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212 地下4階


さて、地下4階に降りてきた。

先ほどの森は無くなり、再び林エリアっぽい。



「フィーネ、この階層はどんな感じなんだ?」


「広さはさらに4倍だな。魔物はウルフに乗ったゴブリンライダーだ。機動力はもちろんのこと、ゴブリンライダーは槍を持っているんだ。中々の強敵さ。

 ある意味、この階層をクリアー出来るかが、初心者を脱出出来るかのターニングポイントかもしれないよ。」


「なるほどね。」


「……どうやらお客さんが来たみたいだな。」



もう少し説明を聞いて対策を考えてからにしようと思ったが、そうは問屋が下ろさないらしい。

ウルフに乗っているからか移動速度も速いし大した時間も残って無いな。



「まあ良いか。今回はちゃっちゃと倒しちゃうか。」



今回はいつも通りの方法で、楽をさせてもらおう。ここに来るまで大した魔力を使って無いから余っているしな。

とは言っても、近づいて来る数は10匹だ。結構多いな。

俺は10本のアイスアローを展開する。オート狙撃による照準が現れたことで数が多い原因が分かった。



「なるほど、ウルフとゴブリンライダーで1セットだったのか。」



アイスアローを飛ばすことで、戦闘はサクッと終了した。

落としたのはウルフは毛皮が3枚と肉が2個、ゴブリンライダーはちょこっと良い魔石だった。ホブゴブリンと一緒かな?

全てのドロップアイテムを回収したので、フィーネの方を見ると、俺を見たまま固まっていた。



「どうした?」


「どうしたって、君が今したことがどれ程のことか知っているだろうが!」


「したことって、ただゴブリンライダーを倒しただけだぞ。」


「それは結果だ。僕が言いたいのは魔法の同時攻撃の正確性だよ。1つの魔法を制御するのだって大変なのに、それが同時起動に制御だ。

 どういった頭の構造をしているのやら興味が付かないよ。是非とも頭の中身を見せてもらいたいね。」


「そんなことをしたら死ぬだろうが。却下だ。

 魔法の同時起動はさすがに教えられん。諦めてくれ。」


「残念だよ。」



オート狙撃は創造魔法によるスキルだからな。習得方法何かもそうだが、どうやって教えてやれば良いのか全く分からないから無理だな。



「それにしても、君にかかったらゴブリンライダーも大した敵に見えなくなるのもどうかと思うのだが。」


「魔法ならな。剣ならもう少し苦労するかもしれん。」


「それでも少しで済むのか……」



フィーネが呆れた顔をしていた。



「とりあえず魔法で対処するなら問題は無いと言うことがことが分かったし、次は武器を使って戦ってみようか。」


「僕が前に来た時にはあれだけ苦労したと言うのに……ブツブツ……」



何か自分の世界に入ったと言うか、考え事をしているな。

俺が居るから良いけど、さすがにダンジョン内でそれはマズイだろ。



「おーい、フィーネ!」


「おっと、すまないね。何だい?」


「考えるのは帰ってからにしよーぜ。とりあえず次は剣で戦ってみたいのだが、構わないか?」


「君がそれで問題無いのなら構わないよ。いざとなったら何とかなるんだろ?」


「まだまだ魔力は有るしな。あと10回は同じ戦い方をしても大丈夫だ。」


「なら僕としては構わないよ。ただ、出来るのなら僕に近づけさせないようにしてくれると助かるかな。」


「善処するよ。」


「そこは『任せろ!』と言ってほしかったね。」


「善処する。」


「・・・・」



そんな顔をしないでくれ。そうするつもりでは有るけど、絶対って保証は無いからな。

まぁ、俺が前に出れば多分後ろには行かないだろうとは思うけどね。



「おっと、次のお客様だ。」



どうやらこの階層は、その場に留まっていても次々と敵がやって来るみたいだ。案外気が抜けないのかもしれない。

さて、頑張りますかね。




・・・・




「魔法は使わなくても問題無さそうだな。」


「……ソウデスネ。」


「どうした?」


「もう君については気にしないことにするよ。」


「?」



とりあえず今の戦闘だが、特に問題と言う問題は発生しなかったとだけ言っておく。

ゴブリン程度には使わなかったから気が付かなかったが、近接戦闘において、高速思考と空間把握がこれほどマッチするとは思わなかった。

もっと強い敵だと分からないけど、ゴブリンライダー程度の敵では問題無さそうだ。


その後階段に向けて移動をする。途中で7回程戦闘になったが、怪我も無く、無事に到着することが出来た。



「どうする? このまま降りるか?」


「もう僕に君に対する指示は無いと思えるのだが、君はどうなんだい?」


「そうだなぁ~」



ダンジョンに入ってどれくらい時間が経ったのだろうか。太陽が無いから今一つ時間の感覚が分からない。



「フィーネ。」


「何だい。」


「俺達がダンジョンに入ってから、どのくらいの時間が経過したんだ?」


「さあ?」


「だよなぁ、分からないよね。」


「多分、君が思っていることと、私が考えていることは違うと思う。」


「どういうこと?」


「普通なら、松明の燃え尽きた本数や、ライトの魔法の持続時間で判断するのだが、君のライトは何時消えるんだい?」


「えっ?」



そう言えば、ライトの継続時間ってどのくらいだ? 説明用に使ってすぐに消したから、こうして明かりとして使用することが無かったから気が付かなかったな。

えっと、前にローザに教えたときに消し方が分からなかった時、1時間くらいで消えたんだっけかな?



「ちょっと聞くけど、ライトの魔法ってどのくらいで消えるんだ?」


「普通なら、1時間と聞いたことが有るね。ただ君のライトは、1時間以上経っても消えていないのは間違いないと思う。」


「えっと……」



ひょっとして、魔力盾みたいに何かしらの影響で消えなくなったとか? まぁ、理由は良く分からないが、魔力消費が抑えられるのならそれはそれで……



「まあ良いか。」


「勝手に納得しないでくれたまえ。」


「悪かったよ。とりあえず時間に関しては、腹の減り具合で判断するしか無いかな。」


「状況によって変わるから、結構なズレが生じるが、それ以外に方法も無さそうだし、しょうがないだろうね。」


「だな。そうすると今は……お昼を少し過ぎたくらいか?」



少し小腹が空いてきたしな。



「いや、僕の感覚だと、お昼までには後1時間はありそうだ。もしかしてお腹が空いたのかい?」


「そんなところだ。」



どうやら大分ズレが発生しているみたいだ。運動量の差だろうか。



「何かを食べるにしても、ここだとゴブリンライダーが寄ってくるだろうから、一度下に降りた方が良いだろうね。」


「じゃあ降りるか。」


「そうだね。」



フィーネの了解も得られたことだし、俺たちは地下5階への階段を降りるのだった。


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