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402/402

402 進化


宿の自分の部屋へと戻ってきたので、さっそく樹液を使った実験を行ってみようと思う。

まずは強度だ。シリコーンは、何度も動かしていると、可動域が割けてしまうという話を聞いたことが有る。この樹液も同じ感じになるのだろうか。


とりあえず腕ゴーレムを作り出し、関節の部分に樹液を縫って固めてみた。

後はゴーレムを動かして、耐久がどのくらい有るのかを調べてみることにした。


10回は問題無し。

100回になると、関節部にうっすらと白い線が見えてきた。

150回で切れ目が入って割けてしまった。



「150回が限界か。」



思ってた以上に耐久力が無かったな。一応、錬金術を使えば修復することは出来るのだが、150回しか動かせないのであれば、何度も修復する羽目になってしまうだろうし、面倒だ。

錬金術を付与して、常に修復させてみるか? とりあえず実験してみることにした。


確かに1000回折り曲げても割けることは無かったのだが、樹液がずれた状態で修復されていくのか、コブみたいな塊が出来ていた。コブは最初は小さかったのだが、徐々に大きくなり、最終的には見た目にも遠慮したい形状となったので却下することにした。


次に考えたのは、樹液に別の物質を錬金術で混ぜることで強度の高い物質に変えようと言う案だ。

鉄や銅、銀や金等の色んな物質と結合させてみたが、10回で割けてしまう等の強度が落ちることもあり、効果は今一つだった。


何となくオリハルコンを混ぜてみたら、絶妙な柔らかさはもちろんのこと、強度も純オリハルコンには負けるが、それ以外には切れることも割けることも無いベストな素材となったのは嬉しい誤算だった。オリハルコン、万能すぎるぜ! ……と言いたいところだが、唯一の欠点も有ったのだ。それは色合いがマーブル色となってしまい、見た目が最悪だったとだけ言っておく。



「色さえ解決出来ればオリハルコンが最高なのにな!」



他の色を混ぜてはみたのだが、酷くなることは有っても、綺麗になることは無かったのだった。くそっ!!

一度整理するためにも、色について考えてみることにした。



「色かぁ~ 色ってどうやって表現しているんだっけ? 確か光の反射によって見えるだったよな。黒色だけは逆に光の吸収だっけ? 反射、吸収……ん? まてよ?

 必要な色だけを強制的に反射させるようにすれば良いんじゃね? 確か肌色は赤と黄色だったな。」



創造魔法で、光魔法を使って特定の色だけを反射させる魔法を作り出してみた。

試しにオリハルコンに対し、赤色だけ反射させてみた。すると、真っ赤に輝くオリハルコンがそこに有った。



「完成だ! これで勝つる!」



何に勝つのかは置いておいて、反射する色を調節することで、理想的な肌色を作り出すことが出来たのだった。



「今思ったんだけど、この魔法って結構便利なんじゃね?」



流石に光を透過させて透明ってのは無理かもしれないが、暗闇で光を吸収させて反射させないとか、森の中で周りと同じ色だけ反射させる迷彩色にすることで隠れるのに便利だし、光魔法については全て反射で防げるのでは無かろうか。使い方次第だろうけど、覚えておいて損はなさそうだ。


そして、とうとう理想のフィギュ……もとい、ゴーレムが完成したのだった。

顔の造形はアンナに似ているが、髪形はツインテールにしたし、色も金髪にした。胸は断然こっちの方が大きいし、腰も括れている。まぁ、例の店主に鍛えられた結果だがな。

アンナはまだ8歳だからぺターンストーンだしね。よっぽど比較しないとモデルがアンナだとは気づかれないだろう。


まぁ余談だが、合金素材だけで作ると柔らかすぎるため、ベースとなる骨格をオリハルコンで作り、その周りを合金素材で包むことで、弾力のあるボディとした。ついでに、生活魔法で火を付与することで、人肌の温かさを再現させることに成功した。ハッキリ言って無駄機能だとは自覚しているが、職人の拘りなので譲れなかったのだ。

後は自立型にするか、操作型にするかだが、必要に応じて切り替えられれば一番良いのだが、こればっかりはやって見ないと分からないか。

俺は精霊を呼び出すと、アンナゴーレムに付与してみた。



「起き上がって見てくれ。」



俺が命令すると、アンナゴーレムは立ち上がった。ふむ、動作に問題は無さそうだ。



「体で気になる点は有るか?」


(胸の装甲が厚いと、動きが阻害。)


「……そりゃそうだよね。」



だが却下だ。反論は許さない。



「諦めてくれ。」


(ん。)


「とりあえず精霊が付与された状態で動かせるのか試してみるぞ。」


(ん。)



許可が出たのでドローンの視覚に切り替えて体を動かしてみることにした。



「……だめか。」



どうやら体に宿っている精霊が居ると、そちらが優先されるらしい。一応ドローンの視覚については別扱いらしいので、見るだけなら問題ないみたいだ。

仕方が無い。俺専用のゴーレムとして、後でもう1体作ることにしよう。



「っと、その前に。お前は特別と言うかそのゴーレム専用精霊となってもらいたいのだが、構わないか?」


(いいよ。)


「よし、なら名前はアンナのゴーレムだからカンナにしよう。」



俺がそう言うと、ゴーレムが光り出し、MPがごそっと抜けた感じがした。何が起こった!?



「ご主人様。」


「えっ!?」


「私に命名して頂けたお陰で、上位精霊に進化することが出来ました。ありがとうございます。」


「……はい?」



-----------------------------------------

【カンナ】

シュウが命名したことで、上位土精霊と進化し、眷属となった。

-----------------------------------------



「マジか。」



俺は、今後名前は安易に付けることはしないことを、心に誓うのだった。



「ま、まぁ、やっちまったことは仕方が無い。これから宜しくなカンナ。」


「はい! 頑張ります! ご主人様!!」


「あーその、何だ。ご主人様は止めてもらうと助かるな。」



見た目アンナだしな。万が一バレた時が怖いしね。



「では、何とお呼びすれば宜しいでしょうか?」


「んーシュウで良いよ。」


「ではシュウ様とお呼びします。」


「様も要らんけど、まあ良いか。」



何となくだが、それだけは譲れないって雰囲気を出しているしな。諦めるとしよう。



「それじゃ、魔力を譲渡するか。どのくらい必要だ?」


「いえ、魔力に関しては大丈夫です。」


「そうなのか?」


「はい。通常時であれば周囲の魔力を取り入れられるの問題有りませんし、私はシュウ様の眷属となったので、どんなに離れていても魔力は必要に応じてシュウ様から頂くことが出来る様になりました。ですが、シュウ様が私を必要としないのであれば、提供を切ることも可能です。」


「なるほど。まぁ、よっぽどのことが無い限りは切ることはしないよ。

 ただ、もし俺のMPが切れている時にゴーレム維持のためのMPが切れたらどうなるんだ?」


「その時は一時的に精霊界に戻ってしまいます。ですが、次からは名前を呼んで頂ければ、いつでも召喚に応じることが出来るのでご安心下さい。」


「へぇ。ランダムじゃなくなるんだな。」


「正確にはランダムでは無く、たまたま一番近いところに居た精霊ですけどね。」


「そうなんだ。」


「はい。なので、我先にとみんなシュウ様の近くに行きたがるんですよね。まぁ、私もそうでしたし、今回見事勝ち取れたのは幸いでした♪」


「よ、よかったね。」


「はい♪」



そうか~ 精霊の世界も競争社会なんだな。なんとも世知辛い世の中なんだ……


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