そう言って戻ってきて番号に木板を掛けた。
俺はそんなレイラを見て驚いていた。
「何?」
「いつもと違うのでビックリしてた。」
「そう。」
普段無口とまでは言わないが、あまり話さないクールキャラでもあるレイラがあのような接客をするとは思わなかった。
だが、これはこれで良いかもしれない。おそらくギャップ萌えってヤツなのだろう。
カランカラン!
おっと、次の客だ。今度は男女のカップルだ。
今度は俺が行くことにした。水を用意して席に着いたタイミングで持って行く。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「あら、可愛いウェイターさんね。ちょっと待ってね。」
「はい。では決まりましたら声を掛けて下さい。」
傍で立ってたら落ち着いて選べなくなりそうなので、一度離れて待つことにした。
2人でワイワイと楽しそうにメニューを選んでいたが、注文が決まったのか、男性が手を上げた。
「ちょっと良いかな?」
「はい、ただいま。」
俺は即座に2人の元へと向かった。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「ああ、俺はホーンラビットのステーキと野菜炒めを、彼女は焼き魚とサラダのセットを頼むよ。」
「お飲み物はどうされますか?」
「そうだなぁ、じゃあ俺はエールを、彼女はハチミツ酒をお願いするよ。」
「畏まりました。ホーンラビットのステーキと野菜炒めが1つ、焼き魚とサラダのセットが1つ。
エールとハチミツ酒が1つで宜しいですね。」
「あぁ。」
「お飲み物は先にお出しした方が宜しいでしょうか?」
「それで頼むよ。」
「畏まりました。少々お待ちください。」
俺はテーブル番号のところに木札を立てかけると同時に、エールとハチミツ酒が出てきた。早いな。
俺はそれを持って先ほどの2人のところへ持って行く。
「エールとハチミツ酒をお持ちしました。ごゆっくりどうぞ。」
「おっ、早いな。」
俺は飲み物を置くと、さっさと離れることにした。2人のじゃましちゃ悪いからな。
案の定、2人は乾杯をして美味しそうに会話をしながらお酒を飲んでいた。
「シュウ君凄い~! 大人っぽくてカッコイイ!」
カレンが目を輝かせながらそう言ってきた。
「ど、どうも。」
「シュウ君って前にもこんな感じの依頼を受けてたの?」
「そ、そんなところかな。」
「なるほどね~、私も頑張らなくちゃ!」
すいません。前世の記憶から真似をしただけで、やったことは有りませんが何か?
「おっと、お客さんだ。」
「次は私が行って来るね~」
カレンがそう言うと、お水を持って新しく来た客へと向かって行った。頑張れ!
そして立て続けにお客が入ってきた。
「次は私の番だね。」
そう言ってミーナが接客へと向かって行った。
そしてそのタイミングで俺が注文を受けていた料理が完成したみたいだ。
それを持って2人のところへと運ぶ。
「お待たせしました。ホーンラビットのステーキと野菜炒めと焼き魚とサラダのセットです。」
「おいしそ~」
「こりゃ旨そうだ。」
「それではごゆっくりどうぞ。」
料理を置いたと同時に次の客が入って来たのでお水をもって接客に向かった。
こりゃ、思った以上に大変かもしれないな。
・・・・
ウェイターとレジの仕事をひっきりなしに行い、休みなく働き続けた。
お昼のピーク時間が終わったところでようやく一息つける様になった。
「お疲れ様。しばらくは客も来ないだろうから、少しゆっくりして良いからね。
これは賄いだから食べて頂戴ね。」
「「「「はーい。」」」」
出されたのはちょっと不格好な形のお肉と野菜の炒め物だった。多分だけど、お客に出せない部分を寄せ集めた物なのだろう。
とは言え、結構動いて腹がペコペコだったからこの賄いはホント有難かった。
では頂くとしますか。
パクリ……うん、見た目が不格好なだけで普通に美味しい肉だ。白っぽいからパサパサしているかと思ったが、思ってた以上にジューシーで味わい深い味だった。しかもそれが調味料の味で引き上げてくれるんだから、ここの料理はかなりレベルが高いのではなかろうか。
確かにお客がひっきりなしに来るくらいだから、間違っては無いと思う。
次に野菜を頂いてみることにする。余りものだから芯の部分だったり、虫に食われた跡が有ったりだが、全く問題無かった。
そもそも孤児院に出て来る野菜は、皮まで食べるくらいだから、しっかりと皮が剥かれている時点で、俺達にとっては高級品だ。旨し!
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
「良い食べっぷりだったね~、作った方も嬉しくなっちゃうよ。ありがとね。
夕方からまた忙しくなるけど、頼むよ。」
「「「「はい!」」」」
しばらくはポツリポツリと客が来る程度だったが、夕方になって頃から忙しくなってきた。
「ねーちゃん! エールお替り!」
「はい! ただいま!」
「こっちは串焼きを5……いや、10本とエール追加だ。」
「すぐにお持ちします!」
「すいませ~ん! ハチミツ酒にこのカルパッチョを貰えますか~?」
「はい!」
・・・・
「はぁ、はぁ、はぁ、や、やっと終わった……」
「だ、だねぇ……」
「し、死ぬ……」
「もう立てない……」
夕方からは冒険者達が大勢やって来た御蔭でお店の中は昼間のピークが笑えるくらいに忙しかったのだ。
この仕事って、4人でやったから何とかなったが、もともと3人でやる仕事だったけど、正直言って無理じゃね?
それとも大人だったのなら問題無いのか?
「みんな、おつかれ~! 今日は本当に助かったわ~♪」
半分死にかけている俺達と違って、依頼人の女性は元気一杯だ。
「はい、依頼票。」
そして依頼票と一緒に銅貨5枚を渡してきた。
それを受け取ったミーナは混乱している。
「あ、あの、これは?」
「もともと3人分の依頼でしか無かったでしょ? だから頑張ってくれたご褒美でもう1人分ね。」
そう言って俺達に向かってウィンクした。なんて良い人なんだ。
「「「「ありがとうございます!」」」」
折角の気持ちなので、有難く頂くことにした。
「また依頼を出すから、その時はお願いね♪」
「「「「・・・・」」」」
「……あれ?」
その辺は察して頂けると助かります。
こうして飲食店のお手伝い依頼は完了したのだった。




