016 冒険者ギルド再び
アンナが孤児院を去ってから1年経過した。
最初は寂しかったが、人間慣れるもので、今は普通に生活をしている。
そして6歳になったため、今日からなんと孤児院の外で仕事が出来るようになったのだ。
「シ、シュウ君!」
「何だ? ローザちゃん。」
「きょ、今日から孤児院の外での仕事でしょ?」
「そうだな。」
「だ、だからね。シュ、シュウ君がどうしてもって言うなら一緒にやってあげても良いんだからね!」
「えー!」
「な、何よ! 私と仕事をするのがそんなにも嫌なの?」
「別に嫌じゃないけど、ローザちゃんは何の仕事をするつもりなんだ?」
「まだ決めてないけど、シュウ君は?」
「俺は冒険者の資格を持っているから、そっちで受けようと思ってる。」
「えっ? そうなの?」
「一応な。」
基本、孤児院の外のお仕事は、地域の人達が協力してくれていて、お手伝い程度の仕事を1回鉄貨1枚で依頼してくれる。
もちろん失敗することを前提の依頼だからこの金額なのだが、顔見知りになりキチンと仕事が出来るようになると料金も増やしてくれるのだ。
だから仕事を覚える孤児院の子供たちにとっては、良い社会勉強となるのだ。
それで俺がやろうとしているのは、冒険者ギルドのFランク依頼だ。
こっちはきっちり依頼をこなせば、それなりの金額が貰えるのだが、失敗すれば罰金や評価が下がる等のペナルティーが有るので、自信がない人にはお勧めできない。
実際10歳を過ぎた孤児院の子供で、冒険者の仕事をしている子もいるのだ。まぁ、さすがに6歳でやる子は居ないけどな。
「だからローザちゃんとは一緒には……」
「だっ、だったら私も冒険者になる!」
「はい? さすがにローザちゃんには無理じゃない?」
「無理じゃない! シュウ君が行くんだから私も行くんだからね!」
「いやでも、失敗したら罰金とかのペナルティーも有ることだし……」
「それはシュウ君も一緒でしょ!」
「それはそうだけどさ。」
「行くったら行くの!!」
「へいへい。」
多分こうなったら何を言っても無理だろう。仕方がない登録だけさせて、依頼を受けずに帰るとするか。
何もしないで帰るとシスターに怒られるので、何処か適当にお手伝いをすることにしよう。
俺達は、冒険者ギルドへと向かうことにした。
「うわぁ~、ここが冒険者ギルド? 何か臭い!」
始めて冒険者ギルドへとやってきたローザは、興味津々で周りを見ているが、匂いには耐えられなかったみたいだ。
俺も2回目だけど、やっぱりこの雰囲気はテンションが上がるぜ!
「ほら、登録するからカウンターに行くぞ。」
「あ、待ってよ~」
俺達は空いているカウンターの列に並ぶことにした。
「だ、大丈夫かな? 登録をお断りされるとかになったりしない?」
「大丈夫大丈夫。俺だって0歳の時に登録出来たんだし、多分大丈夫だよ。」
「そ、そうだよね。」
「お、お嬢ちゃん達は初めてかい?」
前に並んでいた男性が、俺達の会話に興味を持ったのか声を掛けてきた。
「はい、孤児院で6歳になったら外で働かなくちゃならないんです。だからここに登録をしに来ました。」
「ほぉ~、その年齢で登録ねぇ、まぁ、頑張れよ!」
「はい!」
「おっと、俺達の番か。」
男はそう言うと、受付嬢と話し始めた。どうやらこの人は依頼を受けるみたいだ。
受付が完了すると、俺達に手を振ってそのまま冒険者ギルドから出て行った。
「次の方どうぞ。」
「行くよ。」
「うん!」
俺達の番になったのでカウンターの前に行く。
「小さい冒険者さんね。今日はどうしたのかな?」
「えっと、ローザちゃんの登録をお願いします。」
「この子だけ? 君は?」
「僕は持ってますので。」
「あらそうだったの、分かったわ。じゃあ登録をしちゃいましょうね。
この水晶に手を置いてもらえるかな?」
「これに触れば良いの?」
「そうよ。」
ローザは恐る恐る水晶を触ると、水晶は青く光った。
「わっ、青く光った!?」
「うん、犯罪歴は無しっと。じゃあカードを発行しちゃうわね。」
受付の女性が何やら装置を操作すると、木で出来たカードが飛び出してきた。
「はい、これが貴方のカードね。」
「あ、ありがとうございます。」
ローザがギルドカードを受け取る。
「じゃあ説明するわね。
冒険者は、依頼を受ける。又は倒した魔物を納品することで評価が貰えます。ある程度の評価が貯まると試験が受けられて、それに合格することでランクが上がります。
最初はGランクから始まり、最高でSランクまで上げることが出来ます。ただし、依頼の失敗が続くとそのランクの条件に満たないと判断され降格する場合も有るので気を付けて下さい。 後は長期間の依頼を受けない場合も下がる場合が有ります。ここまでは大丈夫かな?」
「えっと、た、たぶん?」
「分からなかったらその時聞いてくれれば良いからね。じゃあ続きを言うわよ。
ギルド員同士の喧嘩はご法度です。これもランクが下がる原因となります。もし戦う場合は審判を付けた決闘と言う形であれば可能ですのでその時は申請して下さい。
それ以外での殺人、窃盗等の犯罪を起こした場合は、無条件でカードが赤く染まりギルドからの脱退となりますので気を付けて下さい。
何か質問は有りますか?」
「えっ? えっと、えーっと。」
「ローザちゃん、無ければ無いで良いんだよ。」
「あ、うん。大丈夫です。」
「そっちの男の子の方は何か有るかな?」
「いえ、大丈夫です。」
「では、 本日は冒険者ギルドへの登録ありがとうございました。私、イザベルが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
「あ、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
俺とローザがペコリと頭を下げたんだが……イザベルってどこかで聞いたような……あっ! 俺が登録した時に対応してくれた人か!
さすがに赤ん坊のことを覚えているって思われたら変に思われそうだから言わないけどね。
「ドキドキしたよ~」
「お疲れさん。」
「でも、これでシュウ君と一緒だね♪ ……って、べ、別に一緒だからって嬉しい訳じゃないんだからね!」
「へいへい。それでローザちゃんのカードはどんな感じだったんだ?」
「私の? はい、どーぞ。」
「をぃ! 冒険者にとってステータスは情報だぞ、簡単に他人に見せるな!」
「そ、そうなの?」
「そうだぞ。」
「分かった。でもシュウ君だから見せても良いんだからね! と、特別なんだからね!」
「お、おう。」
そう言ってローザが俺にカードを見せてくれた。随分と信用してくれているみたいでちょっと嬉しかったのは内緒だ。
どれどれ、ローザのステータスはっと。
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名前 :ローザ
年齢 :5
種族 :人族
状態 :普通
LV :1
HP :10/10
MP :50/50
STR:5
VIT:4
AGI:2
INT:2
DEX:3
LUK:2
スキル:
称号 :
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うん、前に鑑定した時に見たのと同じだな。
「ど、どうかな?」
「どうって言われても俺も良く分らないよ。でも、多分だけど剣士とかの才能が有るんじゃないのかな?」
「ふ~ん。ねぇ、シュウ君のはどうなの?」
「俺のか、まあローザちゃんなら良いか。」
俺のギルドカードをローザに手渡すと、マジマジとカードを見つめていた。
「スキルが有るけど、何か普通?」
「ほっとけ!」
偽装してるし、別に良いけどさ……




