022 散歩依頼完了
さていよいよ最終日だ。
昨日のあの様子なら今日も大丈夫だろう。
だが万が一もあるし、用心に越したことはないな。
「ほら、ローザちゃん。」
「うん。」
俺はローザにリードを手渡した。
「行くか。」
「うん! じゃあ、ジョニー君行くよ~!」
「ウォン!」
そしてゆっくりと歩き始める。どうやら問題ないみたいだな。
「何で初日はあんな感じになったんだろうな。」
「んー多分、初めて会った人だったから、緊張して張り切っちゃったんだよ。きっと!」
「なるほどね。頭のいい犬って言ってたし、落ち着ければそうなるか。」
「うん!」
散歩コースの半分まで来たので交換することにした。
「ほら、残り半分だし変わるよ。」
「そうだね。はい、シュウ君。」
ローザからリードを受け取る。
「ウォーン!」
「えっ?」
グン!
俺がリードを受け取ると同時に、ジョニーが雄たけびを上げて走り出した。
「ちょ! おまっ! ジョニー! と、止まれえええぇぇぇぇ~~~~!!」
「シュウ君!?」
「うわあああぁぁぁ~~~~~~~!!」
・・・・
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
「何ってことしやがる! この馬鹿犬が!!」
今回も何とか生きて帰って来れた。だがあちこち引きずられたから服はボロボロだ。よく怪我をしなかったのが不思議なくらいだ。
そして俺は理解した。この馬鹿犬は女性にしか優しくないってことが。もう二度とコイツの散歩なんかやらね~ぞ!!
「はぁ、はぁ、はぁ、や、やっと追いついた。」
暫くしてローザが戻ってきた。
「シュウ君ボロボロ(笑)」
「こいつに文句を言ってくれ!」
「ジョニー君、こんなことしたら駄目だよ?」
「クゥン?」
首を傾げて何のこと? って言ってるが、俺は絶対ワザとだと思ってる。
「まあいい、さっさと報告してこんな依頼終わりにしてやる!」
「あははっ、そうだね。」
俺達は報告のため、老婆の所に向かうことにした。
「散歩、終了しました。」
「ご苦労様。あら? その服はどうしたの?」
「ちょっと転びまして。あ、怪我はしてないから大丈夫です。」
「ぷっ!」
「ローザちゃん、うるさい!」
「ご、ごめんね。」
口では謝っているが、肩がプルプルと震えているから笑いを堪えているのがバレバレだ。覚えてろよ。
「そ、そう。と、とにかく3日間のジョニーの散歩してくれてありがとうね。はい、依頼票。」
「ありがとうございます。」
「ジョニーも嬉しそうだし、また依頼を出した時は宜しくね?」
「謹んでおこ『はい! 是非!!』す。」
「嬉しいわ。それじゃあ、その時はお願いね。」
「……はい。」
その時は、絶対ローザにやらせてやると、俺は心に誓うのだった。
・・・・
「シュウ君、その服どうしたの?」
「ちょっと転びまして。」
「転んだくらいじゃ、そうならないでしょ!」
「いえ、転びました。」
男にはプライドと言うものが有ってだな、犬に引きずられましたとは言えないんだ!
「あのね、シュウ君はジョニー君に引きずられて……ぷぷっ♪」
「ジョニー君?」
「おばあさんの飼っているワンちゃん。」
「そ、そうだったのね。」
早速俺の醜態がバラされてしまった。くそっ!
そしてイザベルは少し引いていた。
「依頼手続きお願いします。」
「あ、はい。じゃあカードを出してね。」
「「はい。」」
依頼票とギルドカードを出して手続きをしてもらった。
「こちらが依頼完了の銅貨3枚ね。ご苦労様でした。」
「「ありがとうございます。」」
「本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、イザベルが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
2回目の依頼も無事(?)に終わらせることが出来た。もちろん稼いだお金は没収されたけどな(遠い目)




