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277 再会


従業員用階段を使って外へと出た俺は、久方ぶりに街へと繰り出すことにした。



「あれ? やけに人が多いな。何かお祭りでも有るのかな?」



以前来た時と比べると、冒険者の数も商人の数も増えているみたいで、街中は賑やかだった。

気になった俺は、屋台で串肉を売っている人に聞いてみることにした。



「おっちゃん、串肉を3つくれ。」


「らっしゃい、3本ね。だったら銅貨3枚だ。」



俺はお金を支払って、串肉を受け取った。



「ちょっと聞いても良い?」


「おう、どうした?」


「前に比べて、やたらと人が増えたみたいなんだけど、何かお祭りでも有るの?」


「いや、お祭りは無ぇな。人が増えた理由は、ダンジョン産の魔石の流通が増えたお陰だな。」


「何で増えたの?」


「俺も噂で聞いた話だから確実性は無いが、何でもダンジョン内に宿屋が出来たらしくてな。

 ちゃんとしたベッドで、しっかりと体を休める様になったお陰で、より多くの魔物を倒せるようになったみたいなんだよ。」


「あー」



どうやら俺が原因だったらしい。まぁ、分からん話でも無いな。



「そういうことだから、魔石を求めて冒険者や商人が増えたって訳さ。」


「ありがとう。よく分かったよ。じゃあ俺は行くね。」


「おう、また来てくれよな。」



俺は屋台を後にした。

串焼きの肉を頬張りながら街中を散策してみる。

商人が増えたってことは商売をする人も増えたってことになるので、屋台や露店の数がかなり増えていた。

折角なので色々と見て行こうと思う。


何か掘り出し物でも無いかなぁ~と散策していると、突然後ろから抱き着かれた。

もしかして、こんな街中の人目が有る中で人攫いか!? いくら俺が子供だからってずさんすぎるぞ!



「シュウ君~!!」


「へっ?」



突然抱き着いてきた人から名前を呼ばれたので、一瞬呆けたてしまったが、この声って……



「エ、エレンさん!? 何で、どうして?」


「アランとダンジョンに行ってみようと思って此処に来たんだよ~

 今日到着したんだけど、そしたらシュウ君を見かけて、やっぱり私とシュウ君は運命の糸で結ばれているんだよ~」


「そ、そうですね。」



確かにエレンさんとは運命を感じていてもおかしくない。名付け親だしな。



「エレン、何をやって……って、シュウか? 何でこんなところに居るんだ?」


「アランさん、ちょっとダンジョンに興味が有ったので……」


「別にダンジョンに行くのが悪いとは言ってない。ただ、孤児院長にはちゃんと伝えて無いだろ?

 孤児院で、シュウが帰ってこないって大騒ぎになっていたんだぞ?」


「あっ!」



そう言えば、アリスを送った後に、そのままこっちに来ちゃったんだったっけ(汗)



「えっと、孤児院長は何か言ってましたか?」


「シュウはそろそろ院を出るって話しはしてあったらしいじゃないか。だからかもしれないが、シュウなら自由気ままに冒険してるんじゃないかって言ってたし、そんなに心配している風には見えなかったな。」


