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190 お誘い


報酬を受け取って一段落したところで、トーマス伯爵様が俺たちに対し、話しを持ちかけてきた。



「ところで話は変わるが、シュウ、レリウス、サムよ、リルディル伯爵家で働く気は無いか?

 ロリーナとも話したのだが、実力的にも十分と判断できたしな。どうだ?」


「「「ええぇぇぇ~~!!」」」



俺たちは驚いて顔を見合わせた。俺はロリーナ様に1度誘われて断ったが、まさかトーマス伯爵様も誘ってくるとは。



「ど、ど、ど、どうすれば!?」


「貴族様に雇われるとなると、ほらアレだろ? アレ!」



サムとレリウスは思いかけずの幸運に興奮している。やっぱりキチンとした安定した就職先と言うのは、異世界でも人気があるのだろう。

まぁ、2人がこのまま雇われるのなら別れることになりそうで残念なのだが、それでも本人が希望するのなら別に良いかな。



「君はレリウスと言ったね。君は確か剣術、盾術に光魔法を使えると聞いているが、合っているかね?」


「は、はい!」


「なら、聖騎士としての条件は揃っている。我が家で働くのならば聖騎士となってみないか? なって貰えるのなら、教皇の任命については、こちらで推薦してやるぞ。どうだ?」


「なります! やらせて下さい!!」



聖騎士と言う誘惑にレリウスは即決していた。考えなしに了解しているが、良いのだろうか。

まぁ、貴族様からの推薦が無いとなることも出来なそうだけどな。



「そうかそうか、次はサムだったな。っとその前に、ロリーナ。」


「はいはい。サム君、この呪文を唱えてみてくれないかしら。『全てを覆い隠す闇として現れよ、ダークネス!』」



ロリーナ様が呪文を唱えると、辺り一帯が暗闇に包まれた。なるほど、先ほどの魔法がコレか。



「それじゃ、解除するわね。」



ロリーナ様がそう言うと、元の明るさに戻った。



「じゃあ、やって見なさい。」


「は、はい。『全てを覆い隠す闇として現れよ、ダークネス!』」



サムがそう言うと、先ほどと同じ様に、辺り一帯が暗闇に包まれた。



「マジか! 出来たぜ!!」


「ほぅ?」


「なるほどね……何となく予想はしていたけど、どうやら私と同じ闇魔法の才能が有ったみたいね。

 これは思ってた以上の掘り出し物かもしれないわね。」


「ありがとうございます! 嬉しいです!」


「それじゃ魔法を解除して頂戴。」


「は、はい! ……えっと、どうやるんだ?」



サムは解除の仕方が分からないみたいだ。どうすんだよ……と言うか俺も知らない。消えろと思えば消えるからな。



「『闇夜を照らす光となれ、ライト!』」



その時、レリウスがライトの呪文を唱えて魔法を発動させた。すると闇は取り払われて普通の状態へと戻った。



「レリウス何をやったの?」


「えっと、暗いんだったら、明るくすると消えるかな~って思って試してみたんだけど、上手く行ったみたいだね。」


「なるほど。」



どうやら光と闇は相反する魔法らしく、効果が打ち消されたらしい。ある意味納得だ。後で役に立つことも有るかもしれないし、覚えておこう。

それにしてもレリウスが光で、サムが闇か。ある意味良いコンビなのかもしれないな。



「あなたは、スカウトか諜報系の才能が有りそうね。もし良かったら色々と伝授してあげても良いけどどうする?

