184 決着?
「ふぅ~! ふぅ~! ふぅ~!」
「どうどうどう。」
「この卑怯者め!!」
床から首だけが生えているトーマス伯爵が、鼻息荒く息巻いていた。
必死だったからってのも有るが、土の地面じゃなくても土魔法が行けたのにはビックリした。大理石も土魔法の管轄なんだな……
とりあえず余裕が出来たので、トーマス伯爵を落ち着かせることにした。
「あの、私奴の話を聞いてもらえますか?」
「うるさい! 貴様と話すことなど何も無い!」
完全に頭に血が上ってるな。仕方ない、頭を冷やせば落ち着くか?
アイスアロー……は死ぬか。なら何か魔法でも創造してみるか。……よし!
「フリージング!」
俺が魔法を唱えると、トーマス伯爵の顔に霜が降りてきた。あまり続けると氷漬けになりそうなので、適当なところで終わらせた。
「さ、寒い……ブルッ……ハ、ハックション!」
「あの、話を聞いてもらえますか?」
「フン!」
頭が冷えたことで多少落ち着いたみたいだが、俺の話を聞くつもりは無さそうだ。どうすっかな~
その時、アリスママがアリスパパに向けて話しかけてきた。
「あなた、少しは話を聞いてあげたら良いんじゃ無いですか?」
「嫌だ!」
「……あなた?」
フリージングの魔法を使った訳じゃ無いにも関わらず、部屋の温度が下がった気がした。
「は、はい!」
「この子の話を聞く気は有りますか?」
「き、聞かせて頂きます!!」
「宜しい。さっ、シュウ様、話しかけてみてくださいな。」
「は、はい! 有難うございでございます。マーム!」
「あら、そんなに他人行儀じゃなくても大丈夫よ。」
「いえ! これが普通であります。マーム!」
「もう!」
アリスママが頬を膨らませた。可愛い……いやいやいや、人妻は駄目だ。じゃなくて、歳の差が有りすぎる! じゃなくて、そもそも口説いちゃ駄目だ!
……こほん。気を取り直して、アリスパパへ質問してみることにしょう。うん。
「えっと、トーマス伯爵様。アリス様から何をお聞きしたのでしょうか?」
「……フン!」
「あ・な・た?」
「ひぃ! わ、分かったから! ちゃんと話すから!!
……俺が聞いたのは、生活魔法を教わる際に、傷物にされたとだけだ。」
グリン!
俺は首を曲げてアリスを見ると、てへぺろっ♪ と笑顔だった。
「はぁ~、あのですね、私奴は、アリス様を傷物にはしておりません。
ただ、多少恥ずかしいことは起こったかもしれませんが、神に誓って手を出してはおりません!」
(えっ!? シュウ君、私に誓ってくれるの!? 嬉しい!!)
ちょっと、話がややっこしくなるので、出てこないでください。と言うか誰!?
(え~、忘れちゃったの? アレクシアよ、ア・レ・ク・シ・ア! ちゃんと覚えておいてね♪)
……あー思い出したわ。確かアランさんとエレンさんに祝福をくれた女神だったな。と言うか何で今出てきた!!
(ぶぅ! いいじゃない!)
とりあえず話がややっこしくなるので放置で。
(初めてシュウ君と話せたのに、ちょっと待って~!!)
無視無視。
「恥ずかしいこととは何だ。」
「えっと、お『ダメダメダメエェェl~~!!』です。」
「はぁ?」
「だから、お『わああああぁぁぁ~~!!』です。」
「聞こえんぞ。」
「アリス様、邪魔をしないでください。」
「だってぇ~」
確かにお漏らしをしたって言われたら恥ずかしいよな。でも、説明するには必要なんだよな。
「アリス、ならお母さんに教えてくれるかしら?」
「う~……はい。」
アリスがアリスママのところへ行くと、耳元で内緒話をした。
「なるほど、そういうことだったのね。」
「パパに言ったら駄目だからね!」
「はいはい。ねぇ、あなた。」
「何だ。」
「アリスは大丈夫よ。」
「だが!」
「大丈夫よ?(ニコリ)」
「はいぃ!」
謎の威圧があったみたいだが、とりあえずは解決した……のかな?
「シュウ君、この人を出してもらえるかしら?」
「分かりましたであります。マーム!」
「もう、そんな言葉を使わないの。めっ!」
めっ! 頂きました。これはたまらん!
……もしかして俺って年上好きなのかな? いや、それよりも人妻が……ゾクリ!
「シュウ様、ママに手を出したら……分かってるわよね?」
「りょ、了解であります。レディ!」
「もう、ママの時みたいに言わないで。じゃあ、そろそろパパを出してもらえるかな?」
「イエス、レディ!」
流石は親子だ。威圧が半端ねーぜ。それにしても、何故かアリス家族には完全耐性が働かないのは何故なんだろう……
とりあえずアリスパパを床から解放することにしたのだった。




