020 散歩依頼
次の日も冒険者ギルドへとやってきた。
「よし、良い依頼を探すぞ!」
「どちらが良い依頼を見つけられるか勝負だよ!」
「一昨日負けたのに、そんなこと言っても良いのかな?」
「う、うるさい! 今日は勝つんだからね!」
「そこまで言うなら勝負だ!」
俺達は依頼掲示板へと向かうのだった。
「何か面白い依頼は無いかな……部屋の掃除はパス。引っ越しの手伝いは力的にも無理だ。迷子の子猫探しもパス。家の草むしりはやったばかりだから遠慮。う~ん、今一つだな。」
順番に見て行くが微妙な依頼しかない。Gランクだし仕方がないけどね。
「おっ、新作料理の評価だって。良いじゃんこれ!」
俺はその依頼を剥ぎ取った。後はローザを待つことにした。
少ししてローザが戻ってきた。
「見つけて来たよ~」
「じゃあ、いっせーのせで見せ合いしようぜ。」
「いいよ~」
「「いっせーのーせ!!」」
合図と共にお互い持って来た依頼を見せ合った。
「「新作料理の評価? えっ!?」」
何と2人も同じ依頼……いや、お店の名前が違うから一応違う依頼か。
「ど、どうする?」
「とりあえずどんな依頼か聞いてみようか。それから決めても良いしな。」
「そうだね~」
俺達はイザベルの所に並ぶことにした。
「次の方どうぞ。」
「「おはようございます。」」
「あら? シュウ君にローザちゃん。依頼かな?」
「はい。この2つの依頼の内容を聞いてみたいのですが。」
そう言って依頼票をイザベルへと渡した。
「どれどれ、あーこの依頼かぁ~
う~ん……正直あまりお勧めは出来ないかな?」
「どうしてですか?」
「ここに評価って書いて有るでしょ? それなりに味にうるさい人じゃないと難しいわよ?
キチンと評価出来ないと依頼達成にしてくれないだろうしね。」
「美味しい、美味しくないじゃ駄目なの?」
「多分駄目だと思う。それにこの2つの依頼のお店はお互いがライバル同士で、相手のお店よりより美味しい料理を作るって意気込んでいるからね。」
「シュウ君、どうするの?」
「止めておこうか。」
「そうだね、私達じゃ味なんて分からないだろうしね。」
「だな。と言う訳でこれはキャンセルします。」
「分かったわ。後で戻しておくわね。」
「すいません。」
正直に言うとやってみたくは有ったが、依頼達成できなかった場合の賠償金が支払えないからな。不安要素の有る依頼は受けられない。
仕方がない。面白みは無くても確実な簡単な依頼でも探しに行ってみますか。俺達が再び掲示板へ向かおうとしたところ、イザベルさんが声を掛けてきた。
「貴方達だったらこの依頼なんか良いと思うんだけど、どうかしら?」
そう言って1枚の依頼票を見せてきた。そこに書かれている内容は……
「「犬の散歩?」」
「ついさっき入ってきた依頼なんだけどね、飼い主の人が足を怪我してしまったみたいで、代わりに散歩してくれる人を探しているのよ。
怪我と言っても大した怪我では無かったみたいなのだけど、それなりにお年を召した人だから、3日ほど休養を取るそうなの。
大した依頼じゃないから金額は安いんだけど、3日間毎日1時間の散歩で銅貨3枚よ。やってみる?」
「やります!」
ローザが即座に手を上げた。俺達にとっては儲けはあまり考えなくても良いし、まあ良いか。
「良いんじゃないかな。」
「うん! やろうやろう~!」
「じゃあ手続きしちゃうわね。カードを出してちょうだい。」
「「はい。」」
俺達は自分のカードをイザベルへと渡すと、そのカードを機械に通して処理を行っている。
「はい。これが地図よ。詳細に付いては依頼主に聞いてね。行ってらっしゃい。」
「「行ってきます!」」
俺達は早速依頼主に会いに行くことにした。
「どんな犬かな? 楽しみだね~♪」
「依頼主がお年を召した人って言ってたし、子犬じゃないかな?」
「子犬!? 少しくらい撫でても大丈夫だよね?」
「ちゃんと依頼主に聞いてからにしろよ?」
「うん!」
依頼主の家に到着した。さっそく呼び出してみることにした。
コンコン。
少しして扉が開いた。そこには線の細い優しそうな老婆が立っていた。
「どちらさま?」
「僕達、冒険者ギルドの依頼でやってきました。」
「あらまぁ! こんな可愛らしい冒険者さんが来てくれるとは、嬉しいわぁ~」
子供だからと馬鹿にされずに素直に喜んでくれたのは嬉しいな。
「依頼で来てくれたってことは散歩して頂けるのね?」
「「はい。」」
「それじゃあ、家のワンちゃんを呼ぶわね。ジョニーこちらに来て頂戴~!」
「アン!」
老婆が飼い犬を呼ぶと可愛い鳴き声が聞こえたので、直ぐに来るみたいだ。どんな犬が来るのか楽しみだ。




