278 怒られた
アランさん達と別れた俺は、先ほど言われたことを解消させることにした。
「気が重いが仕方が無い。行ってくるか。」
俺は裏通りへ行き、誰も居ないことを確認したところで、リーデルの街の孤児院へと転移するのだった。
・・・・
「久しぶりだな。」
約2ヶ月ぶりの孤児院だ。何となくだが魔王城に見えてしまうのは気のせいだろうか。
俺の足が中々進まない……
「シュウ君。」
「うわあああぁぁ~~~!!」
突然名前を呼ばれてビックリした俺は、後ろを振り返る。
「レ、レイラ!? いつの間に!」
「……最初から居たよ? と言うか、目の前に突然シュウ君が現れたのが正解。」
「マジか……お願い! 今見たことは内緒にしておいてくれ!!」
「分かった。シュウ君のお願いだから内緒にする。」
「助かる。」
「ただし!」
レイラが人差指を立てて、俺を見た。
「たまにで良いから会いに来て……」
「お、おう。」
レイラが頬が赤くなって照れながらそう言った。何となく見てるこっちも恥ずかしいぜ。
「そ、そのだな、こ、孤児院長は今、居るのか?」
「居るよ。」
「ありがとな。ちょっくら行ってくるわ。」
「うん。」
俺はレイラと別れると、孤児院長室へと向かうことにした。
途中で孤児達と会う度に、色々と言われるのだった。
「うわっ、ゾンビだ、シュウゾンビが来たぞ~!!」
「きゃああ~~!!」
「誰がゾンビだ、誰が! 俺は生きてるぞ!!」
「だって、シュウは行方不明だったんだろ?」
「何処に行くかを言い忘れてただけで、行方不明じゃねーよ!」
「なーんだ。つまんねーの。」
「こいつら……」
冗談で言っているのは分かってはいるが、ちょっと顔を出さなかっただけで勝手に死人にするのはどうかと思う。
そんなこんなで、孤児院長の部屋までやってきた。
「はぁ……入りにくい……」
とは言っても入らない訳には行かないし、俺は覚悟を決めることにした。
ガチャ!
ノックをしようとしたら、扉が開いた。
「うおっ! び、ビックリした。」
「待っていましたよ。シュウ。」
「な、な、な、何で俺が来たことを知っているんですか?」
「あれだけ騒いでいたら誰でも分かります。」
「……そうでした。」
「とりあえず部屋に入りなさい。」
「はい。失礼します。」
俺は孤児院長室へと入り、勧められたソファーへと腰を下ろした。
「久しぶりですね。元気そうで良かったです。」
「長い間、連絡をしないで申し訳ございませんでした。」
「まぁ、シュウのことですから元気だろうとは思っていましたけどね。もしかして誰かに言われたから此処に来たのですか?」
「ギクッ! そ、そんなところです。」
「そんなことだろうと思いました。誰に聞いたのですか?」
「えっと、アランさんです。」
「あぁ、そう言えば半月ほど前に此処に来たんでしたね。確かダンジョンの街の方へと行くとか言ってましたが、途中で会ったのですか?」
「そ、そんなところです。」
流石にガンガルの街で会ったとは言えない。
「まあ良いでしょう。それでシュウ。貴方にはこれからもこういった事が起こるでしょうし、前にも言ってましたが孤児院を出なさい。」
「……はい。」
もうこれ以上孤児院に迷惑を掛けられないし、俺は素直に頷くのだった。
「話は以上です。明日、お別れの場を儲けますので、お昼過ぎにこちらに来なさい。」
「わかりました。
……あ、あの! たまには此処に遊びに来ても良いんですよね?」
「はい。前にも言いましたが、節度を持っていただけるのなら許可しますよ。」
「わかりました。」
孤児院長室を出た俺は、シスターに孤児院を出ることを伝え、後で別れの挨拶をしにくるると伝えた後は、そのまま孤児院を出ることにした。
