258 面接
それからは特に何事も無く、1週間が経過した。
スィートルーム? 何それ美味しいの?(汗) まぁ、値段が値段だったから、さすがに利用客は居なかったがな。
一応利用客が発生した際に説明できないのも困るってことで、体験で泊まってはみてみたけど、自分で作っておいて言うのも何だが、最高とだけ言っておこう。
「そろそろ行こうか。」
「そうだな。」
今日は追加の面接の日だ。良い人が来れば良いのだが……
とりあえず運営についてはある程度のマニュアルも出来たことだし、新しく雇ったとしても問題は無いだろう。
商業ギルドに到着した俺達は、受付嬢のエレナさんの所へ向かうことにした。
「こんにちは。」
「フィーネ様。お待ちしておりました。」
「今日の面談の方はどうだろうか。」
「実はちょっと問題と言うか、困ったことが起こりまして……」
「困ったこと?」
「えぇ。今日の面談ですが、何と38名程の方が来られました。
すでに1週間程営業した実績と、安全であるという事。そして、給料の高さからこの人数になったと思われます。」
「ふむ、予想以上に集まったみたいだね。」
「それで如何いたしましょうか。」
「どうするとは?」
「この人数を面接するとなると、2時間では難しいのではと思いまして。」
「そうだね。ちなみに時間の延長は出来るのかい?」
「はい。第1打合せ室は、本日予約が入っていないため、時間の追加は可能です。」
「では、追加で予約させてもらおう。そうだなぁ、2時間追加でお願いするよ。」
「2時間ですね。畏まりました。」
とりあえずこれで1人頭、6分程度が確保出来たってことだな。何とかなるかな?
4時間分の利用料金を支払い、これで手続きが終了した。
「じゃあ僕達は行かせてもらうよ。」
「それではごゆっくりどうぞ。」
俺たちはエレナさんと別れ、第1打合せ室へと向かうことにした。
「面倒だな。」
「そうは言っても、来てもらった以上は、面接をするしか無いだろうね。」
「だな。何人くらい雇うつもりなんだ?」
「最低でも5人は欲しいね。後は面接をしてから決めようと思う。」
「了解。」
第1打合せ室に到着したので、扉を開けて中に入ると、沢山の人がぎゅうぎゅうと満員電車の如く立ったまま待っていた。そりゃそうか。
「えっと、一気に面談は出来ないので、一度全員部屋の外に出て行って欲しい。1人ずつ呼ぶので、ここへ来た順に入って来て貰いたい。」
フィーネがそう言うと、全員が部屋の外へと出て行った。
「では、最初の人どうぞ。」
フィーネがそう言うと、1人の男性が部屋へと入ってきた。
「この仕事は、ダンジョン内宿屋の従業員になる。嫌な場合はそのまま帰って貰って結構だ。
問題無いのであれば、名前と自己紹介をお願いするよ。」
「あ、は、はい。わた、私、私はザイルとも、申します。りょ、料理をつ、作るのがと、と、と、得意です。」
「ふむ。料理が作るのが得意なのは有り難いが、その様子では仕事をするのは難しいのでは無いのかな?」
「こ、こんな、せ、性格だから、人、人と話すのは、に、苦手ですが、料理を作るのは、も、問題無いでです。」
この人、かなりのドモリ症らしいな。そんな感じで仕事は大丈夫なのか?
「ん?」
「どうした?」
「あ、いや、この人なら雇っても良いかもしれない。」
「そうなのか?」
「多分。」
「君がそう言うのなら採用しようと思う。本当は全員を面談してから決めようと思っていたが、特別だ。」
「あ、あり、ありがとう、ご、ございます。」
「とりあえず後で正式に結果を言うので、廊下で待っていてくれ。」
「わ、わか、わかりました。」
面接が終わり、ザイルさんが部屋を出て行った。
「一応、理由を聞いても良いかな。」
「料理を作るだけなら会話は必要無いかなってのが1つと、あの人、俺と同じ『クッキングマシーン』の称号持ちだったのが決め手だな。
冒険者相手に大量に料理を作るのに、あの人程適している人は居ないと思うんだ。」
「その称号ってのは、どういった内容なんだい?」
「ひたすら同じ料理を作るだけに特化した人。単純作業の料理をしている最中は疲れることが無い。永遠に作り続けることが出来るって感じだな。」
「……そうか。君も苦労したんだね。」
「まぁな。」
「つ、次行こうか。」
「だな。」
扉が開くと、今度はちょっと悪そうな感じの人だった。
「おう、俺様が来てやったんだから採用しろよな。もちろん優秀な俺様だから高額で頼むぞ。」
「はぁ。」
この人は面接するまでも無いな。まぁ、判断するのはフィーネだけど、どうするのだろう?
「この仕事は、ダンジョン内宿屋の従業員になる。嫌な場合はそのまま帰って貰って結構だ。
問題無いのであれば、名前と自己紹介をお願いするよ。」
「デニーロだ。冒険者をやっていた。用心棒として雇われてやろう。」
普通に面接するみたいだな。それにしても、この人、ものすごく上から目線だよな。
「用心棒と言うからにはそれなりの強さの自信があるみたいだが、どのくらいの強さなのかい?」
「そ、そりゃあ、ダンジョンでそこそこ潜ってるぜ。うん。」
「そこそこ潜っているのならば、ここで働くよりはダンジョンで稼いだ方が儲かると思うのだが?」
「そ、それはだな、うん、そ、そう、そろそろ危険なことを止めて安定した仕事を求めてだな。」
「用心棒は、状況によっては体を張る以上、危険な仕事だと思うのだが?」
「う、うるせー、つべこべ言わずに雇えば良いんだよ! 今なら1日、銀貨1枚で雇われてやる。」
「ふむ。」
この人、強がって入るが、ステータス的には全然弱いな。大したスキルも持ってないみたいだしな。
多分だけど、ソロなら頑張っても地下3階が良いところじゃないのかな。
フィーネもおそらく鑑定したのだろう。俺を見て無いなって顔をしていた。
「では、結果は後でお知らせしよう。」
「俺は今雇えば許してやるって言ってるんだ。」
「ではそれでは次の人どうぞ。」
「おい!」
時間の無駄なので俺が無理やり部屋から追い出した。と言うか、俺に力で負けている時点でダメダメじゃん……