 ほら、お友達も家で聖騎士として頑張るみたいですしね。」


「やります!」


「そっ、良かったわ。」



サムも釣られたか。

2人がリルディル家に就職が決定し、次に俺の番となった。



「2人がこう言ってるし、シュウ、お前もどうだ? かなり……いや、少々癪には障るが、アリスも大変気に入ってるみたいだしな。」


「そうよ、お友達と一緒にいらっしゃいな。」


「あの、シュウ様が一緒だと嬉しいです。」



3人が俺を見ているし、サムとレリウスもじっと様子を伺っている。

『将を射んとする者はまず馬を射よ』ってやつか。まぁ、俺の答えは決まっているんだけどな。



「昨日もロリーナ様に誘って頂いて、本当にありがたいお話なのですが、やっぱりお断りさせて頂きます。」


「何でだ! 給金に不満があるなら、少しは考慮してやっても良いんだぞ?」


「そうよ、それにアリスも付けてあげるわよ?」


「えっ? アリスを? ロリーナ、それはさすがに……アリスの気持ちだってあるだろうし……」


「何か言いましたか?」


「な、何でもありません!」


「それにアリスだってシュウ君と一緒に居たいでしょ?」


「はい、お母さま! 私もシュウ様と一緒に居たいです!!」


「そ、そんなぁ……」



トーマス伯爵様が項垂れていた。どんまい。

とりあえずお断りするための理由を言っておいた方が良いだろうな。



「えっと、私奴がリルディル伯爵家に仕官しない理由ですが、それは私奴が何よりも自由を愛し求める冒険者だからです!

 もっと色んな場所に行ってみたいし、冒険もしてみたい! それに何より私奴はまだ7歳ですから、将来を決めるには少々早いかと……」


「……そう言えばそうだったな。だが、その年齢で将来を決めている輩もいない訳では無いぞ?

 それに、何だ、アリスでは不満だと言うのか!?」



娘のことになると面倒くさくなる典型的なオヤジだな。気持ちは分かるけどさ。



「いえ、そんなことは有りません。アリス様はお美しいし、私奴には比べられない程の素晴らしいお人です。」


「そうだろう、そうだろう。」



トーマス伯爵様はうんうんと頷いている。



「ただ、やっぱり私奴は平民かつ、どこの誰だからも分からない孤児ですし、それに何より冒険者をやるのが今は1番楽しいんです。

 幸いなことに、生活していく上でのお金にも困ってませんしね。」


「チッ! 報酬を高くするんじゃなかったな……(ボソッ)

 そこまで言われたら仕方がない、残念だよ。」



今、ろくでもないこと言いやがったな。まぁ、減らされたとしても、そこそこの資金を持ってるから問題無いけどな。



「お父様、もう少し頑張ってください! シュウ様と離れるなんて嫌です!」


「そうよ! 絶対何とかしなさい!」


「アリス、そしてロリーナよ、冒険者を縛るには金か地位か名誉くらいだろう。それら全てに対して断られた時点で私たちの負けだよ。今はな。」


「そう……仕方ないわね。」


「お母さま!」


「アリス、だったら女を磨きなさい。幸いなことにシュウ君はまだ7歳よ。

 これから色々と男として成長して行くと自然と女性に興味も出てくるから、その時にシュウ君の方からアリスを求める位の素敵な女性になっておきなさい。」


「お母さま……はい! わかりました!!」



いや、本人の前でそんな話をしないで欲しいんですけど……

確かに成長したアリスがロリーナ様みたいな女性になったら……アリだな! じゃなくて、アンナとの約束も有るしな! うん、無い無い!



「おい、シュウ! てめぇ、本当に俺達と別れて行っちゃうのかよ!」


「そうだよシュウ君、これからも僕達と一緒に頑張ろうよ。」


「それは出来ない。」


「何でだよ!」


「レリウス達には言ってなかったけど、実は俺、帝都で見に行った聖女様と幼馴染なんだ。

 アンナって言うんだけど、いつか成長して帰ってきた時に会おうねって約束してたから、リーデルの街に帰らなくちゃならないんだ。

 だからここで仕官して一緒には居られない。ごめん!」


「そっか、残念だよ。」


「ケッ! 勝手にしろ!」


「やっぱりあの女とは、決着を付けなくちゃいけませんね!(ボソッ)」



アリスのつぶやきが聞こえた気がしたが、聞かなかったことにしよう。



「でも、たまにリルディル領に遊びに来るくらいなら問題無いし、その時は一緒にご飯でも食べようよ。」


「その時は僕は聖騎士かな。」


「俺は、スカウトとして成長してやるぜ!」


「だったらこっちはSランク冒険者かな?」


「「そりゃさすがに無理じゃね(じゃないかな)?」」


「ひどくね?」


「「「あははははっ。」」」



俺たちは笑い合うのだった。唐突にレリウス達と別れることになってしまったが、この2人ならきっと大丈夫だろう。

ふと、サムがロリーナ様に教わるとなると、スカウトじゃなくて暗殺者とかの暗部に育てられそうな気がするんだが、気のせいだな。うん。


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