「そ、そうですか。それなら良かったです。」


「ただな、幼馴染の女の子3人が居ただろ。あの子たちが大騒ぎをしていた主犯だぞ。」


「げげっ、ミーナとレイラとカレンがか。次に会うのが怖いな……」


「とりあえず余計なおせっかいかもしれんが、手紙でも何でもいいから、何かしら孤児院には知らせておいた方が良いと思うぞ。」


「わかりました。」



仕方が無い、後で一度孤児院に戻るとするか。



「お話は終わった?」


「あぁ。」


「それでシュウ君も、ダンジョンに入るために此処に居るんだよね?」


「はい。」


「何処まで攻略したのかな?」


「えっと。」



言っても良いのかな? さんざんフィーネに常識知らずって言われているからな。

ただ、アランさんとエレンさんには嘘は付きたくないし……



「えっと、地下7階の攻略が終わって、次から地下8階へと行く予定です。」


「えっ!? シュウ君って何時から此処に来てるんだっけ?」


「一ヶ月とちょっと過ぎたくらいですかね?」


「1ヶ月ちょっとで地下7階!? 凄くない?」


「マジか……」


「まぁ、運が良かったんでしょうね。」


「いやいや、運だけじゃ地下7階なんて攻略出来ないよ~

 よっぽど良い仲間に恵まれたんだね~」


「俺達も頑張ってシュウに追いつかないとな。」


「・・・・」



今、ソロで攻略中って言ったらどうなるんだろうか……



「じゃあ、俺たちはそろそろ行くわ。」


「え~! まだシュウ君と別れたくないよぉ~!」


「同じダンジョン都市に居るんだ、また会えるだろうが。」


「ぶぅ! じゃあ、シュウ君、せめて今居る宿屋を教えてよ。」


「えっと……あっ!」


「どうしたの?」


「いえ、宿屋の名前を決めてなかったなと思って。」


「決める? どういうこと?」


「えっと、実は……」



俺はアランさん達に、ダンジョン内に宿屋を作ったこと、そこのオーナーであることを伝えた。



「噂では聞いていたが、シュウが作った宿だったのか……」


「すご~い! さすがはシュウ君だね!!」


「えっと、もし宜しかったら利用して頂けると嬉しいです。」


「もちろん行くよ~! 楽しみだね~♪」


「ちなみにその場所ってどこに有るんだ?」


「えっと、地下6階と7階の間の階段です。」


「地下6階か……行けなくは無いだろうが、2人だと少々辛いかもしれんな。」


「えぇ~! シュウ君に会えないの~?」



どうやら多少なりとも無理をする必要が有るみたいだ。

……そうだな。この2人には死んで欲しくないし、お節介を焼いても良いだろう。



「あの、アランさん、エレンさん、これを。」


「な~に? これって、ペンダント?」


「くれるのか?」


「はい。このペンダントですが、この宝石を引っ張ると魔力盾が発動する仕組みなんです。」


「魔力盾か……そんな道具が有るんだな。まぁ、無いよりはマシか。緊急用に使えるだろうしな。」


「一応、ある程度の攻撃は防げると思います。

 宝石を戻すと魔力盾が解除されますし、その機能は10回稼働しますので、冒険に役立ててください。」


「そうか。すまないな。」


「シュウ君、ありがと~♪」


「後、アランさん。ちょっと剣をお借りしても良いですか?」


「ん? かまわないが。」



アランさんはそう言うと、剣を渡してくれた。

アランさんの武器はバスターソードと呼ばれている片刃の武器で、持ち手の部分が長めに作られており、片手剣としても両手剣としても使えるのだ。

手入れはされているみたいだが、ここまで来るのに何度か戦闘があったみたいで、少々刃こぼれしているみたいだ。

俺は錬金術で新品同様にしつつ、刃の部分にオリハルコンでコーティングしておいた。これで切れ味上昇に、壊れることも無いだろう。



「ありがとうございました。」


「シュウは、武器の修復も出来たのか。」


「えぇ、まぁ。」


「丁度メンテナンスに出そうと思ってたところだから助かった。」


「ねぇlねぇ、私の武器は?」


「すいません。弓についてはちょっと……」


「残念。」


「あっ、でも、矢なら出来るかもしれないです。」


「じゃあ、お願い。」


「はい。」



俺はエレンさんから矢筒毎受け取ると、全ての矢にオリハルコンコーティングを施していく。

これで矢が折れることが無くなったため、紛失以外では無くならないだろう。

後、ついでに何本かの矢じりの部分に付加魔法を掛けておく。

火の矢、氷の矢、雷の矢を各5本ずつだ。



「エレンさん、終わりました。」


「ありがと~♪ あれ? この色が付いている矢って何かな?」


「魔法を付加してみました。赤が火、青が氷、黄が雷です。必要に応じて使ってみてください。」


「そんなことも出来るんだね。うん、後で使ってみるね!」


「じゃあ、そろそろ行きますね。」


「そうか、また会えるのを楽しみしてるぞ。」


「うん、またね~」


「はい。お2人共また会いましょう。」



俺はアランさんとエレンさんと別れるのだった。

それにしても思いかけずに知り合いに会うとは……本当にこの2人は俺にとっての運命の人なんだろうな。


実はこの話を書いている最中にミーナの名前がすでに使われていたのに気が付きました(汗)

すでにここまで書いてしまったのと、ある程度アップしていた関係上、名前を変えるのも面倒だったので、急遽辻褄合わせるたのは良い思いです(笑)

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