294 お米作り2
次の日になり、急いで朝食を取った後は、再びパイプ作りの続きだ。
一部、動物か何かに溝を崩された場所も有ったが、大した手間も無く、その日の内に全ての管路が完成することが出来た。
「よし! 明日からは田んぼ作りだな。」
そして次の日になり、俺は田んぼ予定地へとやってきた。
「さて、どのくらいの広さにしようかな。」
まずは試験的運用だから、それほど広さは必要が無いと思われる。後、1人での作業になるから広すぎても大変だしな。
とりあえず手持ちのライス麦だと0.5歩程度分の種籾しか無いが、まずはある程度の数を増やして行きたい。
「そう言えば、ライス麦ってどのくらいで出来るんだ?」
それによって作る田んぼの広さが決まってくるのだが、とりあえず試験的なこともあるし、1畝の広さで良いか。
と言うことで、まずは地盤固めからだな。固めないと水が土にどんどん浸み込んでしまって溜まらないからな。
「……ふと思ったんだが、全く水が抜けなくても良いのかな?」
記憶の中に、バケツで稲作ってのも有ったので、水が抜けなくても良いのだろう。
……いや、養分のことを考えたら、ある程度は抜けていく方が良いのか? バケツ程度なら肥料の追加も楽だろうし、土を入れ替えて連作なんてこともやらないだろうしな。
よし、そうと決まれば田んぼ作りを始めるとしよう。まずは田んぼ予定地の土を50cm程の深さまで掘って、掘った土はアイテムボックスへと収納する。
土魔法で、壁と床になる部分の土をほどほどの硬さに押し固めて、水が抜けにくい土壌を作成した後は、先ほど掘った時の土を元に戻した。
固めたことで減った分の段差が出来たが、水を入れる関係上、これで良いのだ。
下流の一部に雨等で増えた際に、余計な水を排出させるための溝を作成し、水の量が一定になる様にして、これで田んぼの完成だ。
河川の出口部分に水が入らない様に蓋を作成してから、残り1m分の溝を作ってパイプを通して土で埋めたら管路が完成した。
「よし、それじゃ水を流すぞ!」
塞き止めていた蓋を外すと、川の水がパイプへと一気に流れ込んだ。
「急いで戻るか。」
俺は田んぼへと戻ると、少しして田んぼへと水が流れ込んできた。
「おぉ!」
とりあえず今のところは問題は無さそうだ。十分な量の水が田んぼへと入ったところで気が付いた。
「どうやって水を止めよう……(汗)」
河川まで戻るのは面倒なので、出口部分に急遽板で蓋を作る……よし、止まった!
とりあえずはこれで良いとして、後は水の減る量と流れる水の量を調整して常に一定になる様に調整すれば良いだろう。
今のところ減る量が分からないため、後日この辺の調整をしようと思う。
さて、水が入った田んぼだが、あちこちで土の塊が残っていたりしてデコボコだったため、アークシェイクで均しておいた。
それにしてもこの魔法、草むしりにしろ土を均すにしろ、敵の足止めから埋めるにしろ、ホント便利な魔法だよな。
これで田んぼが完成したので、後は苗を作って植えるだけかな。そうそう、忘れるところだった。肥料のことも考えておかないとな。
肥料は、新しい田んぼのため、土に栄養が十分にあるとは思うから後回しにしても良いだろう。まずは苗づくりが先決だな。
確か番組では、1粒づつの籾を育苗ポットに入れて育てていたな。そんな便利な物は無いので、小さな畑を耕して等間隔に籾を植えることにした。
植えた後に水を掛け、後は毎日水をやって苗が出来るのを待つことにする。
次の日になり、俺は水をやりに畑へと来たのだが……
「なっ!? マジか!!」
なんと、苗がすでに3cm程まで生えていたのだ。いくら雑草とは言え早すぎじゃね?
