257 スィートルーム
「ありがとうございましたにゃ。」
最後の客が出て行ったので、2日目の営業が終了した。
例の冒険者は多少記憶の混乱は有ったみたいだが、元に戻ったらしく普通に冒険しに出て行った。ほっ……
あの後は特に問題らい問題も起さなかったから、とりあえずブラックリスト入りは止めておいて、次回の宿泊状況で判断することにした。
各々が次の営業準備のために、各自の担当部署へと散らばって言ったので、フィーネと今後について打ち合わせをすることにした。
「多少問題は有ったみたいだが、無事に終わったみたいだね。」
「あぁ、結局シャワーの件も、あの後は問題は起きなかったしな。単に汚れと臭いでイラついていただけじゃないか?」
「そうだね。しばらくは様子を見てどうするかを考えようか。」
「だな。」
「さて、今後のことを話しておこうと思う。」
「おう。」
「実は人を追加で雇おうかと思っている。」
「1週間後の面接でか?」
「いや、あれはあくまで従業員だな。僕が言いたいのは、ダンジョンまで品物を持ってきてくれる商人のことだよ。
君が居るなら問題無さそうだが、そうじゃない場合も、酒や食料は常にストックさせておきたいからね。」
「当ては有るのか?」
「もちろんだとも。こう見えても僕も商人なんだよ、伝手くらいは持っているさ。
多少高くなっても信用を置ける人に頼もうと思っている。」
「まぁ、その辺は俺は素人だからな。フィーネが大丈夫だっていうのなら、任せるよ。」
「任せたまえ。今日はその辺りの話をしに行ってくるつもりだ。」
「おう。俺は、予定してたスィートルームを作りに行ってくるわ。」
「そうか。頼んだよ。」
「そっちもな。」
俺はフィーネと別れると、スィートルーム作りのために向かうことにした。
「さて、どこに作ろうかな。」
作るのは3階は決まっているが、階段をどこに設けるかだ。
とは言っても、外周の壁を崩して階段を作るしかないんだけどな。
「とりあえず2階への階段の先、そのまま真っ直ぐに作って見るか。」
ボコッ!
壁に穴を開けると、向こう側に空間が見えた。
と言うか、これ地上に出る螺旋階段じゃん。よくよく考えればこの辺りに作った記憶が有ったな(汗)
俺は急いで壁を埋め戻すのだった。これでよしと!
そうすると、多少ずれるが、階段の脇に作るしかないか。
多少不格好なのはご愛敬と言うことで。
階段を作り、部屋の広さの分を掘るのだが、どのくらいの広さにしたら良いのだろうか。
貴族が泊まる関係で、護衛も一緒に泊まるのかもしれない。
そもそもスィートって甘いだよな。甘い部屋? ラ〇ホテルか? 言われてみると高級宿って、貴族が女性を連れ込んでのイメージが強いな。
「……よし!」
だいたいの構想は纏まった。後は作るだけだ。
俺はまずは穴掘りから頑張ることにした。
・・・・
「出来た!」
全ての作業が終了した。結構な自信作である。
折角なのでどんな作りになったのか説明することにしよう。
まず、階段を上った先に扉が有り、扉をくぐると、20畳程の広さのリビングがあり、そこから各部屋へと移動出来る様にした。
もちろんリビングにはソファーとテーブル、その他家具類が置いてあり、見栄えにも拘らせてもらった。
入口の扉の右側がトイレ、左側がお風呂にした。トイレはもちろんシャワー付き水洗トイレだ。
唯一残念なのが、おしりを拭くのがぼろ布なくらいだろう。もし、必要ならフィーネが用意するだろうから、今のところはこれで良いとしよう。
次にお風呂だが、これも拘らせてもらった。
まず、脱衣所には洗面台を用意し、そこに鏡とドライヤーを用意した。
鏡は板に銀を貼り付け、その上に薄くオリハルコンを張ることで出来た。ドライヤーは風と炎魔法をプログラムで作った。
脱衣所の先には洗い場があり、お湯とお水が出る蛇口に、シャワーが付いている。それが2ヶ所用意した。
そしてその先には2人が余裕で入れる大きさの浴槽で、ボタンを押すとジェットバスとなる。もちろんかけ流しだ。
何で全部2人用なのかって? だって、そう言う用途で使うんだろ? 何を言っているんだか……
リビングの左側には4人部屋が2つ用意した。部屋の中はベッドと棚が有るだけのシンプルな部屋だ。
護衛なんだから、贅沢は必要無いだろ?
そして、右側はキングサイズベッドが有る寝室だ。もちろん天蓋ベッドである。
最初回転ベッドにしようかと思ったが、今の若い人には分からないだろうし、下品だと思ったので却下した。
ただ、マットレスのスプリング等に拘ったので、寝心地は最高とだけ言っておく。
寝室の家具やテーブルにも匠のこだわりを入れさせてもらった。
どこかで音楽と共に『なんということでしょう。』と言う声が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。
そしてこの部屋一番の目玉だが、リビングの正面の壁には、な、何と大自然の景色が広がっているのだ!!(ババ~ン!!)
まぁ、本当の景色じゃないんだけどね。ミニチュアの木やお城、川や湖で作った偽物の景色だ。水以外は石を変形させて色を塗って作らせてもらった。
なので枯れたり腐ったりしないのだ。だから触らないでね(はぁと)
そうそう、全ての部屋にはプログラムと付与魔法で明かりを確保してある。この機能が付いているのは此処だけなのだ。
正にスィートルームと言えるだろう。見た目は高級なラ〇ホテルだけどな(汗)
後で完成したスィートルームをフィーネに見せたところ、やりすぎだと怒られたのは言うまでも無かった。
ちなみに利用は1泊金貨1枚にした。まぁ、貴族用だしね。泊まる人が居るかは知らんけどね。




