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291 水車小屋


街を出て少し進むと、小川へと出た。そこから小川に沿って少し進むと、前方に水車小屋が建っているのが見えた。あそこが目的地だろうか。



「あそこで小麦粉を作ってるんだ。」


「へぇ。」



どうやら目的地で合っていたみたいだ。

水車小屋に到着し、小屋の中へと入ると、そこに1人の女性が椅子に座っていた。



「戻ったぞ。」


「あら、今日はやけに早いじゃない。どうしたの?」


「何、この小僧が水車小屋での脱穀を見学したいって言ってね。その代わりにと小麦粉を全部買ってくれたんだ。」


「そうだったの。ありがとうね。」


「いえ、こちらの都合も有ったので大丈夫です。」


「じゃあ、まずは脱穀がどんな感じで行われるのか見てみるで良いのかな?」


「よろしくお願いします。」


「じゃあ順番に説明していくわね。」



小麦粉を作る工程は、大きく3つとなっていた。

まず、臼に小麦の籾毎投入し、水車の歯車をセットすると、杵がテンポよく打ち付けられ、実と籾を分離する作業が行われる。

分離した後は、隣の穴に入れると、水車の回転で風が起こるらしく、軽い籾殻だけ飛ばされる仕組みらしい。

そして、残った実を回転軸に据え付けられている石臼に入れると、石臼で挽かれることで小麦粉が作られるみたいだ。

小麦粉は全て粉にしてしまうため、麦糠や外側の部分とか内側の部位で分けるとかしていないみたいだ。どおりで日本で売ってるような真っ白な小麦粉ってのが無い訳だ。



「こんな感じで小麦粉は作られるわ。分かったかしら?」


「はい。」


「ところで、単なる興味本位なのだけど、こんなことを知ってどうするの?」


「元はと言えば、ライス麦を脱穀したかっただけなんですよね。」


「ライス麦って、あんなのを脱穀してどうするの?」


「食べるんですけど?」


「正直に言うけど、ライス麦を食べるのはお勧めしないわよ? 家畜の餌にするぐらいだし、味は微妙よ?」


「まぁ、興味本位な部分も有るので、大丈夫ですよ。」


「それなら良いけど……だったら、量にもよるけど折角小麦粉を大量に買ってくれたことだし、脱穀してあげようか?」


「良いんですか?」


「ええ。そこの畑にも生えているし、ちょっと待っててね。」



そう言うと、女性は小屋を出て行った。

少しして、両手で持てる程度のライス麦を持って戻ってきた。



「このくらいの量で良いかしら?」


「はい。十分です。」


「じゃあ始めるわね。」



女性は、穂に籾が付いている状態のまま臼に投入した。なるほど、この程度の量なら、いちいち穂から取らなくても良いのか。

杵で叩きつけるのに合わせて穂を回転させていき、実と分離させるのを繰り返すと、脱穀が完了した。

後は風を送って、実と、籾殻を分離したら完了だ。



「これで良いかしら?」


「はい。ありがとうございます。」


「また何か有ったらいらっしゃい。小麦粉を買ってくれるのならその辺も協力させてもらうから。」


「はい。」



俺は玄米を受け取ると、ホクホク顔で水車小屋を後にするのだった。


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