252 相談
「そうそう、雑魚寝部屋に行って気が付いたんだけど、あそこの近くに体を洗える場所を作るってのはどうだ?」
「有ると便利なのは間違いじゃないが、どうして作ろうと思ったんだい?」
「いやなに、この宿を利用する人は高い金を払ってもらってるからな、多少は快適に過ごしてもらいたいと思っただけだ。後は匂いがちょっとね。」
「なるほど。そうすると風呂はどうするんだい?」
「風呂は完全に有料にしようかと思う。風呂は贅沢品らしいからな。料金を支払わない人は利用できない様にしようかと考えている。」
「良いんじゃないかな。」
「女子風呂は入口に予約の紙が貼ってあったから、同じ様に何かしらそう言った物を用意すれば良いかと。」
「ふむ。ではその様に準備をしよう。ただし、例の洗える場所が出来てからだろうけどね。」
「それについては、明日にでも用意するよ。候補としてトイレ前の通路の先が良いと思ってる。」
「その辺は君に任せるよ。」
「おう。」
フィーネの了解が得られたことだし、明日の客が居ない時間帯にでも作ろうと思う。
バン!
その時、部屋の扉が唐突に開けられた。
「助けてにゃ!」
「どうしたんだ?」
「お客様が、お客様がいっぱいなのにゃ!」
「良いことじゃないか。」
「違うにゃ、ポーション等の買い物客にゃ。計算が追いつかないのにゃ!」
「仕方が無い、僕が行こう。」
「助かるにゃ!」
フィーネがそう言うと、ミーナと一緒に部屋を出て行った。
なるほど、ミーナの計算力じゃ追いつかないほどの買い物客が来たのか。
「それにしても、何で売れ始めたんだ?」
昨日は全く売れなかったと言うのにな。ちょっと気になったので俺も行ってみることにした。
「初級HPポーションを5個くれ!」
「こちは中級HPポーションが2個、初級MPポーションが1個、解毒ポーションが5個だ!」
「ちょっと待つにゃ! 順番にお願いするのにゃ~!!」
カウンターは、かなり冒険者達で込み合っていた。
理由を知りたかった俺は、順番待ちをしている冒険者に聞いてみることにした。
「あの~、ちょっと質問しても宜しいでしょうか?」
「あぁ? こちとら順番待ちでイラついてるんだ。変なこと聞くんじゃねーぞ!」
「では、質問のお礼に初級HPポーションを1本あげますので、質問宜しいでしょうか。」
「まぁ、くれるんだったら構わないが、何が聞きたいんだ?」
「いえ、昨日は全く売れなかったのに、今日はこれほど混雑してますよね。どうしてですか?」
「何だそう言うことか。坊主は費用対効果ってわかるか?」
「ええ。大丈夫です。」
「つまりはそう言うことだよ。」
「えっと、安全に狩をして戻るよりも、多少無茶をして怪我をしてポーションを使ってでも、狩りまくる方が儲けが多いと。そんな感じですか?」
「よく分かってるじゃんか。その通りだよ。
それに、宿に泊まって飯を食ってリフレッシュすれば、より安全に多く戦えるのが分かったしな。」
「なるほど。そう言うことでしたか。」
俺がうんうんと納得していると、質問をした冒険者の男性が手をひらひらと振った。
「ほれ、例の物を寄越しな。」
「あぁ、すいません。こちらで良いですか?」
俺は初級HPポーションを冒険者の男性に渡した。
「これで、より多くの魔物が狩れるぜ。ありがとよ。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。」
「……今更聞くのもアレだが、何で坊主がこんなところに居るんだ?」
「これでも冒険者ですけど? 一応Dランクです。後は、ここの宿のオーナーってのも理由ですね。」
「……マジか。」
「マジです。」
「オーナーって言うなら安くは……」
「なりませんね。こっちも商売なんで。」
「残念だ。まぁ、何にせよこんな場所に、こんな施設を作ってくれたのは感謝しかねーな。ありがとよ。」
「いえ。こちらこそご利用ありがとうございます。これからもっと便利にしていくつもりですので楽しみにしていて下さい。」
「ほぉ? そいつは楽しみだ。」
「それではまた。」
「おう、頑張れよ。」
俺は聞きたことも聞けたので、冒険者の男性と別れるのだった。




