288 ランクアップ
さて、時間はまだ早いから、ダンジョンに行っても良いのだが、あまり気分が乗らないな。
ヨーヨー作りは終わってしまったし、後、アイテムボックスの中に入っているのは……
冒険に必要な道具、料理の材料、鉱石関係、ポーション系に魔石だ。
「少しウルフ肉の処分と、魔石の売却でもしてこうようかな。」
とりあえずハウスさんの所で必要かどうかを聞いてこよう。
「ハウスさん、ウルフとホーンラビットの肉ですが、何個必要ですか?」
「あ、オーナー、いらっしゃい。
すいません。肉は冒険者が売りに来るようになったお陰で、過剰気味なんですよ。」
「あ、そうなんだ。」
恐らくお金の代わりに肉や魔石を売る人が多いのだろう。ダンジョン内だからか、お金を持ち歩くよりはドロップアイテムで対応する方が良いのかもしれないな。
仕方が無い、冒険者ギルドで処分することにしよう。俺は、地上へ出て、冒険者ギルドへ向かうことにした。
と、その前に、とりあえず以前作った荷車を取り出して、肉を乗せていく……
「ちょっと山になってしまったが……まあ良いか。」
後は、革のリュックに魔石を詰めてと、これで準備良し! いざ! 鎌く……じゃなくて冒険者ギルドへ!
もうすぐ冒険者ギルドの入り口に入るところまで来たのだが、その入り口で仁王立ちしている女性が居るのに気が付いた。
その女性はいつも対応してくれていたカトリーヌさんなのだが、何故か顔が引きつっていた。
「はい、ストーップ!」
「えっと、何か?」
「何かじゃないでしょうが、その肉の山は何?」
「売りに来ました。」
「……何となくそんな気がしていたのよね。連絡が入った時には何の冗談かと思ったんだけど、君は前にも実績があったからね。」
「じゃあ、お願いしても良いですか?」
「……ちなみに何個有るのか聞いても良いかな?」
「とりあえずキリが良い数字にしようと思ったのでウルフ肉が400個です。後、魔石が少々……」
「少々? その革のリュック、パンパンに膨れているんだけど、本当~に、少々?」
「……一杯です。ごめんなさい。」
「正直で宜しい。じゃあ、肉はそのままだと傷んじゃうから、裏から直接倉庫に運んで頂戴。」
「分かりました。」
俺はカトリーヌさんの案内の元、指定された場所にウルフ肉を納品し、数を書かれた紙を渡されたので、それを持って受付カウンターへと向かった。
「言われたとおりに置いてきました。」
「そこで数量が書かれた紙を渡されたと思うけど?」
「あ、はい。これですね。」
俺は先ほど渡された紙をカトリーヌさんへと渡した。
「確かに。後、そのリュックは全部魔石で良いのかな?」
「はい。」
「じゃあ、ちょっと借りるわね。」
革のリュックを渡すと、それを魔石を数える装置へとザラザラとぶちまけていた。
どうやらすぐに結果が出たみたいだ。
「えっと、ウルフ肉が400個に、ゴブリンの魔石が57個、ゴブリンライダーとホブゴブリンの魔石が250個、オークの魔石が66個、ハイオークの魔石が509個!? 何でこんなに有るのよおおおぉぉぉ~~~!!」
「テヘペロ♪」
「……まあ良いわ。とりえずこちらが報酬の金貨5枚、大銀貨8枚、銀貨7枚、大銅貨5枚、銅貨7枚になります。本当に凄いわね。
そして必要なポイントが溜まりましたので、これでCランクへの挑戦権が得られました。おめでとうございます~♪」
「あ、ありがとうございます。」
「それでランクアップ試験ですが、どうしますか?」
「ちなみにランクアップ試験ってどういった内容になるのでしょうか?」
「今回シュウ君は、Cランクへの挑戦になるので、盗賊の討伐とかの実績が必要になります。」
「盗賊か……以前盗賊を捕まえたことが有るけど、討伐じゃないと駄目なのか。ちょっと嫌だけど仕方ないか。」
「えっ? 盗賊を捕まえた? それって何時ですか?」
「確かガルスの街を出てすぐだったから……約1ヶ月くらい前かな。あっ! ごめん、捕まえたのって盗賊じゃなかったかも。」
「そうなんですか? じゃあ試験を受けるしか無いですね。」
「そっか、一応捕まえたのは暗殺者だったんだけどね。」
「ブウウゥゥ~~!! げほっ! げほっ!」
カトリーヌさんが女性として見せてはいけないほど盛大に噴出した。
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫よ。それで確認なんだけど、盗賊じゃなくて暗殺者? 本当に!?」
「はい。あ、でも、全員殺されちゃったんだよね。」
「ちょ、ちょっと待っててね。確認してくるから。」
カトリーヌさんがそう言うと、部屋の奥へと走って行った。待つことしばらくしてカトリーヌさんが戻ってきた。
「確かに1ヶ月前にその事件は有ったみたいね。ただ、全員が取り調べが終わる前に殺されたことで、暗殺者としての確認は出来なかったみたい。
なので、単なる盗賊として処理されたと思うけど、それで間違い無いかしら?」
「多分、そんな感じで処理されたかも。」
「じゃあ、記録も残っているし、盗賊の討伐済みと言うことで、Cランクアップ試験は合格になります! おめでとうございます~!!」
「えっ? そんなので合格にしちゃって良いの?」
「はい。Cランクアップの条件が対人戦だからです。
対人戦と言っても試合とかじゃ駄目ですよ? 犯罪者等との命のやりとりが条件になっているんです。」
「なるほど。」
と言うことは、レリウスとサムもこの条件はクリアしているんだな。まぁ、仕官しちゃったから、冒険者としてランクアップするかは知らんけどな。
「それではシュウ君、ギルドカードの提示をお願いします。」
「あ、はい。」
俺は自分のギルドカードを取り出して提示した。
それをカトリーヌさんが受け取ると、機械に通して処理をすると、新しく銅色のカードが出てきた。
「こちらがシュウ君の新しいギルドカードとなります。お受け取り下さい。」
俺は銀色のギルドカードを受け取った。これで俺もCランクか。とんとん拍子にランクが上がって行くな……
よくよく考えれば、これでアランさんのランクに並んだんだな……
「本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、カトリーヌが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
とりあえず用事が済んだので、俺は冒険者ギルドを後にすることにした。




