255 シャワー室
「ありがとうございましたにゃ。」
最後の客が出て入口の扉を閉めたところで全員に声を掛けることにした。
「作業をする前に少し良いか? 全員に渡したいものが有るんだが。」
「何を渡してくれるんだい?」
「こいつだ。」
俺は、昨日作った防犯ブザー改め、防犯魔力盾をフィーネへと渡した。
「これは?」
「昨日、ジョン君に相談されたから作ってみたんだ。機能は見てもらった方が早いだろう。
首に掛けてから、そのガラス玉を引っ張って貰えるか?」
「分かった。」
フィーネが防犯魔力盾を首に掛けて、ガラス玉を引っ張った。
見た目上は変わらないが、これで魔力盾が展開されたハズだ。
俺は用意しておいた木刀をフィーネに向かって振りかぶる。
「な、何をするつもりなんだい? まさかその木刀で僕を?」
「その通りだ!」
俺は思いっきりフィーネへと木刀を叩きつけた。
「ひっ!」
フィーネは身を守るために、俺に背を向けて体を縮こませた。
ドカッ!
だが、俺の攻撃は魔力盾にて防がれたのだった。
「とまぁ、こんな感じだな。」
俺がそう言うと、フィーネが恐る恐る俺の方を見たのだが、涙目だった。いや、半分泣いていた。
その姿を見て少し罪悪感が沸いたのは言うまでも無かった。
「す、すまん。」
「いや構わない。僕たちのことを考えてくれたんだろう?」
「まぁな。で、どうだろうか?」
「どうと言ってもな。こんなアークティクト級の物を貰っては、何も言えないよ。」
「アーティファクト級? 無い無い、だって展開しているのは単なる魔力盾だぞ? しかも魔力を補充しなければ、10回までしか使えないし。」
俺がそう言うと、フィーネはため息をついた。
「君の魔力盾が異常だと言ってるんだ。前に森で移動している時に使っていたのと同じなのだろう?」
「まぁな。」
「何処まで耐えられるのかは知らないが、オーク程度が1日中殴っても壊れないだろうね。」
「オーク程度ならそうだろうな。」
多分物理無効と魔法無効も掛かってるから、ドラゴンの攻撃でも耐えられそうな気もするがな。
「これを売り出したら、いったいどのくらいの値が付くことやら……」
「材料費ならせいぜい銅貨1~2枚程度だと思うぞ? そんなに高くなる訳無いじゃん。」
「だから君は非常識だと言ってるんだ。まったくもう……」
フィーネがプリプリと怒っているのだが、そんなに怒ることだろうか。
「とりあえず従業員の安全のために作った物だから、危ない時は遠慮なく使ってくれ。」
俺はそう言って1人1人に渡していったのだが、受け取る全員の手がブルブルと震えていたのは何でだろうか。
無くしたとしても銅貨1~2枚の金額だから気にしなくても良いのに……
「そうそう、1m以内に有る物や人は全て弾き飛ばすからな。接触している時は気を付けてくれ。」
「「「「「は、はい(にゃ)。」」」」」
ジョン君がやたらと感激して頭を下げていたのが特徴的だったな。
その後は各自自分の作業へと向かって行った。
「さてと、例のシャワー室を作りに行こうかな。」
「……もう僕からは何も言うつもりは無いよ。君の好きなように頑張ってくれたまえ。」
「お、おう。」
色々と腑に落ちないことが有ったが、許可も貰えたことだし、シャワー室を作りに行くとしますかね。
まずはトイレの脇の通路へと移動した。
「この先をシャワー室にする予定だけれど、どう作ろうかな。」
男女別で分けても良いが、個室にして鍵を掛けられるようにすれば、男女共用することで無駄が少なくなるかもしれない。
野郎が使った後は使いたくないと言う女子が居るかもしれないが、そう言う人は料金を払って風呂にでも行ってくれ。
とりあえず広さはジムとかに有るシャワー室程度の広さで充分だろう。その手前に1畳程度の着替える場所を設けたものを10セット作ってみた。
それにしてもかなりあっさりと作ることが出来たな。もしかして二級建築士の称号のお陰だろうか? まぁ要領が良くなったと考えれば有難いし、別に気にしなくても良いか。
それで、後はシャワーをどうするかだが、常に流しっぱなしにすると、あちこちが水浸しになりそうだし、掃除も大変そうだ。
「う~ん、そうすると、やっぱり蛇口は必要か。」
常に垂れ流しの場合は必要無いが、ON/OFFが出来ない以上、どこかに貯める必要が出てくるな。
えっと、シャワーを1分間使用すると約10リットル必要だと聞いたことが有るから、24時間流しっぱなしにした場合、約14,400リットル必要になるのか。
それが10箇所だから144,000リットルか。小学校の25mプールが約600,000リットルと聞いたことが有るから、約0.24杯分か。
「思ったほど大した量じゃなかったのは幸いだったけど、そうキッチリ毎回使いきれる訳じゃないだろうし、下手したらどんどん水が増えて行って最後には貯水場が破裂して大変なことになりそうだ。」
此処まで作ったにも係わらず、諦めて埋めて無かったことにしようと思ったのだが、よくよく考えたら、昨日プログラミングのスキルを手に入れたんだったっけ。
無事にON/OFF機能を持ったシャワー室が完成したのだった。ちゃんちゃん♪




