241 面接
商業ギルドへ向かい、受付嬢のエレナさんの所へ向かうことにした。
「こんにちは。」
「フィーネ様。お待ちしておりました。」
「本日面接をする予定なのだが、状況を教えて欲しい。」
「本日の面接に来られた人は、全員で5名となっております。」
「そうか。その程度しか集まらなかったか。もう少し多いと思ったのだが……」
「宜しければ引き続き募集を掛けることも出来ますが?」
「それについては運営してみてから考えることにするよ。」
「畏まりました。」
「では、私たちは打合せ室へ行けば良いのかな?」
「はい。2時間内であれば、自由にお使いになって構いません。」
「分かったよ。」
「それではごゆっくりどうぞ。」
俺たちは面接会場でもある、第3打合せ室へと向かうことにした。
扉を開けて中に入ると、5人の男女が椅子に座って待っていた。
「待たせてすまない。今から面接を行おうと思うのだが、宜しいだろうか。」
「大丈夫です。」
一番左に座っていた男性が答えてくれたので、面接を始めることにした。
「まず最初に言っておくが、私が代理で経営を任せられているフィーネだ。そしてこちらの方が今回の宿のオーナーのシュウだ。」
「こんな見た目ですが、よろしくお願いします。」
「えっと、この子供がオーナー?」
「そうだ。子供がオーナーじゃダメだろうか?」
「い、いえ。少しびっくりしただけで、大丈夫です。」
「後、見ての通り私はホビット族だ。それについても大丈夫か?」
フィーネの質問に対して全員が頷いてくれた。
ほぉ? 見た目で判断しないのか。これは当りか?
「問題が無いみたいなので話を進めようと思う。今回運営を考えている宿はダンジョン内にある。
そのため、色々と秘密にしなくてはならないことが発生するのだが、その秘密を守れることが雇うための必須となる。
守る自信が無いのなら、すまないが今回の件はお断りさせてもらうが、どうだろうか?」
「「「「「守れます。」」」」」
全員即決か。これは幸先が良いかもしれないな。
「それじゃあ、自己紹介でもしてもらおうかな。左からお願いするよ。」
「私の名前はハウスです。酒場で料理を作っていました。前の職場でクビになったところにこの募集が有ったので応募しました。」
「クビですか。理由を聞いても?」
「あ、はい。酔っ払い客が給仕の女性に因縁をつけて困っていたところを助けたのですが、その際に相手を怪我させたとのことで首になりました。」
「えっと、それでクビに?」
「……お恥ずかしながら、殴り合いの喧嘩になってしまいまして……その……」
「ハウスさんは悪くないんです!」
その時、ハウスさんの隣に座っていた女性が声を上げた。
「えっと、あなたは?」
「因縁を付けられていた給仕の女性です。」
「なるほど、何故あなたも此処に?」
「あんなお店で働きたくなくなったからです! ハウスさんを首にするなんてあんまりです!! だから辞めてやりました!」
「理由はわかりました。ではあなたも自己紹介をお願い出来ますか?」
「は、はい。私はレジーナと言います。給仕経験者です。理由は……その……えっと、ハウスさんが……ごにょごにょ……」
レジーナさんがハウスさんを見て赤くなっていた。なるほど、そう言う理由なのね。
ちなみにハウスさんは30歳くらいの男性で料理のスキルを持っていた。レジーナさんは22歳の女性で接客のスキル持ちだ。
2人共犯罪に係る様なスキルは持っていないため、採用しても良いかもしれない。
「わかりました。では、次の方お願いします。」
「ジョンです。冒険者ですが、値段に釣られて募集しました!」
「冒険者のランクは?」
「ウッドランクです!」
「そうですか。冒険者であれば冒険者として活動した方が儲かるのでは?」
「えっと、正直に言いますと、生活するために冒険者になるしか無かっただけで、冒険をしたい訳じゃないんですよ。
宿の店員ならそれほど危険な目には合わないだろうと思いまして。」
「私達が運営する宿はダンジョン内ですよ? 危険もあるかもしれないんですよ?」
「えぇ! だって宿の運営ですよね? 危険は無いと思ったのですが……」
「初めての試みのため、まだ正確に危険性までは分かって無いのが正直な所だね。
一応現時点では魔物が出たとかそういったことは発生してはいないのだがな。」
「う~ん。その時になったら考えます! 働かせてください!」
まだ13歳で若いしやる気もある。スキルは何も持ってなかったが、悪くないと思う。
「わかりました。とりあえず結果は後にするとして、次の方お願いします。」
「はい。レナと申します。専業主婦だったのですが、1月前に冒険者だった旦那がダンジョンから帰らぬ人となってしまい、生活費を稼ぐために応募させて頂きました。家事は一通りできますし、結婚前は領主様の館でメイドとしても働いていました。」
「では、後で結果はお知らせします。」
「あ、はい。」
この人は当りだった。メイドの経験からか、家事や給仕のスキル持ちだった。しかも28歳の未亡人か……色々と需要は多そうだ。
「では、最後の方、お願いするよ。」
「ミーナにゃ。私も冒険者だったにゃ。パーティが解散しちゃったから冒険者も引退しようとしてたら、この仕事を見つけたのにゃ。」
ふおおおおぉぉぉ~~!! ネコミミだよ、ネコミミ!! しかも語尾に「にゃ」付きかよ。最高じゃん!!
スキルは短剣術に弓術、索敵に隠密、罠探知に解除か。スカウトみたいだな。
年齢は……35歳!? マジで!? 獣人族だからか、見た目がかなり若く見えるんだな。
しかし、ミーナか。ふと孤児院のミーナのことを思い出した。あいつら、今頃何をやってるんだろうな。
「パーティが解散した理由を聞いても良いかな?」
フィーネが質問すると、ミーナさんはたちまち不機嫌になった。
「えっと、失礼した。無理に言わなくても構わない。」
「別に良いにゃ! 盾職の男と剣士の女が出来て結婚することになったのにゃ! どこかの村でひっそりと暮らすからって解散になったのにゃ!
別にその男には興味はにゃいけれど、1人身としては悔しいのにゃ! だから良い男を紹介して欲しいのにゃ!」
「すまない。僕にはツテが無いから無理だ。」
「残念だにゃ……でも、仕事はやりたいからお願いするにゃ。」
これで一通り話は聞いたな。
「フィーネ、どうするんだ?」
「まず確認だが、君的にはどうだった?」
「問題無いと思うぞ。」
「私もそう考えた。なら全員採用で構わないか?」
「それを決めるのはフィーネだ。」
「そうだったな。」
フィーネが面接者の方へを向く。
「君たちさえ良ければ一緒に働いて欲しい。」
「あの~」
「やっぱりダメだったか?」
「い、いえ。働くのは構わないのですが、私、全く戦いって出来ないのですが、宿ってダンジョンの中なのですよね? どうやって通えば良いのでしょうか?」
「それについては大丈夫だ。後で案内をしよう。他に質問は無いか?」
全員頷いたので無いらしい。
「では全員採用ということで、これから一緒に仕事を頑張ろう。」
「「「「「はい(にゃ)!」」」」」
こうして従業員が確保出来たのだった。




