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246 営業開始


いよいよダンジョン宿の営業開始日となった。

結局全員、ダンジョンに住むことになったみたいだ。通うのが面倒くさいのはもちろんだろうが、何だかんだ言っていつでもお風呂に入れるのが効いたらしい。

実際通うよりはここにいてくれた方が色々と助かるだろうしね。とりあえず従業員については部屋を無料で貸し出しても良いだろう。



「いよいよダンジョン宿の営業を開始したいと思う。準備は良いだろうか。」


「「「「「はい(にゃ)!」」」」」


「ではシュウオーナー、お願いするよ。」


「了解。」



俺はしるしを付けておいた場所をくり抜くと同時にアイテムボックスへと収納した。



「うおっ、何だ!?」



当然壁の向こうに人が居るよな。休んでいた冒険者が突然消えた壁に驚きの声を上げる。



「あーえっと、こんにちは?」


「お、おう。えっと、はい?」



当然、混乱中だよな。



「今回、ここに新しくダンジョン宿が出来まして、本日が開店日となっております。

 あなたは当店前に居た初めてのお客様なので、今回は特別に無料でのご招待とさせて下さい。」


「えっ? あ、うん。」


「扉を設置しますので、その間に荷物を片付けてお待ちになっていて下さい。」


「お、おう。」



俺は急いで扉を据え付ける。これでダンジョン宿が完成した。

フィーネには勝手に無料にしてしまったことをアイコンタクトにて謝っておく。仕方ないなと言う表情をしていたので大丈夫だろう。



「では、1名様ご案内です!」



無理やり冒険者の男性を案内する。



「ミーナ、初仕事だ。後は宜しく。」


「まかせるにゃ! いらっしゃいませ! 当宿へようこそにゃ!」


「って、お前ミーナじゃないか。何でこんなところに居るんだ?」



おっ、ミーナの知り合いだったのか。まぁ、冒険者同士つながりが有るかもしれないし、不思議では無いか。



「何でって、従業員になったからだにゃ。パーティは解散しちゃったからなのにゃ。というか、最初の客がモブゾーだったのかにゃ。」


「俺で悪かったな。それにしても、あいつらとうとうくっ付いたのか。」


「そうにゃ。」


「それはおめでとうだな。で、ここは本当に宿なのか? ダンジョンの中なんだぞ?」


「宿にゃ。それで泊まるのかにゃ?」


「泊まると言ってもな、俺達3人パーティなんだが、3人で泊まっても良いのか?」



ミーナがこっちを向いたので頷いておく。



「オーナーの許可がでたのにゃ。大丈夫なのにゃ。」


「んーじゃあ、利用させてもらうとするか。だが、俺たちは今から狩りなんだが、夕刻辺りに来るでも構わないか?」


「構わないのにゃ。何だったら余計な荷物は部屋に置いて行くかにゃ?」


「良いのか? そりゃあ助かるぜ。ちょっくら呼んでくるから待っててくれよ。」


「はいにゃ。」



男性が急いで仲間のところに行き、荷物をまとめている。

ふと周りを見ると、色んな人がこの宿に注目していた。まぁ気持ちは分かるけどね。

とりあえず客が入って、無事に出てきたら噂が噂を呼んで繁盛するようになるだろう。……なると良いな。



「戻って来たぜ。」


「ミーナ、久しぶりだな。俺達もタダで良いんだって?」


「そうにゃ。特別にゃ。」


「マジか、すげーラッキーじゃん!」


「じゃあ説明するのにゃ。宿泊には4人部屋、2人部屋、個室、大部屋での雑魚寝があるにゃ。どれにするかにゃ?」


「今後のためにも参考に聞きたいんだが、値段ってどうなってるんだ?」


「基本、この宿は素泊まりだけにゃ。大部屋の多人数による雑魚寝は大銅貨1枚にゃ。個室なら銀貨1枚、2人部屋は銀貨1枚と銅貨6枚、4人部屋は銀貨3枚になるにゃ。」


