228 場所
目が覚めた。今日はフィーネの方が先に起きたらしく、ベッドには俺だけだった。
べ、べ、べ、べつに寂しかった訳じゃないぞ!
「おはよう。」
「お、おはよう。」
「今日はダンジョンに行けそうかい?」
「だ、大丈夫だ。問題無い。」
「じゃあ朝食を食べたら出発しよう。僕の方はもう準備は出来ているよ。」
「おう。」
俺は急いで着替えると、急いで食堂で朝食を食べるのだった。
「行くぞ!」
「まだ食べ終わってないのだが、もう少し待ってくれないか?」
「お、おう。」
先走ってしまった。フィーネが食べ終わるのを待つついでに、ダンジョンについて聞いてみることにした。
「ダンジョン内で商売をやるとして、どこでやるのが良いと思う?」
「そうだなぁ、さすがに戦いながら商売はしたくないから、階段でやるのが良いだろうね。」
「なるほど。」
「後はどの階層でやるのかだが、僕のお勧めとしては地下6階と7階の間だろうね。」
「理由は?」
「まず、地下6階が一番冒険者の数が多いと言うのが理由としての1つだね。」
「そう言う理由なら、地下5階と6階の間の階段でも良いんじゃないか?」
「その場所は、かなり人が多いんだ。」
「沢山売れて良いんじゃないのか?」
「売れるかもしれないが、人が多いと言うことは、質の悪い人も必然的に多くもなるのさ。まぁ、そこまでの強さしか得られなかったからこそ、質が悪くなったとも言えるのだけどね。」
「なるほど。」
「後は地下7階からは敵がかなり強くなるからね。ここまで来られる様な人は、わざわざ犯罪を起こすほどの余裕は無いと言うか、する必要も無いのさ。」
「必要が無いって?」
「儲かるからね。犯罪を起して捕まるのも馬鹿らしいだろう?」
「確かにな。」
「逆に言えば、ここでアイテムの売買が行えるのであれば、向こうは減った食料を補充できてダンジョン攻略が捗ってより儲かるし、ドロップアイテムを売却できることで余分な荷物を減らせる。
こっちは幾らでも荷物を運べるとなれば……お互いに良いことづくしだとは思わないかい?」
「決まりだな。」
俺たちのダンジョン内での商売は地下6階と7階の間で行うことに決めたのだった。
「待たせたね。」
「じゃあ行こうか。」
食事が終わったので、俺たちはダンジョンに向けて出発することにした。
「じゃあ、地下6階までは、寄り道なしの最短距離で行くぞ。」
「了解だ。」
俺は少し本気を出すことにした。
新装備のグローブを最大限に利用し、進路上の敵をサクサクと倒すと共に、アイテムボックスへと流れ作業の様に収納していく。
さすがに近くに人が居る場合はやらないけどね。
その甲斐が有って、地下5階のボス部屋には1時間もしないで到着することが出来た。
まぁ、直線距離に換算すると5kmも無いからな。こんなもんだろう。
「……もう気にするのを馬鹿らしくなってきた気がするよ。」
「突然何を言うんだ。」
「前にも言ったが、僕は昔ここの階層に来るまでに約4日程掛かったのだが?」
「言ってたな。」
「今日、ここまで来るのにどのくらいの時間が掛かったと思っているんだい?」
「1時間だな。走ればその半分で来れたとは思うが。」
「分かっているのなら構わないよ。どうせ言っても無駄だろうしね。」
「失礼だな。話ならちゃんと聞くぞ?」
「じゃあ言ってあげよう。ベテランの冒険者だって、ここまで来るのに少なく見ても半日は掛かるのだが、それについて何か言うことは有るかい?」
「無いな。単に要領が悪いだけだろ、そいつらは。」
「そう言うと思ったよ。」
そんな会話をしている内に、ボス部屋の扉が開いた。
「行くぞ。」
「……そうだね。行こうか。」
フィーネは何でそんなに疲れた顔をしているんだ? これからボス戦だぞ?
まぁ、疲れているのなら、負担を掛けないようにサクッと倒しちゃいますかね。
俺は、オーガが現れると同時に首を刎ねるのだった。




