018 草むしり依頼
目的の場所に到着した。
それなりに大きなお家で、商家、もしくは貴族の御屋敷なのだろうか?
とりあえず玄関のノッカーを叩いてみることにした。
カンカン!
少しして扉が開き、少しお年を召したメイドさんが出てきた。
「どちら様ですか?」
「冒険者ギルドの依頼を受けて来ました。これが依頼票です。」
俺が依頼票をメイドさんへ渡すと、それを確認している。
「確かに家で出した依頼ですね。ではこちらにいらして下さい。」
メイドさんがそう言うと、スタスタと歩き出したので着いて行くことにする。
着いた場所は裏庭で、結構な量の草が生えていた。
「ここに小屋を作るので、すべての草を取り除いて下さい。
そうですね、ここからここまでの範囲でお願いします。」
そう言ってメイドさんが指定した範囲は5m×5mくらいの広さだ。
「今日中に終わらせられなくても構いませんが、出来れば3日以内で終わらせて下さい。
抜いた草は適当に寄せて置いて下さい。」
「「はい。」」
何となくだがこの作業は1日でやる予定だった様な気がする。でも、来たのが俺達みたいな小さな子だったため、気を使って3日にしたんだろう。
まぁ、1日でやろうが3日でやろうが、支払う金額は同じなんだけどな。金額が銅貨5枚だったことから伺えた。
この世界の貨幣には、聖金貨、白金貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、大鉄貨、鉄貨があり、基本10枚で上の貨幣になるみたいだ。
例えば鉄貨が10枚で大鉄貨1枚みたいな感じだ。ただ、白金貨より上の貨幣になると、100枚で上の貨幣になるみたいだ。
まぁ、鉄貨1枚が日本円で10円程度らしいので、白金貨で1枚10億円と考えれば、使う機会なんて無いだろうと思うから気にするだけ無駄だろう。
「では、終わりましたら声を掛けて下さい。
宜しくお願いします。」
そう言うと、メイドさんは自分の仕事をするために戻って行った。
「よし、やるか!」
「うん!」
今回は初依頼と言うことも有るし、魔法を使わずやってみることにした。
「じゃあ俺は向こう側からやって行くから、ローザはこっちから頼むな。」
「シュウ君、勝負だよ!」
「よし、乗った!」
「負けないんだからね!」
「その言葉、そのままお返しするぜ!」
俺達は別れて作業を開始することにした。
ズボッ、ズボッ、ズボッ……
思ってた以上に土が柔らかかったため、少しの力で草を抜くことが出来た。
とは言え、5歳児の体力だからなぁ……まあ、勝負だし頑張りますか。
ズボッ、ズボッ、ズボッ……
抜くのは1本、多くても2本だ。それ以上になるとかなり力が必要になるため、短時間ならまだしも長時間の作業には向かないからだ。
千里の道も一歩からと言うしな。コツコツと頑張るのだ。
・・・・
「ふぃ~、今日の所はこんなものかな。」
流石に1日では終わらなかった。とは言え、結構頑張った御蔭で随分と作業ははかどったので、明日には終わる予定だ。まぁ、ローザの状況次第だけどな。
作業中は自分のことに集中していたから、向こうの様子を確認しなかったけど、さてどんな状況かな。
「ローザちゃん、そっちはどんな感じ?」
「ふふん、私の勝ちに決まってるじゃない。」
「お、言うね。じゃあ確認してみようか。」
「良いわよ。」
俺の抜いた範囲は全体の3分の1にちょっと満たない程度だ。そしてローザの方はと言うと……
「どうやら俺の勝ちの様だな。」
「嘘! 私、負けちゃった!?」
微妙な僅差だったが、ギリギリ俺の方が多く抜いたみたいだ。
おそらくステータスの差が出たんだと思う。力は同じでも、速度と器用は勝ってるからな。
「さて、敗者には何をしてもらおうかな。」
「そんなの聞いてない!」
俺がニタニタと笑いながらローザへとせまる。
「で、でも、シュウ君だったら……」
「な~んてな。明日も有るんだし、さっさと帰るぞ。」
「ふぇ?」
意表を突かれたのかポカンとした顔をしていた。
そして顔を真っ赤にしながら怒り出した。
「シュウ君の馬鹿ああぁぁぁ~~~!!」
「お、おい待てよ!」
ローザは走って帰ってしまった。
「帰ろっと。」
仕方が無いので俺も帰ることにした。




