204 パーティ
相変わらず高速で森の中を突き進んでいる。
すでに1つ目の村を通り越したところだ。
「この調子だと、今日中にガンガルの街に着きそうだね。」
「俺は行ったことが無いから今一つ分からんが、そうなのか?」
「前にも言ったかもしれないが、セリーゼの街からガンガルの街までは馬車で6日掛かるんだよ。
でだ、今朝出発した野営地が丁度中間の場所になるのさ。」
「だから今日中ってことか。」
「その通りだね。」
確かに通常の3倍の速度で移動出来ていたのは確認できたからな。そういうことなら納得だ。
「そう言えば、君はダンジョンが目的だったね。」
「そうだが、それがどうしたんだ?」
「良かったらだが、僕とパーティを組まないか?」
「却下。」
「どうしてだい? 僕が居ると色々と便利だよ?」
「間に合ってます。」
「そう言わないでくれよ、これでもダンジョンについての知識はは色々と詳しいのさ。きっと役に立てると思うよ?」
「大丈夫です。」
「ほ、ほら、それに僕は力持ちだから、ボーダーとしても使えるし、ほら、良い条件じゃないか。」
「問題無い。大丈夫だ。」
「そう、連れないことを言わないでくれよ。悲しくなるじゃないか。」
フィーネが泣く真似をしている。あざといな。
「だいたい、ダンジョンの街なんだから、他にも冒険者はいっぱいいるだろうが、何で俺なんだ?」
「君からは金の匂いがしたからだね。まぁ一番の理由は、商人としての勘さ。」
「勘ねぇ……」
正直アイテムボックスや鑑定が有るし、完全耐性があるから、1人でダンジョンに入ったとしても大した問題にはならないだろう。
逆にフィーネと一緒になることで、知識を得られるのはメリットだが、行動に制限が出ることによるデメリットの方が多い気がする。
全部さらけ出すほどには、まだフィーネのことを良く知らないし、信頼している訳では無いからな。
……そう言えば、フィーネを鑑定ってしていなかったな。
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名前 :フィーネ
年齢 :28
種族 :ホビット族
状態 :普通
LV :7
HP :43/43
MP :131/131
STR:20
VIT:9
AGI:15
INT:17
DEX:22
LUK:4
スキル:弓術、算術、交渉術、鑑定、索敵、罠感知、罠解除
称号 :商人
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ふむ、レベル的には俺と同じくらいか。
さすがは商人ってだけはあって、鑑定や算術、そして交渉術を持っているな。
あれ? フリーの商人で鑑定持ち……どこかで聞いたような……はて?
戦闘系では、弓術や索敵に、おぉ、罠感知に罠解除なんて物も有るのか。確かにダンジョン攻略には必須なスキルかもしれない。
ん~どうすっかなぁ……
「フィーネさんがダンジョンに入る目的って何だ?」
「一攫千金以外に何が有るのかい?」
「そりゃそうか。」
普通はそうだよな。商人なら特にその傾向は多いだろう。
後は冒険がしたい人やロマンを求める人もいるかもしれない。俺はこっちだな。
「参考に聞きたいのだが、ダンジョンってどのくらいの広さが有るんだ?」
「1階層自体は大した広さでは無いのだが、下の階層に降りる度に4倍の広さになるのさ。
5階層まで行くと、かなりの広さになるから、地図も無しに適当に彷徨ったら、下手をしたら一生出られなくなるかもしれないね。」
どうやら結構な広さがあるみたいだ。
「ちなみに何階層まで有るんだ?」
「さあ? まだ攻略はされていないからね。何階層まで有るかは知られていないんだ。」
「なら、今までの最高の階層は幾つなんだ?」
「記述による記録になるが、200年前の冒険者が10階層に到達したと言われていのが現在での最高記録となっているよ。」
「10階層が最下層なのか?」
「いや、下に行く階段は見つけたらしいが、敵が強かったのはもちろんのこと、食料不足が一番の問題で、これ以上は進めないだろうと、泣く泣く諦めたらしい。」
「へぇ~」
200年経っても10階層より下には行けてないのか。どうやら思ってた以上に難関なダンジョンみたいだ。
それよりも、聞いた話によると、1階層降りる度に倍々と広くなると言うことは、攻略するだけでも何日も掛かるってことか。
1人で攻略したらその間はずっとボッチか……キツイな……
会話をしないことで、人付き合いが苦手になって、終いには人間関係を拗らせそうだ。さすがにそれは嫌だな。
会話の相手目的だとしても、フィーネと一緒に行動するのは、悪くない選択なのかもしれない。人的にも嫌いっじゃ無いしな。
「フィーネは何階層まで行ったことが有るんだ?」
「残念ながら5階層に降りたところまでだね。それ以上は無理だったよ。」
「入ったことは有るんだな。」
「とは言っても入ったのは10年ほど前の話だけどね。
でも、ダンジョン自体は変化しないだろうから、知識的には問題無いと思ってるよ。」
全くの初心者が1人で行動するよりは、ある程度の経験者がいるのでは安心感も違うか。
「ちなみにパーティを組んだとして、ダンジョンで出た儲けに対する分配はどうするんだ?」
「そのパーティにもよるが、パーティ人数で等分するのが一般的だろうね。」
「なるほどな。」
レリウス達と組んでた時と同じ感じか。
「それでパーティの件だが、どうだろうか。」
「そうだなぁ……フィーネさんが俺の情報を他の誰にも漏らさないと誓うのならば組んでも良いぞ。」
「本当かい!」
「ああ。ただし、先ほども言ったことを守るのが条件だぞ。」
「かまわないよ、よろしく頼む。」
「こっちこそな。」
「とりあえず一時的かもしれないがパーティを組むんだ。私のことはさん付け無しのフィーネで構わないぞ。」
「わかったよフィーネ。」
「あぁ。」
こうして俺はフィーネとパーティを組んでダンジョンを攻略することに決まったのだった。