「ずいぶんと高いな……いや、こんな場所だと逆に安いのか?」


「それは泊ってから判断するにゃ。で、どうするにゃ?」


「4人部屋って人数で値段が変わる訳じゃ無いのか。」


「そうにゃ、1人で泊まっても銀貨3枚にゃ。」


「どうする?」


「4人部屋が無難だろうが、個室も良いな。ゆっくり寝れそうだ。」


「個室にしよーぜ。お前らのいびきを気にしないで寝てーしな。」


「そうするか。それじゃあ個室3部屋で頼む。」


「了解にゃ。それではこちらがカギになるにゃ。個室は階段を上ってすぐ右の廊下の先になるにゃ。

 部屋の利用は明日の朝10の時間までにゃ。朝の9の時間にベルが鳴るので部屋を出る時間の参考にして欲しいにゃ。」



説明するのを忘れていたが、宿の利用は15の時間から翌朝の10の時間までにすることにした。

風呂の時間の時に時間を把握する方法が無いことに気が付いたため、こんなシステムを構築したのだった。

客が居ない間にシーツの交換やら掃除等の作業を行う予定だ。



「おう、とりあえず荷物を置いて来るわ。」



そう言って3人はカウンター扉の先へと消えて行った。……と思ったらすぐに戻ってきた。



「おいミーナ! ここって食事も出来るのか?」


「こっちには体を洗う場所も有ったぞ、利用できるのか?」


「もちろんにゃ。食事も出来るし体も洗えるにゃ。そして、何とお風呂も付いてるにゃ!」


「風呂? 風呂って言えばお湯に浸かるアレか?」


「その風呂にゃ。誰でも入れるけど、ゆっくり入るのなら鍵も掛けられるにゃ。魔石が必要になるけどにゃ。」


「マジか。狩りに行く前に入って行くか?」


「それより飯が食いたい。」


「馬鹿、風呂に入ってから飯を食った方が旨いだろうが。」


「それもそうか。」


「とりあえず部屋に荷物を置いたら風呂に行くか。」


「「おー!」」



そして3人は再び扉の先に消えて行った。

慌ただしかったが、何とか対応できたかな。



「あの~」


「はいにゃ!」


「ここで泊まれて、お風呂に入れると聞こえたのだけれど、本当なの?」


「もちろんにゃ。」



続けてやって来たのは女性冒険者だった。大声で会話していたから聞こえていたらしい。



「タダじゃないんだよね?」


「えっと。」



ミーナがこっちを向いたが、さすがに全員をタダで泊めさせるのは遠慮したい。理由も必要だろうから、ここは俺が説明した方が良いだろう。。



「申し訳ありません。先ほどの方は扉を開けるのにご迷惑をおかけしたのと、お客様第1号としてサービスしただけなのです。」


「あら、僕ちゃん。お姉さんが良いことしてあげるから、タダで泊めさせてよ~」


「も、申し訳ありません。ウチもこれを整備するのに多額の費用がかかってまして、その……」



一瞬、良いことがどんなものか惹かれたのだが、我慢した俺は偉いと思う。



「ダンジョンのこんな場所に作るくらいだもん、それなりに掛かってるだろうし、仕方が無いかぁ~」



どうやら無理を言っているのを理解していたらしく、すんなりと引き下がってくれたのは助かった。



「私は泊ってみるつもりだけど、あんたたちはどうする~?」


「1人だけお風呂に入ろうなんて思って無いでしょうね。私も泊まるわよ!」


「もちろんウチも~!」


「抜け駆けは許さない。」



どうやら女性だけの4人パーティらしい。全員泊まるみたいだ。



「それでは宿の説明をするにゃ。」


「よろしく~」



うん、後はミーナに任せても大丈夫だろう。俺は他の場所へ行ってみることにした。


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