021 散歩
ドドドドドド……
「ん? 何の音だ?」
ドドドドドド……
「ウワン!」
「キャア~~~!!」
「うわああぁぁぁ~~!!」
そこに現れたのは、なんと2m程の巨体な犬だった。
さっきの可愛い声は単に距離が離れていて小さく聞えただけだったみたいだ。
「ほらジョニー、ご挨拶は?」
「ウワン!」
「よしよし、良い子ね。可愛いでしょう?」
確かに見た目はフワフワのモコモコで、垂れ下がったお耳につぶらな瞳。愛嬌のある顔だから見た目は確かに可愛い。でもあの巨体だ。正直少しビビっている。
と言うか、こんな大きな犬の散歩なんか出来るのか!?
「えっと、さ、触っても良いですか?」
「良いわよ。」
「やった~!!」
最初のビックリした態度はどこへやら、ローザは思いっきり犬に抱き着いてモフモフしている。あ、ちょっと羨ましいかも……
老婆も目を細めてそれを眺めていた。
「あら嫌だわ。思わず見とれちゃってごめんなさいね。
それで依頼のことだけど、1日1度この子をお外に連れ出して貰えないかしら? 時間はあなた達の好きな時で構わないわ。」
「えっと、その前に質問です。」
「何かしら?」
「俺、いや僕達で散歩って出来ますか?」
「大丈夫よ、この子は頭が良いから。」
「そ、そうですか。」
確かにローザにずっとモフモフされているのにもかかわらず大人しいな。だったら大丈夫か?
「わかりました。依頼を受けることにします。今から散歩に行っても良いですか?」
「ありがとう。それではお願いね。」
「「はい!」」
首輪にリードを付けて家の外へ向かう。俺の移動に合わせて着いてきているってことは、本当にしっかりとしつけられている犬みたいだ。
「「行ってきます!!」」
「散歩コースはジョニーが分かっているから宜しくね。」
「「はい!」」
老婆が家に戻ったので散歩に出発だ!
「行くぞ、ジョニー!」
「ウォン!」
ジョニーが一声吠えると走り出した。
「ちょ、おまっ!」
力強く引っ張られたため、転びそうになったが何とか耐えるが、ジョニーはどんどん加速していく。
「シュウ君、待ってよ~」
「ジョニーが引っ張るんだよ、助けてくれ~!!」
しまいに足が速度に間に合わなくなってしまい、ズルズルと引きずられている。
「うわああぁぁぁぁ~~~~~~……」
・・・・
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
「な、何とか生きて帰って来れた……」
俺はぐるっと1週して老婆の家まで戻ってこれた。ずっと引きずられたままだっけどな(遠い目)
「あっ、やっと帰ってきた。」
結局追いつけずにはぐれてしまったローザは、先に老婆の家に戻ってきていたのだ。
ローザの姿を見れた俺は、安心の余りポロリと涙がこぼれてしまった。
「怖かったよね。大丈夫? よしよし。」
「ち、違うわい! 目にゴミが入っただけだよ!」
「そっか。」
男には女の子の前ではカッコつけなくちゃいけない時だって有るんだよ!
まぁ、バレバレっぽいけどね。くそっ!
それにしてもジョニーの散歩は大変だった。あの老婆ってもしかしてかなりの力持ちか健脚持ち!?
いやそう言う風には見えなかったな。と言うことは老婆の言葉しか聞かないのだろう。
と言うことは、これを後2回もやらないと駄目なの!?
「明日はローザの番ね。」
「えぇ~~~~~!!」
こうして散歩の1日目が終わったのだった。
そして次の日になり、2回目の散歩の時間になった。
「シュウ君、代わってよぉ~」
ローザは涙目で言ってきた。
「だが断る!」
「シュウ君がイジワルだよ……」
「頑張れ!」
「うぅ~~!! じ、じゃあ、ジョニー君。行こうか。」
「ウォン!」
昨日の俺みたいに引っ張ら……れてない……だと!?
ローザを労わる様に歩調を合わせて歩いている。
「あれ?」
ローザも意表を突かれて驚いていたが、安心だと分かると嬉しそうな顔をした。
「ジョニー君、行くよ~♪」
「ウォン♪」
1人と1匹が仲良く歩いて行くのを俺はただ見ているだけだった。あれ?
小1時間ほどしてローザとジョニーが帰ってきた。
「たっだいま~!」
「ウォン!」
「お、おかえり。」
1人と1匹は、散歩の最中に随分と仲良くなったみたいだ。う、羨ましくなんか無いんだからね!
こうして2回目の散歩が終了したのだった。




