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023 再会


今日も又、冒険者ギルドへとやってきた。

別に孤児院的には1ヵ月の間に銅貨1枚を稼げれば良いので、それが達成している俺達は、毎日仕事する必要はないのだ。

とは言っても、どうせすることも無くて暇だし、お金も手に入る訳でもないし、あくまで趣味だよ趣味。

それに俺達が稼ぐと、微妙に孤児院の食事が豪華になるのだ。だったらやらない理由は無いだろ?



「今度こそ、良い依頼を探すよ!」


「昨日の犬みたいなのじゃなければ何でも良いよ。」


「もう、そんなこと言わないの。行くよ~!」


「へいへい。」



仕方が無いので依頼掲示板へと向かうことにした。

さて、どんな依頼が有るかな。



「シュウ君!」



いきなり後ろから抱きしめられた。この声は……



「エレンさん?」


「そうだよ、久しぶりだね~♪」


「お久しぶりです。1年ぶりでしょうか?」


「そんな他人行儀しないでよ~」


「いえ、そんなつもりは無いですよ。」


「だから言葉が硬いって言ってるの!」



そうなのかな? そういうつもりは無いんだが。それにエレンとアランは目上の人って言うのも有るが、俺を森から助けてくれた恩人だから尊敬しているのが影響しているのかな?



「ほら、シュウが困ってるだろうが。」


「アランも言ってやってよ!」


「ったく、シュウ、久しぶりだな。それよりここに居るってことは冒険者として活動しているのか?」


「はい。まだ始めたばかりですけど、何とかやっています。」


「そうか、6歳で冒険者を始めるとは凄いな。」


「そうは言っても簡単な依頼しか出来てないですよ。」


「どんな仕事だろうと確実に依頼をこなすことが大事なんだよ。」


「そういう物なんですね。ところでアランさんは、何時から冒険者を始めたんですか?」


「俺か? 俺は確か8歳の時だったかな。」


「さすがですね。」



孤児院の子供で冒険者になるのは大抵10歳になってからだ。それからするとアランが冒険者になったのは随分と早いと思う。

俺? 俺はまぁ、中身が大人だからな。ズルしている様なものだしね。



「それを6歳のシュウが言うか。こいつめ!」


「アランさん、痛いですって!」



アランが俺の頭を抱えてじゃれている。痛いのはあくまでその場の雰囲気で言ってるだけで本当は痛くない。



「アラン! シュウ君が痛がってるでしょ!」



バシーン!


エレンの張り手がアランの背中を思いっきり叩いた。



「痛って~! エレンの奴、本気で叩きやがったな。ったく、だいたいシュウに対して本気でやる訳ないだろ?」


「えっ? だってシュウ君が……」


「単なる男同士のじゃれ合いで、本当に痛がってた訳じゃないですよ。」


「ほら見ろ。」


「えっ、そうなの?」



俺がコクリと頷く。



「で、エレンは何か言うことは?」


「ご、ごめんなさい!」


「次から気を付けてくれれば良いさ。」


「アラン……」



またイチャイチャが始まったよ。相変わらずこの2人は仲が良いな。

向こうの方で血涙を流している男たちが居るのは見なかったことにしょう。



「ところでシュウは、どのくらい依頼をこなしたんだ?」


「えっと、ようやく2回が終わったところです。」


「そうか。全部で20回くらい依頼を完了すれば、上のランクに上がれるから頑張るんだぞ。」


「えっ? 子供でもランクって上げられるんですか?」


「冒険者に年齢は関係ないからな。完全な実力主義だ。じゃなければ10歳で冒険者に登録なんて出来無いだろ?」


「なるほど、言われてみればそうですね。」


「まぁ、上がったとしても、ある程度成長するまでは戦闘は避けた方が良いけどな。

 知ってるか? Fランクになると、街の外で討伐することが出来るようになるんだぞ。

 まぁ、スライム程度が精々だろうけどな。頑張って何とかゴブリン1匹かホーンラビットが行けるか? って感じだろうな。」


「そうなんですね。ランクが上がったとしても、討伐関係はある程度自信がつくまでは止めておくことにします。」


「それが良い。もし武器の取り扱いを知りたければ教えてやるから、その時は声を掛けてくれ。」


「わかりました。」


「そう言えば、シュウ君1人なの?」


「いえ、ローザちゃんと一緒で……あ、こっちに来た。」


「シュウ君! どうしてもこの依頼を受けたい……あれ? えっと、エレンさんでしたっけ?」


「そうよ、こんにちは。」


「こ、こんにちはです。」



ローザは挨拶をした後、俺の後ろに隠れてしまった。



「えっと、私、もしかして嫌われてる!?」


「いえ、憧れでも有るエレンさんに会えて、照れてるだけだと思いますよ。」


「シュウ君!」



ローザが俺を言動を止めようと叫んだが、別に良いじゃんかよ。だいたい美人で冒険者としても成功しているエレンに憧れていたとしても不思議じゃないしな。実際正解っぽいし。



「そうなの? それは嬉しいわね♪」


「あ、あぅ……」



エレンがローザを見てニッコリ笑うと、顔を赤くしてうつむいてしまった。



「それじゃ俺達は行くからな。またな。」


「バイバイ、シュウ君にローザちゃん。」


「はい。」



アランとエレンはそう言うと、掲示板の方へと歩いて行った。



「さてと、それでローザちゃんは、何か良い依頼でも見つけて来たのか?」


「あ、う、うん。この依頼なんだけど、どうかな?」


「どれどれ?」



ローザが手渡してくれた依頼には、『迷子の子猫探し』と書かれていた。



「ローザちゃん、この依頼は無理って言ったじゃん。」


「で、でも、この依頼2日前からずっと残ってて、子猫ちゃんがお腹を空かせていると思うと……」



ローザがじわっと涙が溢れてきた。やばい本気で泣きそうだ。



「わ、分かった。受けるから泣くな。な?」


「本当?」


「本当本当! ほら、受付カウンターに行くぞ!」


「うん!」



どうやら泣き止んでくれたみたいだ。助かった。

正直、俺的には子猫の心配はしていない。どのくらいの年齢の子猫かは分からないが、子猫と言うくらいだから1,2歳くらいだろう。

そのくらいの年齢の子猫だったら、可愛さに釣られてエサを与える人がいてもおかしくない。実際日本に居るときにも、猫にエサを与えて問題になっているニュースも聞くくらいだからな。

それに、何だかんだ言っても、ネコは肉食の狩人だ。案外自分でネズミとかを捕まえているかもしれない。……さすがに子猫じゃ無理かな?(汗)

と、とりあえずイザベルのところに行って確認してみることにしよう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「さてと、それでローザちゃんは、何か良い依頼でも見つけて来たのか?」「あ、う、うん。この依頼なんだけど、どうかな?」 そう言えば、今更ですが孤児院で読み書き教えているということですか。 …
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