この成長速度なら次の日には6cm、またその次の日には9cmになるだろうか。その調子なら、3日後には苗として使えそうだ。
そして次の日。
「何となくそんな気がしていたよ。」
苗はすでに10cmに成長していたので、明日には苗が完成してそうだ。
そしてまた次の日になり、苗は25cm程まで成長してた。茎の太さも5mm程有るし、もう苗として植えても問題無いだろう。
「よし、田植えだ!」
これ以上待つと、下手したら実を付けられそうだしな。
折角田んぼを作ったのに、使わないのも勿体ない。俺は急いで苗を回収すると、田んぼへと植えていくのだった。
まぁ、全部で30本程度しかないので、作業はあっという間に終わった。
とりあえず比較用に10本程はそのまま畑で育ててみることにした。
「後は何日で出来るかだな。」
苗の成長具合から考えると、恐らくそれほど日数は掛からないと思う。
これからは毎日ここに来て、成長具合を観察しながら育てていこうと思う。
次の日、苗はすくすくと成長し、50cmになった。
そしてまた次の日、今日は70cmまで成長し、小さな花が咲いた。
そしてまた次の日になると、今度は小さな穂が出来た。稲自体はこれ以上は成長しないみたいだ。
……って成長が早すぎじゃね? しかも、頂いた穂の大きさと同じってことは、一応これで完成なのだろうか。
とりあえず様子見でもうしばらく観察してみようと思う。
次の日、穂の大きさが気持ち大きくなった気がする。これは期待が持てそうだ。
さらに次の日、やっぱり気持ち大きくなっている気がする。よし!
それからも毎日穂は徐々に成長していき、籾を植えてから14日後、日本で食べていたお米と同等の大きさまで成長したのだった。やったね!
もしかしたらもっと成長するかもしれない。とりあえず半分だけ刈り取って、残りは様子を見ることにした。
それから2日経過したが、どうやらこれ以上は成長しないみたいだ。
そして、さらに3日後になると、穂から全ての籾が落ちていた。
「なるほど、収穫時期は14日から18日ってことか。
もやしほど早くは無いが、はつか大根より収穫が早いとはな……」
ちなみに畑で育てていた方はと言うと、穂が出来るまでは同じだったが、それ以上は成長しなかった。
違いは、9日で籾が落ちて、その日の内に芽が出ていたくらいだ。
そうそう、水田に落ちた籾は、何故か発芽せずに水に浮いていた。恐らくだが、発芽するには土が必要なのだろう。
それから色々と実験を続ること3ヶ月ほどして、色んな事が分かった。
まず発芽の条件には、土が必要なのが確定したことだ。何故なら、水をしみこませた布や砂、粘土と色んなもので試してみたが、土以外では全く発芽しなかったのだ(謎)
記憶の中での発芽条件は、水と空気と温度だったハズなのだが、この世界では多分違うのだろう。
次に分かったことは、ライス麦はある一定の範囲まではすぐに育つが、それ以上になると育たなくなると言うことだ。
その範囲は直径で20mで、それ以上は絶対に生えない。しかも、測ったと思えるくらいに綺麗な円になるのだ。
そして面白いことに、円の端から11m以上離れた場所じゃないと根付かないのだ。例えば10mの場所に植えてみると生えてこないのだ。
試しに徐々に距離を離して植えて行ったら、11mの場所に来て初めて芽が出始めたことで知ることが出来たのだった。
この特性により、ライス麦が際限なく増え続けてライスの星に成らないことが分かったので一安心だ。まぁ、11mを超えると増え始めるので、油断は禁物だけどね。
ただ面白いことに、籾は風が吹いている時には絶対に落とさないのだ。風が無い時に籾を落とすと、すぐに発芽して根を張るため、増やそうとわざわざ植えない限りは広がらないらしい。
万が一増えたとしても、ライス麦はよく燃えるため、火を点ければあっという間に籾まで燃えて消滅するため、増えたとしてもそれほど困らないらしい。
最後に、水田で籾が大きくなった理由は、大量の水と養分のどちらもが揃って初めて大きくなるらしい。
理由は、水だけや、養分だけで育ててみたけど成長しなかったからだ。一応一般的なライス麦までは成長したけどね。
そして、日本での水田同様に連作障害が起こらなかったのは幸いだった。畑でも起こらなかったけどな……




