220 納得した
市場に到着した。
「こりゃまた凄いな。」
露天みたいに道端で風呂敷広げてやる商売では無く、広場でしっかりとした屋台を使っての商売みたいだ。
主な売り物は食糧を取り扱っているお店が多く、他にも冒険者や旅人に向けての道具を売っているお店や、武器防具を扱っているお店、古物を取り扱っているお店と色々だ。
「もしかして武器を売ってくれるかな?」
オリハルコンの武器が出来た関係上、武器を買う必要性は無くなったのだが、やっぱり実際の武器はどんなのか見てみたい。
とりあえず武器を売っている屋台へ行ってみることにした。
「へいらっしゃい、良い武器が揃っているよ。」
「えっと、手に取って見ても良いですか?」
「おうよ、是非見て買って行ってくれ!」
「あ、ありがとうございます!」
えっ? 本当に良いの? 今までどこの武器屋でも追い出されていたから、許可貰った今でも信じられないのだが……
とりあえずじっくりと見せてもらうことにした。
「さすがに数は少ないか。」
「そりゃあ武器屋みたいには行かないさ。」
「ごもっともです。」
運ぶだけでも一苦労だしな。納得の理由だ。
さて、おいてある武器は何かと言うと、ナイフが10本、ショートソードが2振りに、ロングソードが1本か。
俺はメインの売り物らしきロングソードを手に持ってみた。
「おぉ!」
さすがは鉄の塊だ。ずっしりとした重量感に感動だ。ただ、さすがにこれを片手で振り回すのには少々重すぎるな。
おそらくだが、重さで叩き潰す感じで使う武器なのだろう。刃も切れ味よりも丈夫さを重要視している感じだしな。
「どうだ、良い武器だろう?」
「そうですね。ただ、俺には使いにくいかな?」
「そりゃその年じゃ、そうだわな。片手で持ててるだけでも凄いと思うぞ?」
次にショートソードを手に取ってみた。これなら問題無く振れそうだ。重さ的には石の刺身包丁より、やや重い感じか?
こっちの刃はロングソードよりは切れ味が良いみたいだが、その分刃が欠けそうだ。ホーンラビットやウルフ、ゴブリンみたいな柔らかい敵向けだろう。
最後にナイフだが、これは武器と言うよりは解体用だろう。後は木を削ったりとか、ちょっとした料理に使ったりとかかな?
「買っていくかい?」
「う~ん。ちなみに幾らなの?」
「ロングソードは銀貨5枚だ。ショートソードなら3枚で良いぞ。ナイフは大銅貨5枚だ。」
「武器ってそんなに高いんだ!」
「そりゃあ、命を預けるための物だからな。ケチる訳には行かねーだろ。」
「なるほどね。」
ふと、レリウスが持っていたのって同程度の武器だったな。銀貨5枚で買ったのだろうか? そうするとレリウスって実はお金持ちだったとか?
まぁ、次に会うことが有ったら聞いてみよう。
「とりあえず、今回は予算が厳しいのでまた今度にします。」
「おう、まだ武器を持つには早いだろうしな。頑張って金を貯めて、大きくなってから買いに来てくれよな。」
「はい。」
もしかしたらだが、俺が買いに来たわけじゃなくて、将来のための勉強として見に来ただけと思われていた?
だから触らせてくれたとかか? もし、買うと言ったらどうなのだろう?
「すいません、ちょっと聞いても良いですか?」
「おう、何でも聞いてくれ。」
「例えば俺が武器を売ってくださいって言ったら、どうなりますか?」
「ナイフくらいなら売っても良いが、ショートソードやロングソードは無理だな。」
「何でですか?」
「そりゃあ、子供に殺し合いなんてさせられねーからな。何処の武器屋でも同じだと思うぜ?」
「じゃあ、何でさっきは買って行くかどうかを聞いたんですか?」
「そりゃあ、将来に向けての営業だよ。どうせ買えないと思ってたからな。」
「なるほど。」
単に良い人ってことか。それなら一方的に駄目と言わずに、そうと教えてくれれば良かったのにな。
まぁ、理由が分かっただけでも儲けものか。
「大きくなったらまた来ます。」
「おう、待ってるぜ。せめて10歳になってから来てくれよな。」
「はい。」
まぁ、10歳も子供だとは思うが、異世界では違うのだろうから、ツッコむのは止めておこう。
俺は武器の屋台を後にし、別の屋台へと移動することにした。




