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030 子供たちは


捕まったのは5人とも子供だった。男の子が4人に女の子が1人だ。

そしてよくよく見ると、全員の頭に犬の様なお耳と、お尻にフサフサのシッポが生えていた。



「獣人キター!!」



思わず俺のテンションが上昇する。あのシッポに顔を埋めてモフモフしても良いだろうか?

だが、そんな俺の興奮を他所に話が進んでいく。



「ようやくこうして顔を合わせることが出来たなぁ。」


「離せ!」


「いつもいつも俺達の弁当を盗みやがって、どうなるか分かってるんだよな?」


「知るもんか! 俺達だって好きでこんなことしているんじゃないんだ!」


「そっちの都合なんか知ったこっちゃ無いね。世の中にはな、働かざる者食うべからずって言葉が有るんだよ。」


「それが何だって言うんだ!」


「俺達が仕事を与えてやるって言ってんだ。その仕事をすればそれに見合った食事と多少の給金を与えてやるが、どうする?」



あれ? もしかしてこの人達ってかなりのお節介焼きで良い人!?

そして言われた本人たちも、何を言われたのか理解できなかったらしく、ポカーンとしていた。



「で、どうするんだ? 俺達と一緒に働くのか? それとも盗人として衛兵にでも渡した方が良いのか?」



そこまで言うと、頭が働きだしたのか、仲間内で話し合っていた。



「どうする?」


「俺はこんな生活するのは、もうこりごりだ。」


「俺も!」


「でも、こいつら信用できるのか?」


「今までの大人よりかは信頼できそうじゃね?」


「私、やってみたい!」


「そうだな、無条件で衛兵に出されてもおかしくないのに、こう言ってくれてるんだ。物は試しでやってみるのも良いかもしれない。」


「どうやら話し合いは済んだみたいだな。それでどうするんだ?」


「働かせてくれ!」


「良いだろう。じゃあ手付けとしてこいつをくれてやる。」



現場監督が、俺達が守っていた弁当を子供達へと渡した。

あれ? その弁当を守るのに俺達を雇ったんじゃ? 渡しちゃっても良いの?



「あの? 渡しちゃって良いんですか?」


「ん? あぁ、もともとこいつらにくれてやる予定の弁当だったからな。最悪取られても問題はない物だ。

 今回は捕まえることが出来て説得が出来た。お前さん達には感謝してるよ。」



どうやらもともと子供達へ渡すための弁当だったみたいだ。どうせなら更生もさせたかったみたいだが、今までは相手がすばしっこくて捕まえることが出来なかったのが現状だったみたいだ。



「それにしても今回初めて冒険者にお願いしてみたんだが、こんなに小さいのに凄いんだな冒険者ってのは。」


「いえ、本当にたまたま気が付いただけで、見つけられたのは偶然なんです。」


「まあいいさ、とりあえず俺達の目的は達成できた。依頼完了のサインするから依頼票を出してくれ。」


「えっ? まだ半分の時間しかやってないのに良いんですか?」


「別に弁当以外の物取りも出ないだろうし、良いんじゃないか?」


「は、はぁ。」



まぁ、早く終わるに越したことは無いし、まあ良いか。

俺は依頼票を渡してサインを貰った。



「じゃあ、また依頼があったらお願いします。」


「おう、気を付けて帰れよ!」



俺達は現場を後にしたのだが、ミーナ達も一緒に着いてきていた。

まぁ、行き先が同じだし、構わないか。



「シュウ君達は、冒険者ギルドへ行ったらそのまま帰るの?」


「えっと、こんなに早く終わると思わなかったから何も考えてなかった。ミーナちゃん達はどうなの?」


「折角だから少し街をぶらつこうと思ってるよ。シュウ君達もどう?」


「えっと、何処に行くかにもよるけど。」



ミーナちゃん達は10歳でお年頃の女の子だ。ファッション等に興味を持つお年頃だ。

雑貨屋みたいな所だったらまだしも、女性しかいない様な服屋下着のお店とかに行くのなら遠慮したい。



「小腹を満たしつつ色んなお店を覗くって感じかな?」


「あっ、それだとローザちゃんが許可しないと思うんで、お断りしておきます。」


「えっと、少しなら他の人達もやってることだし、暗黙の了解でシスターも許可しているのに何で?」



えっ? シスターも許可しているの? だったら買い食いしても問題無い?

まぁ、聖騎士目指しているローザのことだし、多分無理だろうな。



「俺は違うけど、ローザちゃんは聖騎士を目指しているからだってさ。」


「「「あ~!」」」



それを聞いて3人とも納得していた。やっぱり聖騎士になるって言うと、そんなイメージが有るらしい。やっぱりそう思うよね。

でも、実際聖騎士ってどんな人が成れるんだろうな。例えば盗みをしたり、人を殺したことが有る人は絶対に聖騎士になれないのだろうか?

そうしなければ生きられなかった、今日の子供達みたいな人が改心しても無理なのだろうか? そもそも単なる職業の一つってだけで、実は誰にでもなれるとか?



「まぁ、考えても仕方ないか。」


「シュウ君、どうしたの?」


「いや、何でもないよ。」


「そう?」



思わずつぶやいた独り言をローザに聞かれていたみたいだ。

そんなこんなで冒険者ギルドまで戻ってきたのでさっさと依頼の処理をしてしまうことにした。



「あら? シュウ君じゃない。こんな時間にどうしたの? 何か問題が有ったの?」


「いえ、依頼が終わったので報告に来ました。」


「えっ? もう?」



俺は依頼票と一緒にギルドカードを提出した。



「依頼者のサインは問題ないわね。なら手続きしちゃいましょうか。」


「お願いします。」



イザベルが機械を操作して依頼の処理してくれた。



「はい。カードと、こちらが依頼料の銅貨6枚ね。ご苦労様でした。」


「「ありがとうございます。」」


「本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、イザベルが対応させて頂きました。

 またのご利用をお待ちしております。」



今回も無事に依頼を終わらせることが出来た。

別の受付で処理をしていたミーナ達も丁度終わったみたいだ。



「じゃあ、ミーナちゃん、俺達は先に帰るね。」


「そっか、残念だけど仕方ないね。また後でね~」



チラリとローザを見た後に苦笑いをしていたが、バイバイと手を振ってくれた。



「じゃあ帰るか。」


「うん!」



俺達は孤児院に帰ることにした。もちろん今日の稼ぎも孤児院行となりました。もういいや……


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― 新着の感想 ―
[一言] イザベルさんのお決まりセリフがgoodですね
[良い点] やさしいせかい。 [一言] 最後は厳しい世界でもあり。 食事に還元されるので搾取じゃないのは理解してるみたいですが、やっぱり悲しいのねw
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