179 お詫び
適当に宿を見つけて体を休めた次の日、朝1番に客が訪れてきた。
コンコン
「ふぁ~い。」
「誰だ?」
「宿の人かな?」
「はい、宿の者です。シュウ様達にお客様が来ているのですが。」
「客? もしかしてルイス騎士団長関係かな?」
「はい。下の食堂でお待ちとのことですので、準備が出来たら来ていただきたいのですが。」
「あ、わかりました。」
「お知らせしましたので、私はこれで。」
そう言うと宿の人は戻って行ったみたいだ。
「起きようか。」
「だな。」
俺たちは急いで着替えて部屋を出ることにした。
途中でアリスを呼びに行くと、しっかりと準備済みで起きていた。どうやら宿の人がアリスにも伝えてくれていたみたいだ。
食堂へ行くと、ルイス騎士団長がそこに居た。
「よぉ、来たな。」
「えっと、何でルイス騎士団長様ご本人が? こういったのは部下とかの役目じゃないの?」
「そりゃあ、俺個人の問題に対するお礼だしな。だったら俺が行かなくてどうするんだ。あと騎士団長とか堅苦しいのは辞めてくれ。」
「はぁ。じゃあルイス様と呼ばせて頂きます。」
ルイス様がちらりとレリウスとサムを見た。
「2人に説明は?」
「していないです。」
「そうか。」
ルイス様は腕を組んで何やら考えている。
「あの、ルイス様。宜しいでしょうか。」
「何だ。」
「僕…私はレリウスと言います。今回の事件については私たちは何も知らなかった。そうですよね?」
「サムだ。俺……私も何も知らないし、事件も無かったぜ…です。」
「……そうだな。俺たちは盗賊討伐の依頼中にたまたま会っただけで、お互い不幸な行き違いが有っただけだな。
こちらはお詫びの品だ。受け取ってくれ。」
ルイス様はそう言うと、お金が入った袋をテーブルへと置いた。
中身を確認すると、大銀貨が20枚程入っていた。
「こ、こんな大金!?」
「すげー!」
「あれ? 普通、盗賊を捕まえた時の金額って1人あたり銀貨1枚じゃなかったっけ? 何で大銀貨で20枚なんだ? 間違えたとか?」
「シュウ! ば、馬鹿っ!」
「これは不幸な行き違いに対するお詫びと思ってくれればだな。」
「わ、わかりました。」
口止め料だな。
「じゃあ、俺はこの辺で失礼するよ。」
「はい。ありがとうございました。」
ルイス様が席を立ち、この場から離れる際、アリスの耳元で囁いていた。
「アリス様。後でお話が有ります。」
「わかりました。」
しっかりと会話の内容が聞こえてきた。……と言うかワザと俺にだけ聞かせた!?
ルイス様は、そのまま宿を出て行ったので確認出来なかった。
その後は丁度食堂に居ることだし、そのまま朝食を頂くことにした。
「じゃあ食べ終わったことだし、準備が出来たら出発しようか。」
「うん。」
「ちょっと待った!」
突然サムが叫んだ。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃねーよ、さっき貰ったお金はどーすんだ。」
「あぁ、忘れてたよ。単純に4等分すれば良いんじゃないのかな?」
「私の分は気にしないでください。」
「なら3等分だな。」
3等分か……3等分だと割り切れないんだよね。
「じゃあ、大銀貨6枚、銀貨6枚、大銅貨6枚、銅貨6枚づつ配って、残りの銅貨2枚はパーティ用に回して良い?」
「それで良いぞ。」
「僕もそれで良いかな。」
「じゃあそうするね。」
俺は宿屋で換金して貰った分配した。
「うひょ~! すげ~!! 一気にお金持ちだぜ!」
「これだけ有れば……あれも、これも買えるかな。」
「まぁ、自分の金だし、好きにすればいいんじゃない?」
何かあっという間に無くなりそうだが、そこは自己責任だろう。
「さて、じゃあそろそろ行こうか。」
「「おー!」」
「分かりました。」
部屋に戻り準備を済ませた俺たちは宿を後にするのだった。




