292 ごはん
自分の部屋へと戻ってきた俺は、玄米から糠を取る精米作業を行うことにした。
錬金術で瓶を作ると、そこに玄米を投入し、棒で突っつきまくるのだった。
・・・・
ザッザッザッザッ……
かれこれ1時間は突いているだが、一向に糠が取れた気がしないんですけど……
気持ち剥がれたかな? って程度だ。だがお米を食べるためにも俺は頑張ることにした。
ザッザッザッザッ……
2時間が経過した。まだまだだな……
ザッザッザッザッ……
4時間が経過した。
ようやく良い感じに糠が剥がれてきて、白い米が見えてきた。
ザッザッザッザッ……
6時間経過、良い感じになった。
「こ、このくらいで勘弁してやろう。」
正直言って、かなり割に合わない作業だ。昔の人は本当にこんな作業をしていたんだろうか……
さて、ようやく米が出来た訳だが、見た目は俺の知っている米とはやっぱり違うな。
大きさは米の4分の1程度だし、形も丸い。
「まあ、とりあえず炊いてみるか。」
炊飯器なんてものは無いし、窯も無い。
と言う訳で窯の製作から行うことにした。記憶を頼りに粘土で窯を製作する。後は錬金術で乾燥させて火魔法で焼いたら完成だ。魔法最高だぜ!
後は木屑で蓋を作れば、窯の完成だ。
「よし、次だ!」
逸る気持ちを抑え、台所へと向かう。
「オーナ? どうしましたか?」
「ハウスさん! ちょっと場所を借りるよ!!」
「えっと、ど、どうぞ。」
俺の勢いにちょっと引いている気がするが、まあ良い。
まずは米を研ぐ作業から入る。大量の水で米同士がこすり合わせて残っている糠が落ちる様にしっかりと力を入れる。
水を捨てて新しく入れまた研ぐ、これを3回ほど繰り返した後は、窯に米と水を入れる。水の量は米から手のひらの厚さ分の水の量だ。
後は、このまま水分を吸収させるために、30分程待つことにする。
30分経ったので、窯を火にかける。最初は中火で、沸騰したら弱火にして15分程煮る。
15分経ったら、火を止めて10分程蒸らしたら完成だ。
窯の蓋を開けると、もわっと湯気が立ち上り、懐かしいご飯の良い匂いに包まれた。
「これはたまらん! だが、まだ慌てる時間じゃない。」
まずはしゃもじで……しゃもじが無い……だと!? 光の速さで木屑からしゃもじを作る。
しゃもじを使って天地返しをした後は、茶碗に……茶碗も無い……だと!?
仕方が無いので適当な深皿で代用しよう。絶対後で茶碗を作ってやる!!
「では、いただくとするか。」
俺は箸を……って、箸も無いんかい!! 俺は、自分の準備不足に呆れるのだった。勢いだけに任せて行動するとロクなことが無いな。
とりあえず木屑から箸を作ると、今度こそご飯をいただくことにする。
パクリ……ふむ、確かにこれはご飯だ。 ただ、粘り気も甘みも歯触りも微妙だが、ご飯なのには違いない。
あぁ……神よ、このご飯に出会えた喜びに感謝を!
(わ~い♪ シュウ君が感謝してくれるなんて感激だよ~♪)
そう言えばこの世界の神ってコイツだったな。ならさっきのはキャンセルで。
(えぇ~~~!!! そんなあああぁぁぁ~~~~!!)
改めまして、八百万の神々よ、特にお米の神様への絶大なる感謝を。
(え~~~ん!!)
とりあえず満足した俺は、一息入れていると、ハウスさんが質問してきた。
「オーナー、これは?」
「き、き、き、興味があり、あります、です。」
「あぁ、コレ? コレはライス麦だね。」
「ライス麦と言うと、あの家畜の餌のライス麦ですか?」
「そのライス麦だね。」
「……えっと、それは美味しいのでしょうか?」
「た、た、た、食べてみたいです。」
「残ってるので良いなら食べても良いよ。」
「そうですか! ではいただきますね。」
「あり、あり、ありが、とう、ござ、ございます。」
2人はそう言うと、ご飯を食べたのだが、反応は微妙そうだ。
「……正直に言うと、そこまで美味しい物でも無いですね。」
「な、何、何かと一緒だと、良い感じ、かも、です。」
「ふむ、さっき作った野菜炒めと一緒に食べてみようか。」
「で、ですね。」
流石は料理人達だ。ご飯には、おかずが必要なことに気が付いたか。
「悪くは無いですね。」
「味、味が染みることで、おい、美味しいです。」
「料理に出したらどうだろうか?」
「こ、この、このままだと、だ、駄目でしょう。なので……」
「ほぅ? 良いですね。試してみましょうか。」
「は、は、はい。」
「オーナー、このライス麦をもう少し欲しいのですが。」
「ごめん、それだけしか無いや。」
「……そうですか。残念です。」
2人してガックリと項垂れてしまった。すまんね。




