040 最後の依頼は
あれから1ケ月ほどが経過した。
草むしり依頼を優先的に受けることで、あと1回で、念願の依頼20回が達成する。
「さて、今日は何の依頼を受けようかな。さすがに草むしりの依頼は無いか……おっ! この依頼良いんじゃね?」
俺が見つけたのは『解体依頼』だ。何でも古い家を解体するお手伝いを募集しているみたいだ。
早速イザベルの所に持って行くことにした。
「次の方どうぞ。」
「この依頼を受けたいんですけど。」
「シュウ君、いらっしゃい。じゃあ依頼票を見せて貰えるかな?」
「はい。」
俺は持っていた依頼票をイザベルへと渡すと、それを見たイザベルは考え込んでしまった。
「どうしたの?」
「えっと、この依頼ってかなりの力仕事なのよ。シュウ君じゃ無理なんじゃ無いかな?」
「家を壊すだけなんでしょ? だったら何とかなりそうな気がすると思ってさ。」
「う~ん。流石に無理なんじゃ無いかな。ただ壊すって訳じゃ無くて、綺麗に解体して、その木材や石材は回収して他のことに回すことになると思うから、ただ壊すってのはね。」
回収するならアイテムボックスが有るが、アレは今のところ秘密にしているし、やっぱ無理かな。
「分かりました。違う依頼を探してみます。」
俺が再び掲示板に向かおうとしたら、イザベルに呼び止められた。
「ちょっと待って、シュウ君にお勧めな依頼が有るんだけど、どうかな?」
前にも似た様なことが有ったな。アレは確か犬の散歩だっけかな? ……嫌な事思い出しちゃったぜ。
「それってどんな依頼ですか?」
「前にも受けたじゃない。犬の散『お断りします!』…そう。残念ね。」
「参考に言っておきますが、その依頼は女性に勧めた方が良いですよ。それじゃまた後で。」
俺は再び掲示板に向かうことにした。
とは言え、もうたいした依頼も残って無いんだよね。どうすっかな……
「あっ、シュウ君だ~」
声を掛けられたので振り向くと、カレンとミーナとレイラの3人が居た。
「そっちも何か依頼?」
「うん、でも良い依頼が無いんだよね~」
「そうだね。」
ふと、ミーナとレイラを見て思い付いたことが有ったので、聞いてみることにした。
「そう言えば、ミーナちゃんとレイラちゃんは1年以上冒険者してるんでしょ?」
「うん。それがどうしたの?」
「何ランク?」
「シュウ君と同じGランクだよ。」
「あれ? 依頼を20回完了すればランクって上がるんじゃないの?」
「依頼を20回受けただけじゃ駄目だよ? 試験を受けなきゃ上がらないんだよ。」
「と言うことは、試験を受けて無いってこと?」
「そうだね。」
「何で試験を受けないの?」
「だって、試験官と戦わなきゃいけないんだもん。怖いよね。」
ミーナがそう言うと、レイラも頷いていた。
確かに10歳の女の子が戦うってのは無理とは言わないが、難しいかもしれない。
「それにね、どうせランクを上げるのならカレンと一緒が良いしね。」
「なるほどね。」
「シュウ君はランクを上げるの?」
「あと1回依頼が完了すれば試験資格を貰えるみたいだし、折角だから受けてみようかなって思ってた。」
「そっか、流石は男の子だね。」
その言葉は不適切だと思う。覚えては無いが、仕事をしていた様な記憶が有るので、中身はそれなりの年齢のオッサンだったと思う。言わ無いけどね。
「でも、戦うと言っても素人なんだけど、大丈夫かな?」
「さあ? 私達も受けたことが無いから、どんなことをするのかも知らないしね。」
「そっか。」
「それにしても、後1回でランクアップの資格を貰えるんだ。随分早いんだね。」
「カレンちゃんは違うの?」
「私はまだ6回だよ。5,6日に1回のペースでしか受けて無いからね。」
「そうなんだ。」
まぁ、月に銅貨1枚稼げば良いだけだから問題無いか。それでも十分に稼いでる方になるしな。
あれ? その割には孤児院の食事ってそんなに変わらないよな?
「シュウ君どうしたの?」
思わず考え込んでしまったため、カレンが心配になったみたいだ。
「あ、ごめん。何でも無いよ。」
「そう?」
最低限のお金を納めれば良いから、多分買い食いとかをしているんだろうな。何気にちょっとしたものとは言え、孤児院では手に入らなそうなアクセサリーとかを付けているしね。
馬鹿正直に全額納めていたのは俺だけらしい。良いけどね。
「どうせなら皆で受けられる依頼に挑戦してみない?」
リーダーのミーナがそんな提案をしてきた。
「「賛成~!」」
「まぁ、構わないかな。」
「じゃあ、依頼を探すぞ~!」
「「おー!」」
「お、おー!」
急遽合同での依頼を受けることになった。この人数で出来る良い依頼でも有れば良いのだけどな。




