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229 地下6階


「ここが例の場所か。」



今俺達が居いる場所は、地下5階と6階の間にある安全地帯でもある階段だ。

確かにかなり人が多かった。かろうじて階段の上り下りが使えるスペース以外は人や道具でひしめき合っている。

ある意味、屋台どころか、キャンプをするための場所を確保するだけでも大変そうだ。



「それにしても凄い臭いだよね。」


「まぁ、ここでの水は貴重だからね。体を綺麗にするために使うなんてことは、よっぽどのことが無い限り出来ないのさ。」


「ここからならたいした距離じゃないんだし、毎回帰ったら良いんじゃね?」


「それを言えるのは高レベルの冒険者か、君くらいなものだよ。

 まぁ、高レベルの冒険者はこんな場所では無く、もっと先に行くだろうけどね。」


「じゃあ、生活魔法か水魔法でも使って体を拭くだけでも良いじゃん。」


「それも難しいだろうね。魔力は戦闘で使い果たして残ってないだろうし、そもそも魔法が使える人自体が貴重だからね。」


「魔力? ここに来るまでに、全く使って無いから余っているぞ?」


「だから、それは君が異常なだけだ。」


「それって俺が異常だと言ってるみたいだが?」


「何度も言っていると思うのだが?」


「・・・・」



いや、まぁ、多少は人と違うと言うことは理解しているが、異常と言われるほどじゃないと思うんだが……違うよね?



「まあいいや、フィーネ。先に行こう。」


「そうだね。」



俺たちは階段を降りて地下6階に到着した。



「ふぅ~、新鮮な空気(?)が旨いぜ!」


「長い時間居れば臭いとかも気にならなくなると思うよ。」


「出来れば慣れたくは無いなぁ~、予定の場所も似た感じなのかな?」


「先ほどの場所よりはマシだと思いたいが、おそらく似たような感じだろうね。

 行ったことが無いから何とも言えないのが正直な感想だが。」


「まぁ、行ってみれば分かるさ。」


「そうだね。」



さてと、気持ちを切り替えて先に進もうか。



「フィーネ、この階層はどんな感じなんだ?」


「ここからは中級者レベルとされているね。そして見て分かる通り、この階層は洞窟型となるのさ。

 敵はオークで3匹ほどが連携を取って襲ってくるよ。全方向から襲われることが無いとは言え、敵はそれなりに強いからね。気を付けると良い。」


「オークね。もしかしてドロップって肉か?」



色んな物語でのオーク肉は旨いってのが定番だからな。ちょっと楽しみだ。



「一応出るが、滅多に落とさないらしいぞ? 10~20匹に1個手に入れば良い方らしい。」


「なるほど、レア物なのか。」


「ある意味レアなのだろうか? 通常は魔石がドロップするからね。荷物になる肉は、ハズレになるな。」


「もしかして、あまり旨くない肉なのか?」


「味は悪くは無いが、それほど上質な肉でも無いらしい。ただ、ここでの生肉は貴重な食料だからね。人によってはレアかもしれないね。」


「生肉だったら上の階に言ってウルフでも狩ってくれば良いんじゃね?」


「わざわざ上の階に行って狩りに行く手間をかけるよりは、さっさとオークを倒して切り上げる方が良いからだろうね。それに生肉だとたいして日にちも持たないしね。」


「なるほど。」


「それに、ダンジョンでは肉を料理するための火が松明やランタンの炎くらいしか無いのも人気が無い理由かもしれないよ。

 上位種のハイオークやオークナイトとかになると、その程度の調理でも旨いらしいが、食べたことが無いから正確なことは分からないかな。」


「へぇ。」



それほど旨いと言うのなら、オークナイトの肉、貰ってくるんだった(泣)



「さてと、そろそろ行こうか。」


「了解した。」


「ちなみにマップって持っているのか?」


「冒険者ギルドに行けば売ってはいるだろうけど、それなりに高いからね。買ってはいないね。」


「無い物は仕方ないか。」



今のところ1本道だし、とりあえず進むとするか。

少し洞窟を進むと、前方に3体のオークが現れた。



「さっそくお出ましだ。」



オークは、ゴブリンを2倍程にしたくらいの身長で、相撲取り体系にした二足歩行の豚さんだ。手にはこん棒を持っている。

ただ、ダンジョンの通路が2匹が両手を広げて横に並ぶ程度の広さしか無いため、遠距離攻撃を持たない残りの1匹は、今のところ何の役にも立たないみたいだ。

いや、無理やり3匹並ぶことは出来るよ? お互いの行動が阻害されて、こん棒が振るえなくなるからやらないだけだろうけどね。

俺個人的に思うのは、1列に並んで、1匹目が盾役となって、2匹目以降が死角からの攻撃を繰り出すのが一番効果的な戦い方だと思うのだが、何でやらないんだろうな。



「まあいいか。さっさと倒すとするか。」



正直2匹が並んで攻撃出来ると言っても武器が振るえるだけだ。後ろはまだしも横に避けるスペースは無いため、盾役が居ないのであれば、俺にとっては案山子と一緒だ。俺は糸を横なぎに払ってあっさりと倒した。残りの1匹が一瞬ひるんだので、即座に近づいて首を刎ねた。ミッションコンプリートだ。

落ちていたのは魔石が3個で、肉は落ちなかったみたいだ。残念である。



「君にとっては、ゴブリンもオークも変わらないみたいだね。」


「普通の武器だったのならそれなりに苦労はしたと思うよ? こんな避けられない場所が相手なら、単に良い的にしかならないからね。」


「そうみたいだね。」



フィーネが何かを諦めたような顔でそう言ったのだった。


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