185 説明
「と、とにかくだな、可愛いアリスに何も無かったのは理解した。」
トーマス伯爵が、ちらりとアリスママを見てからそう言った。
「ご理解頂けて幸いです。」
「だがな! 本当に何事も無かったのかを判断するためにも、俺にも同じことをやってもらう。」
「そ、それは……」
マズイ! 自分自身には何の効果も無かったから良くは分からないが、今まで対応してきた人達を見ると、習得の際にヘブン状態になっていると思われる。
アリスに対してそう言う状態にさせたと分かっただけでも殺されるかもしれない。どうする俺!?
「ほれ、さっさとやらんか。」
とりあえずトーマス伯爵が魔法が使えるのか確認だけしてみるか。
-----------------------------------------
名前 :トーマス=リルディル
年齢 :33
種族 :人族
状態 :普通
LV :13
HP :178/190
MP :122/122
STR:55
VIT:25
AGI:27
INT:10
DEX:27
LUK:5
スキル:剣術、魔力感知、魔力操作、風魔法
称号 :リルディル伯爵家当主
-----------------------------------------
ほぅ? トーマス伯爵は、すでに魔力感知も魔力操作も持っているのか。だったらやる意味も無さそうなんだけど、どうなんだろう。
「あの、質問良いでしょうか?」
「何だ?」
「トーマス伯爵様は、魔法って使るのでしょうか?」
「風魔法が使えるぞ。」
「えっと、私がアリス様に教えたのは、魔力感知と魔力操作でして、すでに魔法を習得しているトーマス伯爵様に行っても意味が無いのではないのでしょうか?」
「良いからやるんだ!」
これは何を言っても無理だな。あ~あ、俺に人生もこれまでか……いや、最悪転移魔法で逃げて、その後国外へとバイバイすれば良いだろう。
「わかりました。それでは両手を出してください。」
「こうか?」
トーマス伯爵が両手を前に出したのでそれを掴んだ。
「行きます。」
そう言ってから俺は魔力右手から左手へ流れるように流した。
「どうした。早くせんか。」
「えっ?」
トーマス伯爵は、何事も無かった様に平然としていた。あれ?
「あの、終わりです。」
「終わりって何もしとらんじゃないか。」
「そうは言っても終わったとしか……」
「ふむ……」
トーマス伯爵は考え込んでしまった。そして何かを思いついたのか、顔を上げてアリスの方を向いた。
「アリス、ちょっと来なさい。」
「なぁに、パパ。」
「シュウとやら、もう一度アリスに対してやるのだ。」
「……はい。」
マジっすか。もうどうにでもなれや!
俺はアリスの両手を繋ぐと、アリスは恥ずかしそうにして顔を真っ赤にした。それを見たトーマス伯爵の顔が怖いんですけど……
まあいいや、さっさと終わりにしよう。俺は魔力を流した……が、さっきのトーマス伯爵と同じく、何も起こらなかった。あれれ?
「終わりました。」
「えっ?」
アリスはある意味覚悟を決めていたみたいだが、何事も無かったことにびっくりしていた。
俺的にも何事も起きなかったことに安心した。あの状態を見れなかったことに、多少残念な気持ちが無かったかと言うと嘘になるけどな。
「アリスよ、何とも無いか?」
「えっと、はい。」
「そうか。シュウよ、確認だが、やったフリだけで何もしていないと言うことは無いだろうな。」
「モチロンでございます。」
「わかった。ならこの話は終わりだ。」
どうやらお咎めなしとなったみたいだ。助かったぁ~
でも、アリスに対しても何も起こらなかったのは何でだろう? 前回との違いと言えば、魔力感知と魔力操作のスキルが無いくらい……ひょっとすると、それか!?
おそらくだが、無理やり魔力を流すことで魔力に対する回路と言うか経路か何かが出来ることが、あのヘブン状態を起こすのでは無かろうか。
まぁ、それを言ったら魔法が使えない人に対して試させられそうなので言わないけどな。
「ねぇ。」
「!?」
突然後ろからアリスママが耳元で小声でささやかれたのでビックリした。全く気配を感じなかったぞ?
「後で私にも試してもらえないかしら。」
「えっと。」
「大丈夫よ、夫には内緒にしておくから。」
「……はい。」
これは断れないな。とりえずアリスママのステータスだけ確認しておくか。
-----------------------------------------
名前 :ロリーナ=リルディル
年齢 :28
種族 :人族
状態 :普通
LV :30
HP :561/561
MP :1007/1007
STR:63
VIT:34
AGI:121
INT:63
DEX:92
LUK:11
スキル:短剣術、投擲、隠密、暗殺、魅了、読心術
称号 :リルディル伯爵家夫人
-----------------------------------------
「ふぁっ!?」
何じゃこのステータスは!!
「あら、女性の秘密を覗き見るとは悪い子ね。」
「!?」
何故バレたし! と言うか物騒なスキルばかり持ってらっしゃる!!
「後で呼ぶから部屋に来て頂戴ね。待っているからね、約束よ。」
「イエス、マム!」
俺はこの人には絶対に逆らわないことを、心の底から誓うのだった。




