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283 お米作り1


台所を後にした俺は、これからのことを考えることにした。

まずは、よりお米らしくなるためにも、ライス麦の品種改良だ。



「……品種改良ってどうやるんだ?」



前に、何かの本で読んだが、ある苗から実ったピーマンの中で1番苦く無いピーマンの種を育て、新たに実ったピーマンの中から1番苦く無いピーマンの種を育てを繰り返すことで、最終的には苦く無いピーマンが作れると言った感じの内容だ。

これと同じことをして、粒が大きくて、より甘みが有って、粘り気の有る実を種籾にして、次のライス麦を育てるのを繰り返せば、お米になるのでは無いだろうか。



「……今思ったんだが、それっていったい何年かかるんだ?」



農業には詳しく無いのだが、目的の品種になるには、かなりの長い年月が必要になると思われる。

さすがの俺でも、そんなに長期間も農業なんてやってられないぜ。



「味はともかく、とりあえずご飯が食べられたことで良しとするしか無いだろうな。」



誰か別の人による品種改良を期待したいが、家畜の餌としている時点で、希望は薄いだろうな。

だが、やっぱり美味しいご飯が食べたいと思ってしまうのは、日本人としての性だろう。



「少しでも美味しくなるように育ててみるか?」



前世で稲作をやっている番組を見た記憶が有るし、何とかなるのでは無かろうか。

宿の経営についてはもう俺の手を離れただろうし、ダンジョン攻略は別に急いではいない。と言うかお米の方が個人的には優先度が高いしな。



「よし、やってみるか!」



そうと決まれば即行動が俺の信条だ。まずは農家の人にライス麦のことを聞きに行ってみよう。

俺は、この前ライス麦を譲ってくれた農家へ聞き込みをするために村へ転移した。



「たしかこの辺りに……いた! すいませ~ん! ちょっとお話良いですか~?」


「ん? おめえさんは確かこの前の……」


「そうです。この前はライス麦をいただき、ありがとうございました。」


「なに、たいしたもんじゃないし、かまわんよ。」


「それでご相談なのですが、ライス麦を自分でも育てたくて、何かコツとか有ったら教えて貰いたいなと思いまして。」


「育てるも何も、適当に植えとけば勝手に増えて生えてくるだよ。作業と言えば、せいぜい家畜の餌にする時に刈り取るくらいだな。」


「そうなんですか?」


「まぁ、家畜の餌だし、わざわざ手間暇かけることはせんわな。」


「なるほど、教えてくれてありがとうございます。」


「なに、ええってことよ。」



話は聞けたのでとりあえずその場を後にした。

そうか、ライス麦って扱い的には雑草と同じってことみたいだ。



「とりあえず見よう見真似でやってみるか。」



俺はダンジョン宿へと戻って来て、一度外へ出ると、この辺りの地形の調査から始めることにした。

ダンジョン宿の出入り口の周辺は、開けた草原になっているため、畑を作るのは問題無い。

だが俺が目指すのは、偏見かもしれないが米作りと言ったらやっぱり水田だ。海外では畑で作っている所あるのは知っているが、水田には水田の利点が有るからな。まぁ、これも番組の知識だけどね。


とりあえず水田の一番の利点は、連作障害が防げることだ。そして水が溜まっていることにより、全くとは言わないが雑草が生えにくいのだ。

他にも川から養分が運ばれてきたり、土壌から窒素やリン酸などを取り出したりするので肥料が少なくて済んだり、水やり等の作業が不要になる等があげられる。


とりあえずウンチクを語るのはこの辺にして、まずは河川を探しますかね。

ドローンを限界の16個を同時に飛ばすことにした。これだけの数の細かい制御は無理だけど、真っすぐ飛ばすだけなら問題ないからな。知りたいのは川の有る方向だけだからな。



「有った!」



河川はすぐに見つけることが出来た。と言うかガンガルの街の直ぐそばを流れていた。そりゃそうだよね。

距離にすると3kmくらいだ。だけど、街の方から見るとここは少し高台の位置になる。そのまま引いても水は流れてこないため、上流の方から引く必要を考えると7kmは必要になりそうだ。少し面倒だな。



「単なる水が必要なだけなら良かったんだけどな。」



魔法で出す水は、不純物が一切無いため、森からの恵みでもある栄養素が全く含まれて無いのだ。



「仕方が無い、掘るか。」



溝を掘って行って水を流すでも良いが、途中で埋まったり、埋められたりして水が止まるのも困な。

だったら地中にパイプを通して地上では見えなくするのが良いだろう。

まぁ、どっちにしても一度溝を掘る必要は有るんだけどな。


とりあえず効率を重視することにしよう。

掘るためのスコップは極薄のオリハルコンで作るとして、最初から溝の形のスコップにして掘った後にそのままアイテムボックスへと入る様にすれば、あっという間に溝を掘り進められるのでは無かろうか。イメージ的に近いのは、雪かきスコップだな。

さっそく作ることにした。




・・・・




「出来た。」



単純な造りだから、サクッと完成。試し掘りをしてみたが、力を入れずにサクサクと進むし、思った以上に良い出来だ。

後はドローンで確認しながら目的の河川まで掘り進めていく。



「うははははっ!」



掘った後から土を回収するので重さは増えないし、サクサクと掘れるしで、これは楽しすぎる!

7kmの距離だったにも係わらず、小一時間程度の時間で河川までの溝を掘ることが出来たのだった。



「おっと!」



残り1mで貫通と思ったところで気が付いた。このまま最後まで掘ってしまったら、溝に河川の水が流れ混んで行ってしまう。

水田をまだ作ってないのに水が流れて行ったら、あの辺一帯が水びだしだ。



「よし、開通は後回しにして、管路を作って埋めながら戻りますか。」



埋める管路だが、細すぎると詰まりそうだから、直径30cmのアーチ型にした。この形にした理由は、上からの衝撃に耐えそうだったからだ。

えっ? オリハルコンコーティングをすれば良いって? そりゃそうかもしれないが、さすがにこの距離の材料にするには足りないからな。

その辺に落ちている石や岩で代用する関係上、この形にしたのだ。


アーチ型の管路を作っては埋める作業をしつつ戻るのだが、さすがに作業量が増えたせいで、進むスピードは掘る時に比べてかなり遅くなった。

2km程進んだところで日が暮れてしまった。



「今日のところは此処までだな。また明日にしよう。」



俺は作業を終了して宿へと帰るのだった。


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