206 魔法習得
夕食を食べ終えた俺たちは部屋に戻ってきた。
えっ? 料理? まぁ、値段にしては悪くは無かったよ。可も不可も無い味だったが……
個人的には、野営でのフィーネの作ったスープの方が美味しかったとだけ言っておく。
「さて、今のうちに体を綺麗にしておくか。」
俺は頂いた桶に入ったお湯を使って体を綺麗にすることにした。
生活魔法のクリーンだけだと、綺麗にはなっても今一つさっぱりしないからな。俺はフルチンになると、タオルを使って体を拭くのだった。
えっ? フィーネはどうしたのかって? フィーネは夕食を食べた後に、少し街に行ってくると言って出て行ったので今は1人だ。
だから素っ裸になっても問題が無いのだ。決して俺の息子を見せびらかす性癖を持っている訳ではない。無いったら無い!
体を綺麗にして着替えた後は、少しゆっくりすることにした。
・・・・
「……れ。」
ユサユサ……体を揺すられる感覚がする。
「起きてくれ。」
「あれ? 俺、寝てた?」
「グッスリだったね。正直、起こそうかどうか悩んだくらいさ。」
「悪い。」
「遅くなった僕が悪いんだし、構わないよ。」
どうやらフィーネが帰ってくるのを待っている間に寝てしまったみたいだ。何だかんだ言って疲れてたのかな?
「さて、早速で悪いのだけど、魔法を教えて貰っても良いだろうか。」
「構わないが、まずはトイレに行って出せる物全てを出し切って来てくれ。」
「分かったよ。」
フィーネは何も言わずに部屋を出て行った。何も言わなくてもそれが必要なことなのだと理解してくれたのだろう。
流石は商人だな。理解が速いと言うか無駄がないぜ。
少ししてフィーネが戻ってきた。
「うぷっ……さすがに無理やりは少々キツかったね。」
「……すまん。説明不足だった。そこまでする必要は無かったんだよ。」
「うん? そうか。」
どうやらフィーネは無理やり吐いて、胃の中まで空っぽにしてきたみたいだ。
確かに出せる物全てを出し切って来てくれたみたいだ。本当にすまん……
フィーネが気にしてないのが唯一の救いか。後で何か食べられる物でも出してあげよう。
「じゃあ始めるとするか。」
「お願いするよ。」
「まずは両手を出してくれ。」
「ん。」
フィーネが両手を出したのでそれを掴む。
「行くぞ。」
俺は一声かけてから魔力を流し込んだ。
「くうっ、な、成程……こういう事か……んあっ! これは……なかなか……興味がある……くうっ!」
すげー! ここまで耐えられる人って初めて見た。ただ、頬は真っ赤だし、体をクネクネと悶えているし、見た目は子供っぽい感じなのにかなり色っぽい。
「ま、まだかい? そろそろ限界なのだが……ふあっ!」
何時もだったらヘブン状態になった後に確認してたから知らなかったけれど、どうなんだろう?
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名前 :フィーネ
年齢 :28
種族 :ホビット族
状態 :普通
LV :7
HP :43/43
MP :131/131
STR:20
VIT:9
AGI:15
INT:17
DEX:22
LUK:4
スキル:弓術、算術、交渉術、鑑定、索敵、罠解除、魔力感知、魔力操作
称号 :商人
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あ、習得してた。どのタイミングで習得するんだろうな。次にやる機会が有ったら確認しておこう。
とりあえず習得できたので終わらせても良いのだが……でもこの経験は1度きりらしいし、最後までやっちゃおう(鬼)
「だめ、だめだめだめ、もうイッちゃううううぅぅぅ~~~~~~!!」
あ、イッた。フィーネはその場に倒れこんでしまった。、胸を上下に激しく呼吸をしているが、気絶はしていないみたいだ。
「無事に習得できたみたいだが、体の方は大丈夫か?」
酷い目に会わせた本人が何を言っていると俺自身も思ったが、口には出さない。
「はぁ、はぁ、はぁ、す、すまない、少し待っていてくれ。」
「おう。」
体が落ち着くまで少し待つことにする。
「ふぅ~……ひどい目に会ったが、この経験はある意味貴重だろうし、良い経験だと思っているよ。
どれどれ……確かにスキルを授かっているね。凄いな。」
ギルドカードを見てないのに何で分かったのか……って、鑑定持ちだったな。
「後は実際に魔法を使ってみてどの適性が有るのか調べると良いんじゃないかな。」
「そう思ってこいつを買ってきたんだ。」
フィーネはそう言うと、リュックから1冊の本を取り出した。
「初級魔法全集?」
「この本は、魔法を覚えるためと言うよりは、初級魔法にどんなのが有るのかを教えてくれる本なのさ。」
「へぇ、そんな本が有るんだな。」
「一応呪文も書いてあるからね。僕に何の属性が使えるか分からなかったから、それを調べるのには適しているだろう?」
「確かに。俺も後で見せて貰っても良いか?」
「私は後でで構わない。先に見ると良い。」
「良いのか?」
「どうぞ。」
フィーネはそう言って初級魔法全集を俺に渡してくれた。早速読ませてもらおう。
「なるほど、各属性の初級魔法が全部書いてあるのか。」
火、水、風、土、光、闇のアロー系、ライトやダークネスの魔法も載っていた。
とりあえずアロー系を順番に試してみることにした。
「予想していたが全部使えたな。」
俺の頭上にはすべての属性の矢が浮かんでいた。全属性魔法持ちだし、使えるのは当たり前か。
さすがに部屋の中で攻撃魔法を飛ばすわけにも行かないため、魔法をキャンセルして消しおいた。
「君は全属性持ちなのか。しかも無詠唱の同時発動か。凄いな!」
「あ、やべっ! ……まぁ、内緒にしてもらうし、良っか。
ありがとな。これは返すよ。」
俺はフィーネに初級魔法全集を返した。何かジト目で見られているんだが……ごちそうさまです。
「まあいい。僕も何が使えるか調べてみようか。」
そう言ってフィーネは順番に呪文を唱えて行った。さすがに無詠唱は無理か。
「おっ、出来たみたいだね。」
フィーネが使えたのは水属性のみだった。飲み水とかにも使えるから、旅をする商人にとってはアタリだと思う。
水なら生活魔法があるじゃないかって? 確かに生活魔法も水を出せるが、効率は段違いだからな。無いよりは有った方が良いと思う。
「どうやら私には水魔法の適性しか無さそうだ。
土魔法も使いたかったのだが、贅沢な悩みなのだろうね。」
全ての魔法を試してみたが、発動したのがウォーターアローだけだったからな。こればっかりは仕方が無い。
今まで使えなかった魔法が使えるようになっただけでも儲けものだしな。
後は魔力盾と生活魔法くらいは使えるだろうし、十分だ。
「さて、これで検証は終わりだね。無事に魔法が使えるようになれたよ。感謝する。」
「良かったな。」
「本当にありがたいよ。本来なら金貨何枚も払ってでも惜しくは無いのだがね。」
「その辺はこっちの都合も有るから気にするな。」
「ありがとう。」
こうして無事にフィーネも魔法使いの一員になれたのだった。良かった良かった。




