225 条件
朝になり目が覚めた。
「ん~!」
「やぁ、起きたみたいだね。おはよう。」
「おはよう。」
どうやら今日は普通に起きることが出来たらしい。
「ん?」
いや、よくよく確認してみると、微妙に俺の隣のシーツが凹んでいて、生暖かかった。
俺がフィーネを見ると、そっぽを向いていた。どうやら俺が起きる前にベッドから出て行ったっぽいな。
まぁ、フィーネは種族の関係上、体は子供だが美人さんだ。そんな大人の女性に抱き着かれるのも悪い気はしないから気にしないことにしよう。
「今日は休みで良いんだよな?」
「昨日、誰かさんが休まなかったからね。」
「うぐっ、きょ、今日は行かないよ。」
「そうしてくれると助かるよ。」
「とりあえず何回かに分けて、冒険者ギルドへウルフ肉を納品しに行くとして、後は何をしようかな。」
「だったら、一緒に市場にでも行くかい?」
「良いのか?」
「構わないよ。」
「なら、お願いしようかな。」
今日はフィーネと市場を探索することが決定したのだった。実際の商人がどういう風に商売するのかを知る良い機会かもしれない。
朝食を食べ、まずは冒険者ギルドへと向かうことにした。
「一つ提案なのだが、僕のアイテムバッグを使って持っていくのはどうだい?」
「それは助かるが、多分面倒なことになると思うぞ?」
「どうしてだい?」
「俺が大っぴらにアイテムボックスを使って無いのが理由だと言えば分かるか?」
「……なるほどね。どうやら僕は、新しいスキルが使えるようになったことで浮かれていたみたいだ。」
「分かってくれたみたいで良かったよ。」
「でも、アイテムバッグが一般的になれば、世の中はかなり変わることになりそうだよね。」
「それには同意する。恐らくダンジョンの攻略だって進むんじゃないか?」
「間違い無いだろうね。何と言ってもダンジョン攻略での一番のネックは水と食料だからね。」
「ただ問題は、誰でもアイテムバッグのスキルが習得できるかどうかだな。」
「それは僕が作る習得の際のメモを使えば大丈夫なのでは?」
「アイテムバッグを使う前提条件が魔法が使えることだったら?」
「それなら君が……そういうことか。」
「だな。あんな面倒くさいことは、たとえお金を貰ったとしても、身内以外には何度もやりたくない。特にオッサンとかにはな。」
「納得したよ。」
フィーネが自分が習得した時のことを思い出したのか、少し顔が赤くなっていた。
「だから信用できる人で、魔法が使える人と使えない人で試してみて、スキルを公開するかどうかは、その結果次第だろうな。
最悪は、例のアレを受けた人だけしか習得出来ないってこともあり得るからな。」
「参考に聞くが、今までアレをやったことがある人数は何人だい?」
「えっと、6人だったかな?」
ローザを始めとして、アランとエレン、レリウスとサムに、アリスとロリーナ様だったな。トーマス伯爵様は効果なしだから数に数えないとして、あ、7人だった。まあいいや(笑)
「そうすると、最低でも6人は習得できる可能性が有るってことだね。」
「そうなるかな。」
「後は一般の魔法使いと、魔法が使えない人に試してみてからになるのか。」
「そうなるな。誰か知り合いの信用のある人で、条件に会う人とかって居るか?」
「う~ん、商人で信用がある人は、あくまで商売上での信用であって、全てにおいて信用のある人では無いからなぁ……そういう君はどうなんだい?」
俺の方だと、例の魔法習得未経験で、魔法が使える人は……アンナか? だが、聖女に近づくのって現状難しそうだ(汗)
トーマス伯爵様は、貴族がらみで面倒なことになりそうだから却下だし、後は思いつかないな……
逆に魔法が使え無い人だったら、孤児院に何人か居そうだ。
「俺も無理だわ。」
「ならそれ以外で試してみるのが先決だろうね。」
「そうだな。」
考えても仕方が無いので、この話は後にしよう。
結局持てるだけ持っての依頼報告になるのだった。




