155 報酬
部屋を出た後、アランさんがレリウスへと問いかけてきた。
「レリウスは前の依頼の時は使ってなかったから気が付かなかったが、魔法が使えたんだな。」
「いえ、実は最近覚えたばかりで、あの時は使えませんでした。」
「覚えた? もしかしてサムもか?」
「いえ、お…僕は生活魔法だけです。」
「生活魔法だけでも使えるだけ十分だ。どうやって覚えたんだ? 俺にも覚えられるものなのか?」
「えっと……」
サムとレリウスが気まずそうに眼を合わせていた。
「そうだよな。確かにこういった技術ってのは秘密だよな。」
「いえ、そうじゃなくて、その……シュウ君、任せた!」
「え~! いや、良いけどさ。」
確かに教えるのは俺になるだろうから適任なのだろうけどな。
「やっぱりシュウだったのか。それで俺にも教えて貰えるのか?」
「教えるのは良いんですけど、この方法って色々と問題が有るんですよね。」
「問題? どんなのだ?」
「えっと……体中の色んな体液が出ます(汗)」
「それってヤバいものなのか?」
「ある意味ヤバいかもしれません。」
「死ぬわけじゃ無いよな?」
「命に関わるものじゃないですけど、場合によっては人として死にたくなるかもしれません。」
「死ぬわけじゃ無いなら良い。報酬を貰った後にでも教えて貰えるか?」
「アランさんの頼みなら……」
「はいは~い! 私も覚えたい~!!」
「・・・・」
「駄目?」
正直、乱れるエレンさんが見られるのはちょっと興味がると思ってしまった俺がいた。
「シュウ君?」
「あ、いえ、すいません。えっと、先ほども言いましたが、非常に他の人に見せられない姿をさらしだしてしまいますが、良いんですか?」
「でも、魔法が使えるようになるかもしれないんだよね? だったらやりたいかな。
それに見られるってシュウ君にでしょ? なら大丈夫だよ♪」
「……わかりました。」
「やった~♪」
「あの、シュウ様。私もお願いしても宜しいでしょうか?」
「アリス様もですか!?」
「はい。」
伯爵令嬢にさせても良いものだろうか。いや下手したら侮辱罪で犯罪者にされてしまうかもしれない。危ない橋は渡らない方が良いな。
「申し訳ありませんが、確実に安全と分からないため、お断りさせていただきます。」
「駄目ですか?」
「はい。」
「残念です。」
残念がってチラッチラッとこっちを見ているが、こればっかりは諦めて欲しい。
とりあえず先に報酬などの手続きをするために俺達は1階に降りて、受付カウンターへと向かうことにした。
「次の方どうぞ。」
「先ほどのオークの報酬を頂きに来ました。」
「お待ちしておりました。では、ギルドカードの提示をお願いします。」
俺達は自分のギルドカードを取り出して提示した。
それを受付嬢が受け取ると、機械に通して処理をすると、新しく銅色のカードが出てきた。
「こちらがレリウス様、サム様、シュウ様の新しいギルドカードとなります。お受け取り下さい。」
新しいギルドカードを受け取った。これで俺達はDランクになったって訳だ。もう少し上がるのが早かったら、オーク討伐に強制参加させられるところだったな。
「そして、こちらが報酬となります。」
受付嬢がそう言うと、カウンターに金貨6枚が置かれた。
「えっ? こんなに沢山貰えるんですか?」
「はい。単なる討伐だけでしたらもう少し安いのですが、今回は全ての素材の持ち込みと、この街の危険を排除したことも考慮してこの金額となりました。」
「分かりました。ありがとうございます。」
あれ? 素材って全部売るで良かったのか?
レリウスも納得しているみたいだし、まぁ良いか。正直に言えばオーク肉を食べてみたかったけどな。
「私、ヘレンが対応させて頂きました。 またのご利用をお待ちしております。」
報酬を受け取った俺達は冒険者ギルドを後にすることにした。




