244 試験運営2
次に向かったのは食堂だ。
「あ、オーナー。いらっしゃいませ。」
「特に問題とかって無いかな?」
「はい。実際に働いていた酒場より席は少ないから、今のところは仕事量的にもそれほど大変じゃないと思います。」
「じゃあ、お客になってみるから実際にやってみて貰える?」
「はい! いらっしゃいませ! お客様、開いているお席にお進みください。」
とりあえず手前のテーブルに座ると、即座に水とメニューを持ってきた。
「お冷やと、こちらはメニューとなっております。こちらのお冷やはサービスでタダとなっております。
注文がお決まりになりましたら、お声をおかけください。」
俺がメニューを見ると、Aランチ(パン2個、ステーキ、スープ)、Bランチ(パン2個、目玉焼きとソーセージ2本、サラダ)、後は単品で頼めるみたいだ。
なるほど、朝晩で分けるんじゃなくて選ばせることにしたのか。悪くないかも。
値段は地上の2倍にするみたいだ。まぁあまり欲張っても仕方ないだろうし、無難な値段かな。
「すいません、Aランチ1つで。」
「かしこまりました。Aランチ1つ入りました。」
レジーナさんがキッチンへ向かうと、すぐにトレイを持って戻ってきた。
「お待たせしました。Aセットになります。」
そう言って空の食器を置いて行った。さすがに料理はまだ作って無いか。
「ありがとう。」
俺はお金を渡すフリをする。
「はい、確かに。ごゆっくりどうぞ。」
レジーナさんがニコリと笑うとその場を離れた。
俺は食べ終わったとして席を離れる。
「ごっそーさん。」
「ありがとうございました。」
そして俺の食べ終わた食器を片付けてテーブルを拭くと、一通りの流れは終了した。
「うん、良いんじゃないかな。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、俺はハウスさんのところに行ってみるよ。」
「はい。」
俺は奥のキッチンへと入ると、ハウスさんが物品の整理をしていた。
「あ、オーナー、いらっしゃい。」
「ごめん、適当に入れちゃったから使いにくいよね。」
「いえ、そのままでも問題は無かったのですが、どうせなら自分が使い勝手が良いようにしようと……すいません。」
「いや、使う人が使いやすいようにするのが一番さ。それに管理はハウスさんに任せるとも言ったしね。」
「ありがとうございます。」
「肉と野菜だけど、どうしたらいい?」
「では野菜はこちらの箱に入れて頂ければ。肉はあまり常温に置いておくのはちょっとアレなので、営業開始日の朝に用意していたければと思います。」
「分かったよ。他に何か要望は有るか?」
「かまどの薪を用意して欲しいです。」
「……ごめん、忘れてたよ。」
薪か……いちいち用意するのも大変だよな。ライトの魔法みたいに永続的に使えないだろうか。
「試してみるか。」
付与魔法で、かまどの中に火を付与してみた。
炎で調節が出来なくなるため、3つのかまどを、それぞれ弱火、中火、強火に調整。
薪を入れる必要が無くなったため、投入口を塞ぎ、熱は上にしか行かないようにした。
「これでどうだ? 」
「何をしたんですか?」
「魔法だよ。詳しくは秘密だ。」
「あ、はい。」
ハウスさんが実際に鍋を置いて確認している。
「良い感じです。」
「そうか、良かったよ。」
「ただ、贅沢を言えば、もう1つずつ有ると便利なのですが、贅沢ですよね。」
「何だ、そんなことか。良いぞ。」
「えっ?」
俺は一度付与魔法を解除し、かまどを改造することにした。
手前に3個、奥に3個の計6個。左から弱火、中火、強火の順だ。
「出来たぞ。」
「・・・・」
返事が無いので振り向くと、口を開けて停止しているハウスさんが居た。
「おーい。」
「……はっ、あれ? 私は何を見させられたんだ?
かまどが6個あると言うことは……先ほどのは夢では無く本当のこと!?」
「これで良いか?」
「あ、は、はい。だ、大丈夫です。」
本人が良いと言うのだから良いんだろう。
ふと、付与魔法の使い道でもう一つ思いついた。
「この箱は肉用で良いんだよな?」
「えっと、はい。」
俺は箱の中に氷の付与を行った。これで疑似冷蔵庫が出来た。
後はウルフ肉50kgと、ホーンラビット肉50kgを入れておく。
野菜の方は少しだけ低温の野菜室にして、手持ちの野菜をぶち込んでおいた。
「肉と野菜はこれで良いな。
当分はこれで大丈夫だと思うけれど、他にも必要だったら言ってくれ。」
「わ、わかりました。」
何かポカーンとしているけど、大丈夫だよな?
「じゃあ、後はよろしく~」
俺はその場を後にするのだった。




