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195 新たな出会い


「ふぅ……疲れたな。」



無事に宿を見つけられた俺は、泊りの手続きを行って、今は与えられた部屋でベッドに座って休憩をしていた。



「やっぱり1人だと色々と面倒だよな。」



最初、この宿で宿泊の手続きをしようとした時に、宿屋の主人に疑いの目で見られたのだ。

親はどうしたんだとか、お金は有るのかとか色々と聞かれたのだ。

まぁ、冒険者だと言って、ギルドカードを提示した後はすんなりと泊まれたから良かったけどな。

レリウス達と一緒の時は、そんなこと聞かれたこと無かったんだけどな……早く大人になりたいぜ。



「まあいいや、とりあえず飯だ飯!」



腹が減っていると、ロクでも無い考えにもなるだろうからな。俺は食堂へと向かうことにした。

時間が時間だったからか、食堂は満員だった。マジか……

とりあえず給仕の女性に声を掛けることにした。



「あの。」


「はい、何でしょう。ってまた子供!?」


「まぁ、これでも冒険者なんですけどね。って、他にも子供が居たんですか?」


「あ、ごめんなさい。冒険者なら納得です。いえ、正確には子供じゃなかったんですけどね。

 ほら、あそこの席で食事している人がそうなんだけど、ホビット族なんですって。」



言われた方を見ると、確かに子供みたいな見た目の人が食事を取っていた。

ん? あの人って、入街の時に見かけた人っぽいな。緑のローブを着ているし。



「確かに子どもと言われると、そう見えますね。」


「でしょう? でも、あの見た目でも大人なんですって。」


「そうなんだ。」



俺もホビット族と言えば……いや、下手に嘘をついてバレたときに面倒なことになりそうだし、普通に冒険者で良いか。それでも支障無いしな。



「あ、ごめんなさい。それで何か聞きたかったんですよね?」


「あ、はい。えっと、食事をしに来たのですが、食堂がこの様な状態だったので、どうしようかと思いまして。」


「あーそうだよね。う~ん、もし嫌じゃ無かったらだけど、相席で大丈夫か聞いてみるんだけど……

 ほら、さっきのホビット族の人のテーブルなら開いているから、許可が貰えればそこになっちゃうけど、どうかな?」


「大丈夫なので、お願いしても良いですか?」


「了解です。ちょっと待っててね。」



給仕の女性が、ホビット族の人に話しかけていた。そのホビット族の人がちらりとこっちを向くと頷いたので、了解を得られたみたいだ。



「相席しても良いそうよ。」


「分かりました。じゃあ相席させてもらいますので、夕食をお願いします。」


「飲み物は?」


「水で良いです。」


「じゃあすぐに持ってくるから、座って待っててね。」


「お願いします。」



給仕の女性が食事を取りに行ったので、俺は席へと向かうことにした。



「相席、ありがとうございます。」


「この混雑だし、仕方ないよね。まぁ、座りなよ。」



許可が下りたので、とりあえず向かいの席に座らせてもらった。

フードの中が見えたので分かったが、目の前に座っているのは確かに大人の女性だった。

確かに身長が小さいので、ぱっと見、子供に見れれがちになりそうだが、顔はしっかりと大人だったので、4等身くらいの見た目からして何となくお人形さんみたいな感じの人だった。



「それにしても君みたいな子供が1人ってのは珍しいよね。」


「俺もホビット族かもしれませんよ?」


「あはははっ、さすがに同族は見れば分かるよ。君はどこからどう見ても人族だよ。」


「バレましたか。」


「当然さ。」



正確には神族ですけどね。



「一応、これでも冒険者なんですよ。」


「へぇ~、それは凄いね。護衛依頼か何かかな?」


「いえ、ちょっとガンガルの街へと行ってみようかと思っていまして、その旅の途中だったりします。」


「ガンガルと言うと、目的はダンジョンかい?」


「そうですね。えっと……」


「そう言えば自己紹介をしていなかったね。僕は商人のフィーネだ。よろしく。」



僕っ子キター! レリウスの僕とは違ってやっぱり女の子……じゃなくて、女性が言うと、萌えるよな。



「俺はシュウです。フィーネさんって商人だったんですね。だからあんなに大きな荷物を背負っていたんですね。」


「おや、僕のこと知っていたのかい?」


「街に入る際に見かけました。大荷物を背負っていたので気になっていたんですよ。」


「ふふん♪ 僕はこう見えてもとっても力持ちなのさ。」


「確かに凄いですが、あの荷物を背負っていて、戦闘になったらどうするんですか?」


「その時は、逃げるが勝ちだよ。」


「ウルフとかが相手でも大丈夫なんですか?」


「その時になったら、さすがは荷物を捨てて逃げるしかないだろうね。

 まぁ、僕も馬鹿じゃないから、たいてい移動するときは、どこかの冒険者の後ろにくっ付いて移動するか、そうじゃないときは乗合馬車に乗ったりするけどね。」


「冒険者に護衛依頼とかを出さないんですか?」


「ちっちっち、馬車を持っているならまだしも、身一つで商売やっている僕にとっては、そんなことをしたら大赤字だよ。」


「そりゃそうか。商人と言うのも色々と大変なんだな。」


「まぁね。そういう君こそ、1人で大丈夫なのかい?」


「それなりに移動手段があるってのもあるけど、ついこの前まではパーティで活動していたんだよ。」


「一緒じゃないと言うことは……もしかして!?」


「いや生きてるから。ちょっとした縁で、リルディル伯爵家に仕官することになったから別れることになったんだよ。」


「リルディル伯爵家にねぇ……君は省かれてしまったんだね。可哀そうに……」


「違うわ! 俺は冒険者でいることを選んだだけだ!」


「まぁ、言うだけは自由だよね。うんうん。」


「もういいよ、それで……」



俺は面倒くさくなったので、説明することを放棄することにした。


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