157 脅し?
4人部屋に行くと、レリウスとサムはベッドの上でくつろいでいた。
「シュウ君、お疲れ様。」
「あ~? 終わったのか?」
「一応ね。問題は……まぁ、そんな感じだったけど、無事に魔力操作と魔力感知は習得できたよ。」
「「あぁ~」」
俺が言いにくそうにそう言うと、経験者の2人は納得していた。
「と、とりあえず腹も減ったことだし、飯行こ~ぜ!」
「そ、そうだね。シュウ君はアリス様を呼んできてもらっても良いかな。」
「了解~」
「じゃあ、先に行って席を確保しておくよ。」
「レリウス行くぞ。」
「あ、待ってくれ。」
レリウス達が出て行ったので、俺も行くとしますか。
部屋を出てアリスの部屋へと向かう。
コンコン……
「アリス様、シュウです。そろそろ夕食の時間なのですが、如何いたしますか?」
ガチャ。
扉を開けてアリスが出てきたのだが、頬を膨らませてなんか不機嫌そうだ。何か怒らせるようなことをしたっけ?
「あ、あの、えっと、アリス様? お食事なんですが……」
「シュウ様、2人だけの時は気軽に話してくれると言って頂けたではないですか!」
「あーうん。そうだったな、ごめん。」
そーいやそんな約束したんだっけな。
「ほら、飯だから食いに行くぞ。」
「はい♪」
俺がそう言うと、アリスは嬉しそうな顔をして返事をするのだった。
・・・・
「お待たせ~」
「来た来た。」
「腹減った~ 早く食おーぜ。」
「ではアリス様、こちらにお座りください。」
「ありがとうございます。」
俺は椅子を引いてアリスを座らせた。若干丁寧な言い回しが気になったみたいだが、2人っきりじゃないんで勘弁して下さい。
俺達が席に着くと、サムが給仕のおばちゃんに声を掛けた。
「おばちゃ~ん、さっき頼んだ日替わり4人分~!」
「はいよ~」
給仕のおばちゃんが返事をすると、すぐさま食事を持って来てくれた。
どうやら先に頼んでくれていたみたいだ。
「4人分で銅貨4枚だよ。」
「シュウ君、頼んだ。」
「あ、はい。じゃあこれでお願いします。」
「丁度だね。ごゆっくり。」
俺がお金を払うと、おばちゃんはそれを受け取ると去って行った。
「よし食うぞ~!」
「そうだね。頂こうか。」
「だな。」
「はい。」
夕食はパン、ステーキとサラダにスープだ。普通に無難なメニューだ。味も普通だったけどな。
「ふぅ~食った食った。」
「これでようやく1つ目の街だね。まだまだ先は長いや。」
「だね。」
「皆さん。初日なのに色々と有りましたが、今日はありがとうございました。」
「い、いえ、これが僕達の仕事ですから。」
「そ、そうだぜ。」
アリスにお礼を言われてレリウスとサムは照れていた。
「シュウ様が居なければ、私はここに居ませんでした。本当に感謝の言葉しか有りません。」
「まぁ、こうなったのも何かの縁でしょうし、気にしないで下さい。」
「さて、明日も1日移動になるし、さっさと寝て明日のためにもしっかりと休もうか。」
「だな。」
「だね。」
「はい。」
「じゃあシュウ君はアリス様を部屋まで送ってきてくれるかな。」
「了解。ではアリス様、行きましょうか。」
「はい。」
俺はアリスを部屋まで送ることにした。廊下を歩いているとアリスが声を掛けてきた。
「あの、シュウ様?」
「何だ?」
「やっぱり私に生活魔法を教えてもらうことは無理なのでしょうか?」
「無理。」
「どうしてですか?」
「嫁入り前の娘が見せては駄目な状態になるからだ。」
「見られるのはシュウ様だけですよね? だったらお互いが黙って居れば問題無いのでは?」
「う~ん。」
「駄目でしょうか?」
「そうは言ってもなぁ……」
下手にバレでもしたら、アリスの父親に物理的に首を切られるかもしれない。いやマジで。
「絶対誰にも言いませんから!」
アリスが胸元で手を組んで、瞳をウルウルしながら頼み込んできた。
「……はっ! 思わず頷きそうにになってしまった。危ない危ない。
とにかく駄目な物は駄目だ。」
「ぶぅ!」
「可愛く怒っても駄目だ。」
「では、お屋敷に帰った時に、お父様にはシュウ様に有ること無いことをされてお嫁に行けなくなったと報告させていただきます。」
「是非ともやらせて頂きます! いや、やらせて下さい!!」
俺は土下座をする勢いでお願いするのだった。
「本当ですか! ありがとうございます!!
シュウ様ならそう言って頂けると信じていました。」
「脅しておいて良く言うよ……いいけどさ。
ただし! これだけは守ってもらうからな! 俺が教えたと絶対に誰にも言っては駄目だからな! フリじゃないからな?
魔法は頑張ったら突然覚えられたってことにしてくれよな。」
「はい!」
俺は諦めてアリスにも魔力感知と魔力制御を教えてあげることになったのだった。




