163 襲撃
「……ん、シュウ君、起きて、交代だよ。」
誰かに体をゆすられたことで目が覚めた。
「んー、あぁ、交代か。」
「それじゃ、後はよろしくね。」
目が覚めた俺を確認した後、レリウスは毛布に包まって寝てしまった。
さてと、起きるとしますかね。
焚き火の脇に座り、周りを見渡すとまだ日が昇るには早い時間だ。
朝食つくりをするには早すぎるかな?
「ん?」
その時、状況把握に引っかかる反応が現れた。
現れた反応は……この野営場を中心に、東西南北に各5つの反応……って囲まれてる!?
オート狙撃では……木がじゃまで見えないか。ならドローンだ!
俺は4方向にドローンを飛ばす。
「こ、これは!」
何と現れた反応の正体は人間だった。だけど黒装束にフードを被っているので顔は見えないが、どうみても怪しすぎる集団だ。盗賊、または何かの宗教団体だろうか。
こちらを用心しているからか、タイミングを合わせるためなのかは分からないが、今のところ300m程の位置で停止していた。
とりあえず緊急事態なのは間違いない。大声だと相手にも気が付かれるため、こっそりと2人を起こすことにした。
「レリウス、サム、起きてくれ!」
「どうしたんだい?」
「敵か?」
さすがはサムだ。起きた早々に索敵をして状況を把握したみたいだ。
「まだ敵なのかは分からないんだけど、東西南北に5人ずつの黒装束の集団に囲まれてる。」
「「!?」」
「今のところ動く気配は無いんだけど、どうしたら良い?」
俺はそう言うと、2人は考え込んだ。
「敵って、俺たちって襲われる理由って有るのか?」
「僕もそれを思った。何でだろう?」
「考えられるのは2つ。1つは盗賊なんだけど、あまりにも統率が取れすぎているし、多分だけど違うんじゃないかなと思う。」
「2つ目は何だ?」
「アリス様の誘拐、または殺害かな。」
「はぁ? なんでまたアリス様が!」
「馬鹿!」
「やばっ!」
サムが驚きのあまりに大声を出してしまった。それを聞いた集団が動き出した。
「相手が動き出した。どうする?」
「どうするって、戦うしかないんじゃないかな。」
「だな。あ~あ、俺の人生もここまでか……」
レリウスとサムが武器を構えて待ち構えるが、さすがに多勢に無勢だ。半分助かるのは諦めているみたいだ。
確かにこのままだと俺を抜かして全滅だろう。何とかしなくちゃ……
敵はもう100mまで近づいて来ている。
「何か方法は……そうだ!」
俺はバリア、もとい魔力盾を馬車を含めて展開させた。
そのタイミングで黒装束集団が現れた。
「き、来た。」
「マジかよ……」
レリウスとサムは武器を構えてはいるが震えていた。
黒装束集団はそれを見て余裕と判断したのか、襲い掛かってきた。
ドカッ!
「うぐっ!」
一番先頭で飛び出してきた黒装束が思いっきり魔力盾にぶつかった。
予想していなかった衝撃に思わず声が漏れたみたいだ。
それを見た続けて襲い掛かろうとしていた2番目以降の黒装束は急ブレーキをかけて止まる。
「な、なんだ?」
「何が起こったんだ?」
「とりあえず魔力盾を展開した。これで少しは時間が稼げれば良いんだけど……」
俺がそう言うと、黒装束のぶつかった本人が開き直ったのか無言を止めて言ってきた。
「馬鹿め、ガキが作った魔力盾みたいなものはな、こうすりゃ壊れるんだよ!」
黒装束の男が剣を振り上げると、魔力盾に向かって叩きつけた。まずい!
ガイン!
「な、なんだと!」
「えっ? 壊れなかった?」
魔力盾は問題なく発揮したみたいだ。何だ……大丈夫じゃんかよ、驚かせないでくれよ。
「ば、馬鹿な……魔力盾って使用した魔力の量で決まるんだろ? なんで壊れねーんだよ!」
「えっ? そうなの?」
そーいや魔力盾自体を鑑定したことって無かったな。
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【魔力盾】
魔力の盾を発生させる。(注いだ魔力×10のDEFがプラスされる。)
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ふむふむ、確かに注いだ魔力に対しての防御力を発揮するみたいだな。
……今思ったんだが、俺、MP1しか注いでないんだけど? なんで壊れないんだ?
ガイン! ガイン! ガイン!
今も必死に剣を叩きつけているんだが、全く壊れる様子も見られなかった。
「ちょっと退け!」
しびれを切らした仲間が今度は魔法を使うみたいだ。火の玉が飛んできて魔力盾に当たった。
ドカーン!
「嘘だろ!」
やっぱり壊れる気配は感じなかった。
……もしかしてだが、完全無効が魔力盾にも効いているのだろうか?
「えっと、レリウス、これどうしようか。」
「う~ん。どうしようか。」
今も黒装束の集団が、必死に魔力盾を壊そうと頑張っている。しかも全員で攻撃をしていた……今のところ大丈夫だとは言え、ちょっと見た目的にも怖いな。
「なぁシュウよ、こいつらを無効化できるような方法って無いのかよ。」
「無効化ねぇ……」
考えられるのは、眠り、麻痺、気絶、骨折などの物理的な破壊か。
「眠り、麻痺、気絶、骨折のどれが良い?」
「どれが良いって……どれでも出来るのかよ。」
「多分?」
「……レリウス、どうするよ。」
「えー、ここで僕に振るの? サムに任せるよ。」
「シュウ、任せた。」
「それって酷くない? 良いけどさ。」
とりあえずこの人達が誰かを調べてみるか。最初に攻撃してきたこの人で良いか。
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名前 :ガルツ
年齢 :32
種族 :人族
状態 :普通
LV :12
HP :55/57
MP :79/79
STR:30
VIT:7
AGI:39
INT:4
DEX:37
LUK:9
スキル:弓術、短剣術、索敵、暗殺
称号 :アサシン、暗殺ギルド員
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アサシンかよ、そしてそこそこ強いみたいだ。HPが少し減っているのは魔力盾にぶつかったからかな?
とりあえず、暗殺ギルド員なんて物騒な称号もあるみたいだし、遠慮は必要なさそうだな。
さて、どうやって無力化するかだが、眠りか気絶だと、動かないうちに全員を固縛しなくちゃならないから面倒くさいし、麻痺だと会話が出来なくなるかもしれない。
そうすると骨折等の物理的な破壊か。関節を外せば良いのか? ……いや、達人は筋肉の動きで、外れた関節を戻せると漫画で読んだことがある。
ならやっぱり物理的な破壊か。……いや、ポーションや回復魔法で治るかもしれない。やっぱり固縛するしかないのか……面倒くさいな。
仕方ないので、まずは動きを止めることにした。さて、どうやろうかな。
新しいスキルを創造魔法で作っても良いが、今持っているスキルで使えそうなものは無いかな……
「あ、これで良いか。アークシェイク!」
俺は、魔力盾の外側の広範囲に対し、魔法を発動させる。
「な、なんだ!」
「体が沈む!?」
「う、動けん!」
黒装束達は振動で上手く立てずにしゃがみ込むと、そのまま地中へと沈んでいき、黒装束達は首だけを地面から出している状態だ。
後は、万が一怪力で脱出されるのも困るので、錬金術の合成で岩のように固めておいた。提案したのと違ってしまったが結果オーライだ。ミッションコンプリート!




