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025 子猫探し


「さて、どうやって探そう。」


「えっ? 歩いて探すんじゃないの?」


「それはそうなんだが、目的も無く歩いても無駄だろ?」


「?」



仕方がない。分かる様に説明してやるとしようか。

地面に簡単な地図を描きながら説明することにした。



「えっとな、例えばこの場所を歩いて探したとする。そして子猫は此処の道にいたとする。」


「だったらそこに行けば良いじゃない。」


「俺達は、此処に子猫が居ることを知らないからな。それでだ、この場所を探し終えた俺達は、次の場所に移動してします。」


「うん。」


「あちこち探し終えて、最後に残ったこの子猫が居る場所を探した。どうなる?」


「見つけられてラッキー?」


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」


「どういうこと?」


「最初は生きていたが、最後に探した時には死んでいた。もしくは違う場所に移動してしまったとも考えられる。」


「それって……」


「そう、今までの探していることが無駄になる可能性だって有るってことだ。」


「じゃあどうすれば良いの?」


「一つは人海戦術だ。」


「人海戦術?」


「簡単に言えば、大人数で探していない場所が無いようにしらみつぶしに探す方法だ。」


「でも私達、2人だけだよ?」


「そう。だからこの方法は使えない。次が今回のメインの聞き取り調査だ。」


「聞き取り調査?」


「これはその場所の住人に子猫の目撃が無かったのかを聞く方法だ。もし目撃情報が有ったのなら、そこを重点的に探せば良いだろ?」


「なるほど! 流石はシュウ君だね!」



別にこの程度なら考えれば誰でも分かると思うんだけど、どうして今まで見つからなかったんだろう?



「じゃあ、さっそく聞き込みにでも行こうか。もちろん移動中も出来る範囲で子猫は探すぞ?」


「うん!」


「よし、まずはあそこのお店で聞いてみるとしますか。」


「だね。」



俺達は、目に付いたお店、雑貨屋へと入って行くことにした。



「いらっしゃい。何かお探しかな?」


「子猫!」


「家には子猫は置いてないねぇ。」


「ローザその言い方だと勘違いするだろ? えっと、実は子猫を探しているんです。白い猫なんですが知りませんか?」


「私は基本この店の中にしか居ないからねぇ、スマンが分からないね。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「次は何か買ってくれると嬉しいかな。」


「その時は是非お願いします。ほら行くぞ。」


「う、うん。」



俺達は雑貨屋を後にした。



「居なかったね。」


「まぁ、そんなに直ぐに見つかるとは思ってなかったけどな。まぁ、こんな感じに聞いて行くのが聞き取り調査ってやつだ。どうだ、やれそうか?」


「た、多分?」


「よし、2手に分かれて聞き込みをしよう。次の鐘が鳴る頃に此処に集まるって感じにしようと思うんだけど、どうだ?」


「う、うん。良いよ?」


「じゃあまた後でな。」



俺とローザは別れ、聞き取り調査を行うことにした。



「あの、すいません。」


「ん? 何だい?」


「白い子猫を探しているのですが、知りませんか?」


「知らないなぁ。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「見つかると良いな。」


「はい。」



よし、次だ。



「あの、すいません。」


「あら、何かしたら?」


「白い子猫を探しているのですが、知りませんか?」


「ごめんなさい、知らないわ。」


「ありがとうございました。」



次!



「あの、すいません。」


「何?」


「白い子猫を……」



・・・・



「ふぅ、相変わらず目撃情報は無しっと、そろそろお昼の鐘が鳴る時間だし戻るとするか。」



俺は待ち合わせの場所へと向かうことにした。待ち合わせ場所にはすでにローザが戻ってきていたのだが、茶色い毛の大きなデブ猫と戯れていた。



「何やってるんだよ。」


「あ、シュウ君。見て見て、この子可愛いんだよ~」



ローザはそう言うと、デブ猫のお腹をさすっている。



「まあ良いけどね、それで聞き取り調査はどうだった? こっちは収穫無しだ。」


「あ、あの、あのね? その……」



ローザがダラダラと汗を流して焦っている。もしかして!?



「ローザちゃん?」


「シュウ君と別れた後にこの子がやってきて、その……」


「ずっと遊んでいたと。」


「ご、ごめんなさい!!」



こっちは汗水たらして頑張って居たと言うのに、ローザはここでデブ猫と戯れていたと。これは怒っても良いよね?



「シュ、シュウ君? こ、怖いよ?」


「少しO・HA・NA・SIしよ……ん?」



俺がローザに話しかけようと思ったら、デブ猫の首に赤い物が見えた。一瞬怪我していると思ったが、血とは少し違うか?

俺はデブ猫の首を調べてみると、赤い首輪をしていたのが見えた。どうやらボサボサの毛に隠れていただけみたいだ。



「何だ、お前飼い猫だったのか。それにしてはきったねーなぁ。てっきり茶色の毛かと思ったら汚れかよ、もしかしてお前迷子か?

 1匹も2匹も同じだ。ついでにお前も送ってやるか。」



俺は何か飼い主が分かるものが無いかと、首輪を調べてみることにした。



「名前はミーちゃんね。よしよし、お前の飼い主も探してやるからな。」


「ンナー!」


「と言う訳で、ローザちゃん良いよな?」



俺がローザの許可を貰おうと振り向くと、ローザは何かを考えている顔をしていた。



「どうした?」


「あのね、この猫ちゃんなんだけど、もしかしたら依頼の子猫ってこの子なんじゃないのかな?」


「はぁ? 俺達が探しているのは子猫だろ? こいつはどう見ても大人なデブ猫で色も……あれ?」



確か猫の成長って早いから半年もすれば結構成長していても変ではない。しかもこのデブ猫は、毛の根本は色が白くて目は碧眼だ。

マダムは見た目がヒキガエルの様な人だったにも係わらず、その人に似てスリムで綺麗と言っていた。もしかして!?



「そ、そうだな。同じ名前で違う可能性も有るが、とりあえず連れて行ってみよう。」


「うん。」



俺達はデブ猫を依頼人のところに連れて行くことにした。


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