024 捜索依頼
「次の方どうぞ。」
「この依頼をお願いします。」
「あら、シュウ君。また依頼を受けるのね。」
「はい。」
「どれどれ、えっと、『迷子の子猫探し』かぁ、ちょっと大変な依頼だけど、期限は特に設けてないし、時間を掛けられるのなら大丈夫かな?
迷子の子猫を生きて連れて帰った場合は銀貨1枚、もし死体を見つけた場合は大銅貨1枚になるわね。」
「子猫ちゃんが死……」
「あくまで依頼の内容の説明だからね? 生きてるかもしれないし、大丈夫よ!」
またローザが泣きそうになり、イザベルさんが必死に宥めていた。
「ちなみに、この依頼って何時から有るんですか?」
「えっと、4日前かな? あら? この依頼何度か修正されて出されているわね……ええっ!?」
「どうしたんですか?」
「この依頼難しいかもしれないわね。最初に依頼として出されたのが半年前だから、もしかしたら見つけられないかもしれないわね。」
「そうですか。」
「そ、そんな、子猫ちゃんが……」
もし、一切エサが食べられてないのなら絶望的な日数だ。生きていたとしても野生化しているかもしれないし、死んでいたら確実に白骨化だ。これ無理じゃね?
「申し訳有りませんが『受けます!』……だそうです。」
そんな気がしてたよ。うん……
「依頼失敗による罰則金は依頼料の1割よ? この場合は生きているのが前提の依頼だから大銅貨1枚よ? 大丈夫?」
「大丈夫です!」
「いや大丈夫じゃないだろ! 俺達は鉄貨1枚だって持ってないんだぞ!」
「何とかなるよ!」
「何とかって……無理だろ? シスターにでも借りるのか?」
「だってこの依頼、期限が決まってないんでしょ? だったら見つかるまで探せば良いじゃない。」
「えっと、ローザちゃん。その依頼を受けている最中は、他の依頼は受けられなくなるのよ?」
「大丈夫です! 私達孤児院のノルマを達成しているから、1ヵ月は無給でも問題ないです。」
「いえ、そうじゃなくてですね。」
「イザベルさん、こうなったローザちゃんは止められません。その依頼受けさせて貰います。」
「シュウ君がそう言うなら冒険者ギルドとしては断れませんが、本当に良いんですね?」
「はい。最悪、他の孤児院の子達と同じくお手伝いでもして罰則金を貯めますんで。」
「シュウ君、稼いだお金はシスターに預けないと駄目でしょ?」
「あのなぁ~、じゃあどうするんだよ!」
「大丈夫。見つければ良いんだよ!」
「……もう良いです。」
俺は諦めることにした。もうどうにでもなれだ。
「シュウ君も大変みたいね。」
「いえ。」
「じゃあこの依頼を受けると言うことで、手続きをするからカードをお願いします。」
「「はい。」」
俺達は自分のカードをイザベルへと渡して依頼の処理を行ってもらった。
「はい。これが地図よ。詳細に付いては依頼主に聞いてね。行ってらっしゃい。」
「行ってきます!」
「行ってきます……」
「が、頑張ってね。」
俺達は早速依頼主に会いに行くことにした。
「子猫ちゃん、絶対見つけようね!」
「そうだな。」
決まったことだし、後は依頼を達成出来る様に頑張るだけだ。
依頼主の家に到着した。そこそこ大きな家ってことは商家かな? 玄関のノッカーを叩いてみた。
カンカン!
少しして扉が開くと、そこに厚化粧をしたヒキガエルの様なマダムみたいな人物がいた。
「どちら様です?」
「僕達、冒険者ギルドの依頼でやってきました。」
「まぁ! 貴方達がミーちゃんを探してくれるって訳ね!」
「はい。」
「じゃあお願いね。見つけたら此処に連れて来て頂戴! 急いでね!」
マダムはそれだけを言うと、扉を閉めようとした。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「何かしら? こう見えても私、忙しいんですのよ?」
「子猫……ミーちゃんの特徴を教えて貰わないと探すに探せません!」
「あら、そう言えばそうね。私に似てスリムで綺麗な美人さんの猫よ。これで良いかしら?」
「……せめて特徴を教えて頂けると助かります。」
「子供のくせに注文が多い子ね。真っ白な毛に綺麗な碧眼よ。赤い名前が書いて有る首輪をしているから見つければ分かると思うわ。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、後は宜しくね。」
用事は済んだとばかりに、マダムは扉を閉めた。まぁ最低限の情報は貰えたし、何とかするしかないな。
「何か凄い人だったね。」
「そうだな。行くぞ。」
「あ、うん。」
こうして俺達は子猫を探すために街へと繰り出すのだった。