「はぁ……やっちまったな。まぁ、もともと出て行かなくちゃ行けなかったことだし、それが早まっただけか。仕方ないよな……」
たとえダンジョン街へ行くと事前に伝えていたとしても、早かれ遅かれ同じ結果にはなっていただろう。
逆に、その時点で追い出されていた可能性も高かっただろうけどね。
転移魔法でダンジョン宿へと戻ってきた俺は、まずはミーナさんとミミさんのところに向かうことにした。
「オーナーにゃ。」
「おかえりぴょん。」
「ただいま。ちょっとお願いが有るんだけど良いかな。」
「何かにゃ?」
「今日、俺がお世話になっている人がこの街に到着したんだ。もし、その人が此処に来たのなら、タダで泊めて欲しいだけど。」
「それって、前の冒険者みたいな人かにゃ?」
ミーナさんがそう言うと嫌そうな顔をした。確かにあの冒険者は困った人達だったし、そういう態度になっても仕方が無いと思う。
「違う違う、本当に俺の命の恩人で、赤ちゃんの時に森に捨てられたところを拾って助けてくれたんだ。
名前はアランさんとエレンさんで、何とエレンさんは、俺の名づけの親でも有るんだぞ。」
「そうなのかにゃ? それなら構わないにゃ。でも、オーナーは孤児だったのにゃ。驚きなのにゃ。」
「私もそう思たぴょん。」
「そうか? 別に孤児でも問題ないだろ?」
「にゃ~孤児って言う割には知識も有るし、非常識すぎるにゃ。
孤児院だったらもっと厳しく育てられるから、もっとまともに成長するにゃ。」
ミミさんもコクコクと頷いていた。失礼だな!
「色々と勉強したんだよ! もう俺が孤児だってのは良いだろ!」
「それもそうにゃ。ところで部屋のことだけど、例のスィートルームにするのかにゃ?」
「う~ん、それでも良いんだけど、気を使われそうだしなぁ……そうだ! 余っている従業員用の部屋に案内して欲しい。
従業員用ならお風呂も入り放題だし、宿泊用の部屋より使い勝手が良いしな。後でベッドを追加しておくよ。」
「わかったにゃ。」
「まかせるぴょん。」
話は済んだのでフィーネの許可と、部屋の準備をしに向かうことにした。
「フィーネちょっと良いか?」
部屋に入ると、今日は普通に仕事をしていたみたいで、書類とにらめっこをしていた。
「どうしたんだい?」
「俺の知り合いがこの街に来たんだ。もしここに来たらで良いんだが、その時は従業員部屋の1つを使わせてもらいたいんだけど、構わないか?」
「それは構わないが、前の冒険者みたいなのだと、出来れば遠慮したいんだが。」
「前の冒険者とは全く違うよ。何と言ってもアランさんとエレンさんは俺の恩人でもあるからな。」
俺は、フィーネに2人が如何に俺を助けてくれたのかを説明するのだった。
「君がそこまで言うのなら許可しよう。
スィートルームに泊まらせるならアレかもしれないが、今回は従業員部屋の1つを利用するつもりなんだろう? だったら構わないさ。
他の従業員達には、僕の方から周知しておくよ。」
「助かるよ。」
フィーネの許可が貰えたので、俺は従業員部屋の整備をしに行くことにした。
まずは、部屋の場所だが、色々と夜に迷惑をかけるかもしれないため、一番の奥の部屋にすることにした。と言うか、一番奥の部屋はすでに使われていたため、通路を伸ばして新しく追加で作ることにした。
2人で利用する関係上、広さは10畳程にして、壁は厚めの防音仕様にした。まぁ、2人でイチャイチャしたいだろうから、内風呂も用意しておいた。
基本的な家具は他の部屋と一緒だが、ベッドだけは2人で寝れるキングサイズのベッドにしておいた。
後は入り口に名前の札を立てかけて、アランさんとエレンさんの部屋であることを示しておく。
「こんな感じかな。」
完成した部屋に満足した俺は、自分の部屋に戻り、明日のためにさっさと寝ることにした。
おやすみなさい……




